これから世界でおこりそうなこと列挙

どこまで下がるのよ、株価・・・金融市場に関して言えば本気で1929年に近づいてきたよね、


なんだけど、前も書いたように問題は実体経済側への影響。*1正直まだ(実体経済側への影響は)余りでてきてないなあ、という気がしてます。

金融市場に対比して言えば、実体側はよく持ち堪えてる。ただ問題はこれがどこまで踏みとどまれるか、という点。こっちに影響が出始めたら、マジでみんな不安感が高まると思うので。


ちきりんは経済学は専門ではないのでとりあえずここで使っている言葉の“ちきりん定義”を書いておくと、

金融市場=株価とか、為替レートとか、金利とか。もしくは銀行とか証券会社とか保険会社とかに関するお話。

実体経済=雇用(失業率&新規雇用)とか、ボーナスや給与とか、売り上げや利益額とか、金融以外の事業会社に関するお話。

とゆー程度の違いで語っております。

★★★

で、注目すべき期間の“くぎり”としては、
第一期:今から年末まで
第二期:年明けから春過ぎ(梅雨時)まで
第三期:梅雨明けから来年の秋まで
の3期に分かれます。次の期間のシナリオは一つ前の期間のシナリオによって変化する、という意味で。まあロールプレイングゲームでいうステージみたいなもんです。



で、次は何が起こりそうか、ポイントになるか、震源地のアメリカから見てみると。


金融市場側がこのまま下げ止まらないと、まずはいくつか危ない会社が飛ぶかもね、と思います。アメリカだと象徴的なところでGMとか。地銀や中小の保険会社もやばいと思うんだけど、金融機関の場合は州にしろ政府にしろなんらかの方法で受け止めるんだと思うんです。AIGみたく。

だけどさすがにGMみたいな事業会社に公的資金使って潰さないってのは(欧州ならありえるけど)アメリカはあり得ない気がする。“おいおい皆して今から共産主義かい”ってな感じでしょ。

GMみたいなのが飛ぶとイメージ的にも大きいし、部品等の供給会社など、結構広範に“一緒にとぶ”会社がでてくると思います。販売会社系も全滅だからね。雇用への影響も大きい。


で、もうひとつは全体の雇用状態。日本と違って雇用をきちんと切る国ですから失業率がどこまであがるか、というのがポイント。10%から20%の間のどの辺まであがってくるか。もしかして20を超えてくるのか?ってのが“やば系ライン”。

失業者が増えると住宅ローンのデフォルトが止まらなくなるのと、個人消費が落ち込むので影響が大きい。特に個人消費に関しては、金融セクターへの依存度が高くないカリフォルニア等でも注目だと思います。だって多くのIT企業やバイオ企業、それらに投資する企業の人達は「株で」儲かってきたんです。別にITで儲かってたワケじゃないでしょ。

グーグルだって利益は伸びているが、グーグル社員がプール付きの家やセクシーなコンバーチブルを買ってる頭金はたぶん持ち株の一部売却じゃないの?って感じだし、その家に入れる高級家具や車で出かける先のレストランの支払いは、含み益分を仮想に使ってただけなんじゃないかな。給与分での消費貢献度なんて全然小さいと思うけど。

というわけで、個人消費がどこまで落ち込むか。ここが次のポイント。報道だとクリスマス消費のことがよくいわれますが、それよりはむしろ車、大型家具や家電のような大きめの消費がどこまで落ちるかがポイントだと思う。


もうひとつの注目点はアメリカが他国をどこまで切り捨て始めるかってこと。これは失業率の上がり方によると思うんだけどね。あの国は失業率が高くなると政治的な“政策”が必要になる国なので。*2


他国のことを切り捨てるという意味は、自由貿易or自由経済をやめるってことです。

ここんとこアメリカはずうっと自由貿易化を強力に推進してきたわけですが、いきなり“中国の市場開放しなくていいから、うちにも持ってこないで”とか“移民はみんな自分の国に帰れ”とか言いだしかねない、と思います。

それどころか“為替の自由取引の一時的な制限”とか言いだしてもちきりんは驚かないよ。今後“世界は自由主義経済をどこまで堅持できるか”ってのが問われると思います。


というわけでアメリカ経済に関して言えば、
(1)象徴的な事業会社の破綻が起こるか。続くか。
(2)失業率がどのラインまで上昇するか。
(3)個人消費がどこまで落ち込むか。
(4)自由貿易、自由主義経済制度をどこまで堅持できるか

が注目点かな。

★★★

日本はですね。


明らかに起こるのは、
・消費低迷
・売り上げ低迷
・個人所得低迷
・雇用抑制(非正規雇用は大幅削減)


ここまでは確実に起こります。非正規雇用市場は悲惨なことになると思う。自動車工場の期間工なんて全部切られてもおかしくない。正社員だけで十分、というところまでいくのでは?

