かくも遠き真実

テレビタックルかなにかタケシの番組に例の元幕僚長のおじさんが出ていた。相変わらずくだらない親父ギャクを飛ばしまくっていた。この人の本当の問題はその思想性とかではなく、あの下らん駄洒落癖だと思うよね。言わずにはすませられないのよね、もう体質として・・


まあそれはそれとして。そのあたりの議論を聞いてて思ったのは、たかだか70年ほど前の話に過ぎないのに*1、結局のところ真実なんてわかんないんだよな、ってこと。特にこういう思想的に対立しがちなことって「実際んとこどーだったのよ?」ってのが本当わからない。

これは結構残念。近現代史好きなちきりんとしては是非知りたいところではある。けど、タイムマシンがあってもそれを知るのは相当大変だと思う。だって当時に生きていた人だって、また、相当政権の中心にいた人だって、何がどうなっているのかわかってなかったと思うから。

アメリカの思惑、ロシアの思惑、ドイツの思惑、それだって国にひとつの意見や流れしかないわけではない。そして日本の中にだって様々な有象無象の力の流れがあって、ああいうことが起こった。それをこう「鳥瞰図的に」見ることができる“神モード”とか、めっちゃほしいけど絶対手に入らない。

ちきりん的には「白人国家にしてみれば、劣等民族(非白人)国家が植民地支配側に回ろうとするなんて絶対に許せない」ってことだったんじゃないかなあ、と思うんだけどね。「おいおいニッポン、サルみたいなくせして調子にのるんじゃねーよ」ってことで、ああいうところに追い込まれて、あほな日本がアメリカに宣戦布告したと。

中国等への侵略もそれ自体正当化する気はないけど、いろいろ封鎖されて武力をもって外にでるしか選択肢がないところに追い込まれてもいたんだろうとも思う。

けど、わかりません。全然。どーなんだか。



だって“中立的なデータ・分析・見解”みたいなものがすんごい少ないじゃん。てか、ほぼ“ない”と言ってもいいくらいだと思う。こういうことに関してはwikiから小説から学者の論文から政府見解から、何からなにまで「偏ってる」と思ったほうがいい。もちろん上記のちきりん史観だって同様だ。

というわけで、あのあたりの“開戦に向かっていく日本”ってのの歴史は、もんのすごい先まで、この戦争をなんの感慨もなく語れる人たちが日本の人口の大半になる時代まで(そしてそんな時代は決してこないのだ。)客観的なデータも分析家もでてこないのだろう。


この時代の真実が(同じくらい昔に起こった他のことに比べても圧倒的に)データがでてこないもうひとつの理由は、天皇&天皇の戦争責任論が絡んでいるからだ。“だから語らない”という人がたくさんいる。

また、誰ひとり真実を鳥瞰図的に把握していた人はいない、というのはそうだと思うのだが、それでもキーになる登場人物というのはいて、昭和天皇はまさにその中心にいた人物だ。昭和天皇がなにらか語っておられれば、その当時の真実を知る大きな手がかりになっただろう。

でも今の天皇は昭和天皇のまだ“次の方”に過ぎず、私たちの国にとって“あの戦争における天皇の役割”なり“責任”を議論するのは、まだまだ百年早い、くらいの感じなんだろう。

ちきりんもこの件については自分の目が黒いうちに(自分にとっての)納得できる真実に到達できるとは思っていない。歴史とか実際に起こったことのおもしろみというのは、小説の謎解きのように簡単にわかったりは決してしない、という点にもある。簡単にわかるはずもないレベルのものなのだ。だから面白い、ということ。


最近よくサスペンス分野の小説を読むのだが、結局は最後の一章を読めばすべてはきれいに謎解きされてしまう。そのこと自体が、物語のどうでもよさ、というか、浅さというか、偽者的なところであると思うのだ。

あの戦争に限らず、実際の世の中には数多くの「何が起こっていたのかよくわからないまま」になっている事件、事象がたくさんある。今起こっていることでも全然よくわからないことだらけだ。

そしてその大半の事象に関して、ちきりんもそして世間の多くの人たちも最後まで真実を知らないままになる。それは人の無知さとか、権力の閉鎖性を表しているのではなくて、結局のところ神が創ったもの(人間の世の中)というのは、人間が作ったもの(小説の中の世界)などとは比べようもない複雑さと深遠さに満ちた世界であると。そういうことなんじゃないかと思う。

決して手の届かない真実に溢れた世界だからこそ、最後の一章ですべてがわかるほど単純ではないからこそ、世界はこんなにも苦しく、だけれどもまた反対に、予想もしない希望にも溢れているのだと思いたい。



昨日は「いいかげんにしろよ」と書いた。「なんでこんなことを」「本当にこれしか方法がないっていうんだろうか?」と暗澹たる気持ちになるけれど、彼らには彼らなりの理由があって、この年の瀬に爆弾を落としまくっているってことなのだろう。あれだけ多数の人の命を奪わなければならない理由と正当性が、彼ら側には明確にあるのだろう。それがいったい何を意味し、その決断がいったいどういう意味を持つのか、ちきりんにはわからない。

いやそもそもあの地域がいったいなんでもってこんなことになっているのか。それさえ結局はよくわからない。誰もわかってないと思う。そしてなんでこんなにも解くのが難しい問題になっているのか。いろいろ読み学んでもやっぱり理解できないよね。*2



真実はあまりに遠い。そして決して手に入らない。
私たちが住んでいるのは「最後の一章を読めばすべてが見えてしまうような世界」ではないってことなのだ。


そんじゃーね。


*1:いや70年って十分昔だぜ、って意見があるのはわかりますが

*2:現時点でのちきりん仮説は「アメリカがユダヤの影響が非常に強い国家となっており、アメリカにとってイスラエルは中東における唯一の足がかりにできる土地だからなんとしてもあそこに安心して操作できる安定した国家を作りたい」ってことなのかなあと思ってますが。この理解も、どうだかね。って感じ。