物理の世界の皆様、感謝です!

結構びっくり&感動しました。回答してくださった皆さん、どうもありがとうございました。で、せっかくなのでまとめてみたです。


「この人に与えなければ賞の権威がなくなるとまで言われる南部さんのような研究者でも、87歳までノーベル賞を受賞できないようなことが起こるのはなぜなの?」


という超ド素人の素朴な疑問に“ちきりんブログ読者・物理班”が総力回答!

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全体数のアンバランスに因るもの

(1)物理の分野も細分化され、その領域は今や非常に多岐にわたっている。一方、ノーベル賞は一年一テーマにたいして授与されるため、長期間順番が回ってこないことがある。

(2)しかも近年においては、いわゆる“ノーベル賞級”の業績は非常に多く、世界中に数多くの“いつ受賞してもおかしくない”といわれる研究者が存在している。不幸なことに存命中に間に合わない方も少なくない。


業績の分野に因るもの

(3)また理論分野の業績に関しては、理論自体がいくらセクシーでもやっぱり実験で検証されてから授与したい(すべし)、という考えがあり、理論物理家の受賞は実験技術の進歩や実験分野の研究者の功績に依存するところも大きい。

(4)ノーベル賞にも時代ごとのトレンドがあり、理論重視や実験重視、また、特定分野の重視や、実用重視などの傾向も存在する。全体の功績と賞の数のバランスがとれていない中では、こういった時流とのマッチングも受賞時期に影響する。


審査の難しさに因るもの

(5)ノーベル賞は人(=その人の総合的な業績)ではなく“特定の”業績に与えられるものである。しかし多くの業績は先任者の業績の上に積み重なる形で築かれるものでもあり、“業績のどの部分を受賞理由とするか”“その部分に最も功績が大きかったのは誰なのか”という詳細まで含めて合意に達することは専門家にとっても容易なことではない。

(6)同時に、(逆説的なことではあるが)レベルが異なるくらい画期的な業績、たとえばより抽象度の高い概念や枠組みの提唱など、については、授与審査と判断に、より時間がかかることも起こりえる。


受賞できる人数の制限に因るもの

(7)一年に一テーマでかつ3名以内という制限上の理由から、やむなくその枠から漏れてしまう場合もあるだろうし、組み合わせの妙により早めに評価される場合もある。

(8)大がかりな実験や長期間の観察が必要な実験に関しては、多数の研究者がかかわっているが、当然のことながらすべての研究者が受賞できるわけではない。


業績以外の要因に因るもの

(9)また、必ずしも自分の業績をアピールすることに積極的でない人もいるであろうし、反対に戦略的・積極的にアピールし受賞を促すような活動も影響を及ぼさないとは言い切れない。

(10)国防上の理由から画期的な業績を国際的に発表しないこともありえるし、反対に国が実験施設などに多額の投資をすることにより自国の受賞者数を増やすことに貢献することも可能といえる。


以上のひとつ、もしくは複数の複合的な理由により、「この人がもらってないなんてありえない」という人への授与が非常に遅れるケース、もしくは、授与されないままとなるケースが起こりうる。


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こんな感じ?
物理班の皆様、ご協力ありがとうございました!

ではでは