今まだ日本の工場で作られてるものってのは高付加価値のもの、つまり欧米を中心とする世界市場で中の上層に売れているものなのよね。

株価下落ではその層が今一番傷ついてるわけですから、その価格帯のものはホント売れなくなると思う。代表例が大型テレビとか高級車。なので、こういった輸出商品を作ってる工場で働いてる派遣、契約系の職の方は大きな影響を受けるでしょう・・

そうなると当然サービス業、オフィスの派遣需要、軽作業系の派遣需要も相当程度の減少があると思います。若年層への社会保障が非常に薄いこの国。

昔と違って派遣や契約の仕事で世帯を支えている人も多いことを考えると、ホームレスに陥る方が急増したり、失業率が10%を超える水準まで上がるということも起こりえる。今までちょっと日本にはなかった光景になってくるかもしれません。

前から書いているように、この国では“いったん正社員になっている人の60歳までの雇用”というのが“超最優先かつ超最優遇”なので*3、しわ寄せがすべてそれ以外の雇用(新規、定年超、派遣、期間契約等)に行くってことだと思う。反対にいえば大企業の正社員職にいる人は、ボーナス減はあるけど例によって雇用はある程度守られるんでしょう。


が、正社員だってボーナス含め所得はあがりませんので(ってか下がり気味になるでしょう)、消費低迷→売り上げ低迷も止まらないと思う。百貨店系なんてもうアウトじゃない? スーパーでさえ厳しいと思います。

アパレル、家電、車、家具、外食、どれも消費がとまる(マイナス成長になる)と思います。医療、介護、福祉などの場面は悲惨な例がいくらでもでてくると思う。セーフティネットがお粗末だから・・

ただ日本はアメリカと違って“ゆっくりした国”なんで、だいたい年末から来年春までかけて“じわじわ”わかってくると思う。年末までの2ヶ月くらいは日本で“やばい感”が実感できるのは“金融市場だけ”なんじゃないかな。


日本でのもうひとつの注目は、どこまで会社がとぶか、です。今年は異常なほどたくさんの不動産会社(デベロッパー等)が死んじゃいましたが、不動産関連業界の破綻はまだまだ続くと思います。

今までに逝っちゃったのは開発したマンションを一棟丸ごとファンドに売っていたような会社です。でもこれからは個人に売るために開発していた物件も動かなくなるでしょう。

高額物件は購入予定者の大半が金融市場で大損こいてるし、一般物件についてもわざわざ値段が下がりつつある時に買おうという人は少ないでしょ。というわけで不動産業界では一般の会社にも広く危機が忍び寄ると思います。

中小企業の倒産はその他の業界にも拡がると思いますが(しかも広範な業界において)、それがどの規模、レベルになるか。ここはまだ見えないけど、かなり深刻な予感はします。

だいたい不動産が動かないと家具とか家電とかも動かなくなる。小金貯めてた人は皆大なり小なり株でやられてるから消費する気分になれなさそう。

お金のない人はボーナス、もしくは雇用が危ない。これじゃあ誰もおおっぴらに消費しようという気分になれない。ということは、個人消費が停滞しまっせ、ってことです。

それもあわせ消費が低迷するってことはどの企業もモノが売れず利益がでない。そうすると銀行からお金借りる必要がでてきますが、貸してもらえないとアウトになります。銀行は株が下がってますから資本が足りなくなると貸せなくなります。すると“とぶ”。どーする、どーなる?


というわけで、日本での注目は、
(1)非正規&新規雇用市場がどこまで壊滅的になるか?
(2)中小企業の倒産(不動産業界+その他業界)がどこ程度起こるか?
です。ただしタイミングはアメリカ+3ヶ月後、です。


なお、地銀とか弱小金融系は危ないところたくさんでますが、これは国が助けるんでしょ、ということで。

★★★

中国は?


ちきりんは中国に関しては極めて楽観的です。日本も高度成長の最後の方に2度の石油ショックに見舞われ経済成長が一時的にストップしました。プラザ合意による急激な円高でも輸出系製造業を中心にひどい苦境が訪れました。

でも結局どっちも乗り切ったじゃん。


上昇エネルギーが一定以上ある国(時代)は、大きなことがあれば一時的にはショックを受けますが、それを飲み込んで次の一歩につながる、ということだと思います。


たとえばオイルショックにより日本の技術は大きく方向転換し、製造業の生産性は画期的に上昇しました。円高の時も同様です。どこで何を製造するか、それまでは全く検討されていなかった製造体制が一気にグローバル化したのです。

中国も同じです。アメリカへの輸出で成長するのは当面無理だ!となれば、その需要を国内で喚起しようという動きになるでしょう。成長する国のエネルギーってのは負をも正に変える力がある。そこが強いところです。

日本の場合、海外への輸出が減る分を日本で需要喚起するなんてとても不可能ですが、中国なら可能です。以前いただいたコメントにも書きましたが、中国全体で言えばまだまだ家やマンションも、ビルも、車も飛行機も電車も、家具も家電も、遊びも教育も、衣服も夕食のおかずも、必要です。実需があるってのは強いことなんです。

しかも中国は国内にそれらを供給するための資源も全部もってます。今までみたいな放漫な作り方では資源はたりなくなるけど、生産性が高まれば全くないわけではない。そういう技術が進む方向にいくだしょ、って思います。

あと中国の問題は銀行の抱える多額の不良債権なのですが、こちらも日本のあの頃と同じかな。誰かが強制的にあぶり出すまでは隠せると思います。つまり“日本の90年代”が中国にもくる可能性はあるけど、それはまだ先の話かなと思います。そもそも為替も自由化してないんだから強いよね。自由のない体制は管理が圧倒的に簡単。

なので、BRICS全部とは思いませんが、中国を含む一部の国は“金融市場”は死にますが実体経済は問題ない(短期的な落ち込みに落ち着く)と思います。


アラブとロシアは?
また今度。


というわけで、世の中は結構暗いかも。

なのでとりあえず、毎日おいしいご飯を食べられることに感謝して生きることにしましょうね。

あと、よい子のみなさんはちきりんブログなんて信じないようにね。超適当なこと書いてますから。


ではでは・・・