“Web2.0最後尾”、イヤまたその後ろ

昨日コメントで「ちきりんさんはあえてネット世間からは距離をおいているようにみえる」、「あまりネット指向じゃないようにみえる」と言われました。

立ち位置をどこにするか、ということによると思いますが、少なくとも「すごくネット指向」が強いわけでないことは確かです。

ファッション業界、ネットとかガジェットの市場、ハイテク業界や自動車業界などで、よくマーケティングで使われる顧客層分類法があるでしょ。最初にごくごく少数の(1)「商品化前からその分野に注目してて常に最初にリスクとってトライする層」があって、次に(2)「新しい物にそれなりに早く飛びついてヘビーに使いこなす層」がいて、その後に大きな固まりとして(3)「ごく普通の人。かたくなではないが、ある程度普及しないと使わない」という人達がいて、その後ろに(4)「比較的保守的」なこれまた大きな層(なかなか動かない層)があって、残りは(5)「最後まで動かない人」みたいなね。

これでいうと、今のweb2.0とか言われるネットの世界ってのは(1)の人が開発&仕掛けてきて、(2)の人がヘビーユーザーとなって作り上げている世界で、(3)の人の一部が周辺に参加してる、という感じなんだと思うのですが、ちきりんはたぶん(3)のど真ん中くらいの人なんだろうと思います。

ということで、世間的には“ごく普通”のところに位置していると思うけど、母集団を社会全部ではなく「現在ネット社会に参加、活動している人」とした場合は一番最後尾にいるわけですね。「あんまりネット指向ではない」と見えるのは確かにそうだろう、と思います。はてなのサービスもブログ以外なんも使ってないし。

★★★

ちきりんは長く紙のノートに日記を書いてきました。だからブログを書く時間は、元々紙のノートに日記を書いていた時間がそのまま横滑りしているだけです。つまりツールが変わっただけ。しかもまだ圧倒的に「紙に書いていた時代」の方が長いです。

紙からネットに移ったのは、鉛筆よりタイピングの方が楽になったのが一つ。もうひとつは、誰にも見せないものとして書くと非常に差し障りのある内容が多くなるため保存できなくなるから、です。

誰にも見せないと思うと、登場人物を実名で書いてしまいます。そうすると長く保存するのは問題がでてきて定期的に破棄していたんです。自分が交通事故でいきなり死んだときにこれが全部残るなんてありえない!と思って。でも今は公開しているのでかなり昇華したレベルで表現してます。これならいつまでも残せる。これも紙よりいいかも、と考えた理由です。物理的な保存スペースも不要だし。

このように、ちきりんがブログを書きはじめた理由は「紙に書くより楽で、物理的にも中身的にも気軽に残せるから」ということだけでした。(その後、新しいおもしろみを見つけたという話は昨日のエントリです。)


ところが、ネットの世界の方から、つまり(1)や(2)の方から言えば、ブログってのはそういうツール、すなわち単なる「公開されてる電子的な日記帳」ではない、ということなのだと思うのです。

トラックバックにしろキーワード機能にしろブックマークや★マークにしろ、「どんどん見知らぬ人とつながっていくためのツール」として認識されている、作られているのだと思います。しかもネット上だけでなく“オフ”と称して実際にリアルの世界でもつながっていこうとかしてる人も多い。メールアドレスを公開してる人もたくさんいますよね。ブログの書き手と読み手という関係だけでなく一対一での対話を積極的にとっていこうという志向をすごく感じます。

ところが最後尾のちきりんはブログを「人とつながるためのツール」とは考えたこともありません。それってweb2.0的にいえば、「ありえない」んだろうとは思いますが。ちきりん的にはどっちかいうと「勝手につながっちゃうのって結構ややこしくない?」くらいの感覚。

「つながること」「コミュニティを作ること、入ること」に特にニーズがないと、キーワード編集なんかしてどーなんの?という感じです。はてなハイクとかTwitterとかもよくわかりません。

★★★

あと、“ネット上のコミュニケーションのルール”もちきりんはよく理解していないと思います。なんか独特のルールがあるように思えますが、わかってないです。だから基本はリアルの世界でのルールに沿って対応させていただくようにしてます。

たとえば現実の社会で道で知らない人に話しかけられたとするでしょ。もしちゃんと「こんにちは」と挨拶されて丁寧に道を聞かれたら、出来る限り答えるよね。会社で「ちきりんさん、こんにちは!」と声を掛けられたら、「ああ○○さん、こんちは!」と答えるよね。

でも道ばたで知らない人からいきなり「その洋服、色が変ですね。僕の趣味と違います。」とか言われても、返事のしようがない。「ああそうですか」って感じだが、道でこんなこといきなり言ってくる人がいても普通返事しませんよね。(「その洋服素敵ですね!」なら、もちろん問題ないです!)

