業界の力の違い

さて、今日は証券税制のお話。今、与党も野党も税制改革案を出すのに忙しい。お互いに選挙を意識して消費税に関しては言葉を濁しており実質的には先送り。だけどバラマキのためには増税は必須なんで「どこから絞るのか」というのが高度に政治的&センシティブな問題になっている。

そして、端から見ていてもかなーり微妙だよなあと思えたのが、株式等の運用益と配当課税のお話。

簡単にいうと、現在、株式や投信の売却益そして配当にかかる税金は、本来は2割なのに1割に減額されてるんです。これ、ちきりんも多大なる恩恵を受けています。が、自分も恩恵を受けてはいるものの、明らかに変な優遇税制だと思ってます。

だってたかだか0.5%しかつかない定期預金の利子にも2割の課税がされるのに、株やら投信やら配当なら税金がその半分なんですよ。

ちきりんの今年の運用益目標額は手取りで500万円。これって、2割課税なら625万円儲けて125万円もの税金を払う必要があるんです。信じられないくらい高いよね・・が、1割課税なら税金は56万円で済みます。(556万円で1割課税されてネットで500万円)

★★★

いやいや、超自分目線でいうとね、
・そもそも給与から高い税金を払ってやっとこさ手元に残ったお金を、
・自分の消費に回さずに、
・自分のリスクと才覚で運用して500万儲けても、

そこから50万も持って行かれるだけでも「勘弁してよ!!」と言いたいです。1割でも高すぎ!!って思います。



で・す・が、

社会派目線でいうと、ありえないよね、日本の今の財政状況で、こんなところで税金優遇してるなんて。いったい金融機関ってのはどんだけの力をもってんねん?と驚愕します。

ちきりんは一番最初の仕事では、こういうのをやってました。官僚や政治家を回ってなんとかこの税制優遇を温存するため、表のロジックから裏の妙技まで、すべてを駆使して特権を守る。それがMOF担と言われる人達の仕事です。

この職名は今はなくなっているようだけれど、今回の議論の様子を見ていると、まだまだ金融業界、証券業界の力は強いなあと痛感します。

だって格差問題が自民党を政権から引きずり落とそうとしているんですよ。なのに、数千万円単位の金融資産を持つ人達への優遇措置を温存するってすごすぎない?

★★★

現時点の議論では、「優遇措置は来年末で終わり」という本来のルールを少々修正・延長し、再来年以降は、「売却益で500万円まで、配当で年に100万円までは、優遇措置を続ける」ということになっています。(まだこれから変更になる可能性は十分ありますが、今の案はこれです。)

これで、普通の個人系の投資家であれば全く問題がなくなります。運用益で500万円出すってリターン2割でも元手資産が2500万必要、配当で100万円って、3〜5000万円の株の保有額がないと届かないでしょう。

個人といってもプロのレベルの投資家、それと一族系の方々(=この人達は税金が高くなっても株は売らない)以外はほとんど影響がない。事実上の優遇措置温存、です。

株や投信をメインに売っている証券業界はもちろん、今や定期預金より投信を売りたい銀行(郵便局もでしょう)も、優遇措置を続けて欲しいと熱望していたわけで、「ほ〜、こんな財政状況でも、これを続けるんだ」というのは、それらの業界の力をまざまざと見せつけたと思います。

★★★

この金融業界の力のすごさは、他の業界と比較すれば一目瞭然です。たとえば業界と税金の駆け引きがいつも注目されるのが、ひとつが自動車業界、もうひとつが酒煙草業界です。

自動車関連税は今一般財源化という議論が佳境に入っていますが、業界の方は「減税」を求めています。車を持つ人なら、車関連の税金がどれくらい加重か、痛感されているのではないでしょうか。ガソリンだって税金だらけです。

業界はあちこちの雑誌や新聞に広告をだして、「一般財源化するくらいなら、減税するのが筋!」という主張をしています。これは非常に正しい、まっとうな主張です。自動車関連の付加税は、自動車が「お金持ちのみが持てるもの」だった時代の産物です。今や自動車は金持ちではなく、地方の労働者・生活者の必需品でしょ。

ところがこれらの自動車関連付加税、一般財源化するかどうかは微妙ですが、大幅な減税はまず無理でしょう。本当はこちらの税金の方が「明らかに変」=ロジックの裏付けのない税金である、し、格差に悩む地方の人ほど自動車を必需品として使っているにもかかわらず、この部分は“業界の負け”が見えています。



そして、酒煙草業界。これほど税金の面で、国にいじめられている業界、搾取されている業界、いや、バカにされている業界は存在しないでしょう。

ビール飲む=税金飲んでるような状況になって、ビール業界はプライドをすて、工夫に工夫を重ねて発泡酒を作りました。でもそっちが売れ始めると、いきなり税制を変えて発泡酒に課税強化する当局。「あいつらの技術革新分は、全部税金でもらっちゃおうぜ」って感じです。

煙草も社会悪という側面はあるにせよ、ビール、焼酎、煙草、どれも、お題目のように唱えられる“格差社会”の底辺でこそ根強いニーズのある商品です。口では格差解消云々とかいいつつ、金持ち優遇は放置して、底辺からは容赦なく税金をとりたてる政治家と霞ヶ関。


考えられない、です。(社会派的にはね)

★★★

自動車業界の広告、見たことありますよね?「自動車を運転している人は、過大な税金負担を迫られています。今こそ、本来の税制に!」という広告。

ビール業界等の主張も時々広告が載りますよね。「庶民のささやかな楽しみを奪うな!」とか「国が、民間企業の技術力や経営努力にたかるのはおかしくないか?」とかね。


一方で、金融業界が「運用益と配当課税の優遇措置を続けるべきだ!」という広告を一般紙に出してるの、見たことありますか?

ちきりんはありません。

なんでかって?

自動車税も酒税も、「国民に、これは変でしょ!」と問える内容なんです。つまり、業界の言い分に正義がある。だから彼らは広告を出す。

金融業界の「金融資産が5000万円以上ある人に減税を!」という主張は、国民に表立って問えない。だから広告はでない。


しかし、実際には自動車業界(保有者)への理不尽な税負担は減らないし、酒税、たばこ税も止めどなく上げられてしまうでしょう。

そして裏で、配当と運用益の優遇措置が継続する。




国民に広告で、真正面から問えるロジックより、政治家と霞ヶ関だけにささやかれる金融業界の“エゴロジック”の方がどれほど強力であることか。

この業界が、他業界とは全く異なるレベルで権力と癒着していることを端的に示す事例だと思います。

ばたばたと民間企業が倒産する中で、銀行だけが(公的資金というお化粧された名前の)税金をつぎ込まれて助けられ、そんな状態でさえボーナスを支払い続けるという超ゆがんだ姿を、私たちは90年代に見てきました。それを「金融システムの安定のため」とのたまわった方々。この業界は“権力そのもの”だということなのでしょう。

よい子の皆さんに、世の中はこう動いているのだ、ということを示す、お手本のような出来事だと、思います。


なるほどね・・・


ふむ。

★★★


税金がらみでもう一つだけ。オリンピック招致への協力だかなんだか、自分の虚栄心を充たすための裏約束と引き替えに、都民の税金3000億円を田舎に回すと約束した石原さんにも、ちきりんは超怒ってる。彼の子供にも孫にも一生投票しない!



いやまあ、運用益と配当への減税措置は、是非是非続けてほしいですけどね。まあどうせちきりんは「エセ社会派」だしね。



そんじゃ。