世界の戦略

昨年の11月23日、「これからの50年、世界を規定するものはなにか?」という自問に「石油価格」と答えているちきりん。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20071123



すごいことになってるよね、と思います。

経済レベルの比較ではオイルショックの頃をそろそろ超えたインパクトの値上がりでしょう。当時は74年が5ドル以下から倍の10ドル前後へ、79年が10ドルから25ドル付近へ、うろ覚えですが、倍、そしてまた倍って感じだった。

今回は同じインパクトがあるのは100ドルくらい、といわれていたのですが、それをすでに4割も超えたレベルに来てる。そもそも8年間で20ドルから140ドルまで7倍だからね。

なのになんであの頃ほどの問題になってないか。あの頃は大阪なんて「トイレットペーパー騒ぎ」で大変だった。いや大阪だけでなく当時は国をあげて省エネしたはず。銀座もネオンを消し、野球はナイターをやめた。3階まではエレベーター使うなとか、新幹線も冷暖房の温度を変えた。

今回は確かにいろいろ値上がりしてるけど、確かにガソリンは高くなってるけど「パニック」でもないし、「国を挙げて省エネ」にもなってない。なにが違うのか?

★★★

当時は、「価格問題」ではなく「実需問題」だったからですよね。今回は皆明らかに「実需問題」ではなく「価格問題」だとわかってるから騒がないのだ。「金融市場で高くなっている。」(正確には商品市場、もしくは先物市場)のであって、突然石油の埋蔵量が減ったわけでも、中国がいきなりアメリカと同じレベルのエネルギーを消費し始めたわけでもない。

食料も本当は同じだ。価格問題にすぎない。だから偉い人の中には「暴動なんてやめろ。食料は余ってる。」という人がいる。

確かにマクロ的には価格問題にすぎない。しかし、一部の貧しい国にとってはそれは「実需問題」だ。だから暴動が起こる。


オイルショックの時とちがって、今回日本が「物価高が庶民の財布を直撃!」くらいのニュース報道で済んでいるのは、日本が「価格問題」が「実需問題」に響かないレベルの国になったから、ということ。高くたって、ないわけじゃないんだから、買えばいい、ってことだ。

田中角栄首相が、あの特徴のあるダミ声で「我々は今こそ!倹約は美徳であることを再度思いださねばなりませんっ!」と“ほしがりません勝つまでは”を彷彿とさせるようなスローガンで“国民の決意”を問うていたあの頃だって、欧米先進国ではせいぜい小型車がよく売れますね、という程度であって、おそらくナイターやめたりはしていないのだ。


というわけで、こんなすごい価格になっているのに、すこぶる平穏な日本。

豊かになっただす。

★★★

さて、原油価格が20ドルから140ドルになるということは、ロシアと中東の財産が20兆から140兆になったということだ。いや単位はなんでもいいんですけどね。

そりゃーすごいことだよね。そんなに資産価値があがったら本当にウハウハだ。

そして、この「ロシアと中東」というのは、両方とも「アメリカの敵」なわけで、「アメリカの敵の富が7倍に増えた!」というのがこの8年間に起こったことなわけ。

しかも、それを起こしたのは、イラクの原油供給能力を何年もぶっ壊してしまったアメリカなのであるというこの皮肉。


笑えるほど皮肉。


がはは。


ざまみろアメリカ。


って感じです。

★★★

だが、報復に出てると思う。


みんな気がついてしまった。「自分が持ってるものの値段が上がると、超儲かるじゃん!」って。

あくせく働く必要はない。自分が何か人よりたくさん持っているものがあるなら、それが値上がりするように仕向ければいいのだ。ブリキのおもちゃでもなんでもいい。そしたら一気に金持ちになれる。



そして天下のアメリカ様は気がついた。


「食料の値段、高くしようぜ」と。


「なんで?」


「うちは実は穀物の大供給地帯だし、表庭のカナダはもちろん裏庭の南米も食料豊富な地域だろ?だけど寒いロシアにも砂漠の中東にも食料はないんだぜ。それに、中国は人口が多すぎて食料が値上がりしても富は得られない。うちだけが儲かる食料の値上げを画策しようぜ!」って。



「なるほど。でも、どうやって食料の値段あげるんだ?人口をいきなり増やすのは難しいし、食料の供給をわざと減らすなんて、すんげえ作為的なことやらなできんだろ?」


「ふっっふっふ、俺にいい案があるんだぜ。」

「なんだぜ?」

「食料を“腐らす”んだぜ」

「腐らせる? ってーと、わざと?」

「わざとだぜ」



「?? そんなことしたら、食べ物を粗末にするな!って怒られるだぜ?」

「怒られないだぜ。」

「なんでだぜ?」

「バイオ燃料にするって言えばいいんだぜ。」

「なんだって?だぜ」

「そしたら“エコだ”ってことになるから、考えの浅いエコ信者は誰ももったいないって気がつかないだぜ」



「ふううううん。そんな巧くいくかなあ」

「いくいく」

「ほんとに?」

「ほんとさ。しかもな、もっといいこともある」

「なんだぜ?」

「万が一にもバイオ燃料が技術革新ですんごいすすんで・・・」



「おおなるほど!」

「だろ?」


「うまいこと考えたな兄貴!」

「だろだろ!」

「ウヒヒだな」

「ウヒヒだよ」

★★★

中国もインドも自分たちがたくさん持っているものの値段をあげてこようとするだろう。


「げげげ、石油も食料も値段あがっちゃうぜ。うちもなんかで稼がないと」

「稼ぐなんてまじめな方法じゃ間に合わないよ。俺たちが特にいっぱい持ってるもの、それの値段をつりあげようぜ!」

「俺たちだけがいっぱい持ってるもの?」





人材だ!


頭脳も手足も。


たっぷりもっている!!



★★★

日本はどーする?