リアルな社会なら講演会でスピーカーに質問する時も「大変興味深いお話をありがとうございました。私は○○の仕事をしているものなのですが、ひとつ質問がありまして・・」って始めるでしょう。

でもブログへのコメントだといきなり「それは違うのではないでしょうか?」とか書く人はたくさんいるように見えます。挨拶も自己紹介もせずに初対面の人の意見にいきなり反論するってのは、リアルにはちょっとあり得ない気がしますけど、ネットではそれが一定限度受け入れられているように見えます。そこから対話が始まってコミュニティに発展したりするらしい。(知らんけど)

ちきりん的には、たとえネット上であっても知らない人から挨拶もなくいきなり否定的に話しかけられるのは、リアルな世界の路上でそうされるのと同じくらい不可解だし、そんな人と“つながりたいか?”とか言われても“いえ、全然”って感じです。

つくづくちきりんて“ウエブ時代の最後尾、のまたその後ろ”にいるなあ、と思います。



ちなみに、長く読んでくださっている方はおわかりと思いますが、ちきりんはネットの可能性については高く評価しています。ネットやネット上の様々な仕組みは実際にリアルな世の中を大きく変えていこうとしています。これからもそうでしょう。

ただし、ちきりんは最後尾のそのまた後ろにいるんで、全然ついっていってません、っていうだけの話です。

★★★

ちなみにウエブに限らずIT技術全般にちきりんはついていってません。

たとえば、どなたかがブログで「現金でチャージしないといけないような電子マネーは意味不明」と書かれているのを読んだ時も驚きました。

ちきりんは携帯に電子マネー3種を入れてますが、そのうち2種類は「現金でチャージ」してます。コンビニのレジで。もちろん携帯操作によりクレジットカードから直接チャージできるようになってるみたいです(多分)。でもこれが面倒。そもそも3種類別々にIDだのパスワードだのがあって、パスワードの条件もばらばらだから(セキュリティ上はいいんでしょうが)、結局のところメモをみないとクレジットカードからチャージできない。

そのうえ、2ヶ月後にクレジットカードの明細にそれが掲載されるけど・・・そんなん覚えてないでしょ。確認するにはまたいちいちパスワード入れて携帯で履歴をみないといけない。めんどくさすぎて耐えられない。現金チャージならその場で終わりです。

これが“最後尾のそのまた後ろ”のちきりんの実感です。

というわけで、ナナコとエディはコンビニで現金をチャージしてます。モバイルSuicaも早く地下鉄駅で“現金でチャージできるようにしてほしい”んだけど、って感じです。

もしかして・・時代に逆行してます?

★★★

さらに(1)と(2)の方を驚かせてあげましょう。

ちきりん家には薄型液晶テレビがありますが・・・ちきりんはデジタル放送を見ていません。なぜなら録画する時の制限が面倒すぎるから、です。

アナログならHDDに録画して気に入ったらDVDにうつして、友達の家にもっていったりあげたり自由自在。ところがデジタル放送を録画すると、一回のダビングしかできない上に、まずはダビングできるDVDの種類に制限がある。これが面倒すぎてちきりんには耐えられない。

テレビなんてアナログで十分ですよ。別にデジタルでみたいほどのものは全く放映されておりません。韓国ドラマくらいしかみないちきりんには「デジタル」なんて無用の長物です。


★★★

以上です。ってか、こんなに「自分は遅れてますけど」ってのを堂々と宣言しちゃうってのはどーよ、とも思うけど。まあいいです。

ちきりんブログの読者は(3)の方が中心かなと思うけど(初めてのコメントの際、“はじめまして”って言ってくださる方も多いしね)、でももし(2)や(1)の方がこれをお読みになることがあれば、“へ〜最後尾のそのまた後ろって、こんな感じなんだなあ”とか思ってくださいませ。


そんじゃ。