「情報」と「結論」の間

最近、「若者の○○離れが進んでいる」というニュースがやたら多いでしょ。あれ聞くたびにほんまかいな?と思っている人って多いと思うし、ちきりんもよく元記事まで辿って読んでみるのですが、元記事にさえ必要な情報が掲載されてないことが多く、結局その記事の結論が論理的に正しいのかどうか確認できなくて困ってました。

で、必要なデータを探していたのだが、なかなかまとまっているのがなくて、結局、オリジナルの人口データを自分で加工することにしたです。

同じように感じていたみなさんも、ご利用くださいませ。



最初は、20代の人(20歳から29歳)の人の人数(実数)です。大正9年から5年ごとのデータを棒グラフにしました。ただし直近のみ間隔が(5年ではなく)3年になってます。横軸は以下すべて同じです。

こうやってみると、「20代の人数」というのが、実はかなり変化していることがわかります。たとえば、「19●●年に自動車を買った20代の人は○○万人だが、今年自動車を買った20代は○○万人で、○%も減少している。」という記事を書きたい場合、基準年となる19●●年を、1975とするか1985とするか、で結論を全く逆にできます。

だって、この10年で386万人も「20代の人口自体」が少なくなってるんで、どちらを基準にとるかで全然違う。かなり意図的な結論を導くことができそうです。

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次は、「全人口に占める20代の人の割合」を時系列に並べました。こちらも一貫して減っているのかなと思っていたのですが、そうではなくかなり上下していました。

こちらは「19●●年に自動車を買った人のうち、20代の人が占める割合は○○%であったが、今年自動車を買った人のうち20代は○○%に過ぎない。」とか言っている記事との比較に使えます。

ちなみに1970年に19%を占めていた20代人口は今や全人口の12%にすぎないので、ここを起点にした場合は減少幅が7%以内に収まっているなら「若者離れ」とは言えません。

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一応、全世代の人口構成比のグラフも載せときます。一番下の赤系の3色が、10歳未満、20歳未満、30歳未満。「赤系は若い人」と読めばよいです。

次の紫、緑、水色が、下から30代、40代、50代、なので「中高年」とか「労働中心層」と見てください。

最後のグレーのところが60代以上の10歳刻みです。

赤系の若年層がぐぐっ〜と下がってきて、グレーがどどんっと増えてるのは、ご存じのとおりです。

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最後は、世代別の人口実数グラフ。本当はこのグラフのデータ、つまり他世代の実数も各記事の検証に必要になります。だって、「20代の自動車離れ」が起っているのが事実としても、同じ比率で(もしくはより大きな度合いで)「40代の自動車離れ」も起っているかもしれず、だとしたら単に「自動車が売れません」というだけの話であって年代論ではないのでね。


というわけです。グラフから数値読み取るの大変と思いますが、一応の目安としてお使いください。



なお、ロジックの方もまとめておくと、ああいった記事が正しいかどうかを検証するには、

(1)記事中にでてくる実数や比率の変化が、上記グラフにある「20代の人口自体の実数や比率の変化」より、本当に大きいかどうかのチェックがまず必要。

(2)次に、その変化は、他世代における変化より大きいのかどうか、というチェックが必要。


(1)については、上記のグラフがあればチェックできますが、(2)は記事データ側からの提供がないと読者にはわかりません。

しかも「20代」等ではなく「若者」とかいう記事もあって、「それ何歳の人のことですか?」もわからなかったりする。上記にみたように年代の人口って結構上下するので、いくらでも情報操作が可能な感じです。

全くなんでこういう不完全な記事が多いんだろうね。読者に手間掛けさせるのやめてほしいよね。ってか、

「情報」からなんらかの「結論」を導きたいなら、その間がどうつながっているか、をきちんと明記するのは書き手の責任のはずなのにね。


ああ、そうそう。
あと(1)(2)がクリアされたとしても、(3)もあります。

(3)それが(本当だとして)それって、問題なわけ?ってのもある。


50年前には「若者のふんどし離れ」が起っていると、憂いている人がたくさんいたに違いない。そして50年後には「若者の“絵文字”離れ」が進んでいると朝日新聞が嘆くのだ。(50年後に朝日新聞が存在するかどうかが寧ろ微妙)


「若者の○○離れ」がおこらない社会とは、「全く進化のない社会」と同義だからね。

そんじゃー