逃げるチベット、擦り寄る台湾

おもしろいなあ。台湾とチベット。

全く同じタイミングで全く反対の方向に進もうとする

ふたつの“国ではない国”of China.


台湾の総選挙。この国(だか島だか)の選挙勢力は二つに分かれる。ひとつは「中国本土と仲良くすべしだ派」で、もう片方が「共産党なんか絶対信じない。台湾は独立すべきだ派」ですね。本土と仲良くすべき派が国民党、独立するべ派が民主進歩党です。

昨日、中華民国総統選挙があり、国民党の馬英九さんが勝ったですよ。本土と仲良くすべき派。彼は「中国沿岸部と台湾でEUみたいな自由貿易ゾーンを作ってはどうか」とまで言っちゃってて、それって事実上、香港みたいな統合を考えてる??みたいなアイデアです。

こうなると朝鮮半島の統一より中国と台湾の統一の方が早いかも?ってな雲行きですが、選挙民がこの方向を選んだ最大の理由は、“香港の大成功と台湾のここ数年の経済不況”にあります。

香港は昨年行ったけど、すんごい好況でバブル期の日本みたいでした。香港がイギリスから中国に返還される際に、中国を信じられず恐れてカナダなどに移民した香港の人が次々と帰国していると言ってました。

当時カナダに移住するには一定額の貯金をするか、子供をカナダで生むしか方法がなく、香港の貧しい人達は“せっせと妊娠して”カナダへの飛行機に飛び乗った。カナダについたらすぐに仮アパートで出産し、生まれた子供を移民局につれこんで居住ビザをもらう、みたいな話が雑誌に載ってました。その人達が「なーんだ、あんなことする必要全然なかったじゃん」と戻り始めている。

香港の中国返還、一国二制度は、びっくりするような斬新な方法論でありながら、歴史的にまれに見る驚異的な成功事例として近代アジア史に記されるでありましょう、ってな感じなわけです。


それをみて台湾も「おおっ!もしかして結構いーんでないの?中国の一部門になるって」と思い始めた。

しかも過去数年、台湾は大不況期に入ってた。韓国と一緒に日本を追いかける国に見えていたのに、中国本土の急速な追い上げで「安く何かを作る基地」としての立場を奪われ、起業家の多くも日本や本土やアメリカでの成功を期して旅立った。

中国(本土)がBRICSのひとつとして持ち上げられるここ数年間の歩みは、台湾経済にとっては直線的な地盤沈下の数年間だった。人口の小さな、すなわち、消費できない、しかも国としてのアイデンティティを持てない国の未来に光は見えなかった。


「中国と仲良くしようよ!!」
「別に一緒になったっていーじゃん。香港みたいに!!」
「いや、いっそ一緒になった方が得じゃね?今みたいにどの国に行っても自国の大使館もないよーな立場じゃまずいだろ?世界中が経済ブロック化してるってのに、俺らこのままじゃあ自由貿易協定も結べないんだぜ!」


てなもんで、中国と仲良くしましょ派の馬英九さんが選挙に勝利した。同じ(ような)立場のチベットがあんな状況になっているさなかの選挙なのに、昔の台湾なら「中国はやっぱり怖い!いつ自分たちもああやって侵略・制圧されてしまうかも!!」と恐怖におののいたであろうに。

チベット騒乱さなかの選挙で台湾選挙民は言い切った。「中国と一緒の方がとくやで」と。

★★★

さて時を同じくして、“中国の一地域”であるチベットが「独立したい!!!」とデモ。大騒ぎ。国際的・大騒ぎ。


「やっぱり貴方(中国本土)と一緒になるわ!」と言いだした台湾と、「ずっと言ってるでしょ!とにかく私は別れたいの!!」と叫ぶチベット。このタイミングのシンクロさが超おもしろいんだが、それにしてもこの二人、何が違うのか?

台湾が中国と一緒になった方が得なら、チベットだって同じではないのか?東ティモールだって独立したのはいーけど、どーやって喰っていくんだ?って感じだしね。



経済的な損得で考えはじめた国と、損得で考えない国の差か?


資源のない国と、資源のある国の差か?


歴史的に別々の国と、歴史的に元は同じ国の差か?


中国に擦り寄る国と、離れていく国が、こんなに同じタイミングで現れるって皮肉だなと思った。この歴史のシンクロぶりは単なる偶然か。それとも、何かの必然の論理の上にあるふたつの相反する(ように一見みえるだけの)現象か?


馬英九さんは本音ではかなりの「反日派」、ダライラマさんはかなりの親日派。だからか?
の、わけなし。


中国とくっつくのと、中国から離れるのと、実際、どっちが得だと思う?間違ってるのはどっちなのだ?それともどちらも正しいの?何が違うから?


そんじゃね。