楽天の三木谷氏が薬のネット販売の規制に関して怒りまくっているというニュースを読んだ。いつの時代も起業家の最大の仕事は「民を邪魔する官と戦うこと」なんだなと思った。
古くは本田宗一郎氏がバイクから自動車製造に乗り出そうとした時に「そんなたくさんの自動車メーカーはいらん。やめろ」と言い出した通産省(当時)の話が思い起こされる。
当時の役人に言わせれば日本の自動車メーカーが世界市場を席巻するなど考えも及ばない。こんな小さな島国で何社も自動車メーカーができたら皆共倒れになって世界で戦える力が付かない、と思ったのだろう。
それを押し切った希有な起業家はアメリカで最も成功する自動車会社を作り上げた。
他に日本で「官と戦う起業家」として有名なのはヤマト運輸で“クロネコヤマトの宅急便”を開発した小倉昌男氏である。
税金で構築した郵便局ネットワークを元にして圧倒的に有利なビジネスを展開しながら「コストがあがりました」という理由で値上げを繰り返し、殿様商売をしていた郵政公社。
ヤマト運輸が始めるすべての新サービスに反対し、それが難しくなる法律や規則を制定し、自分達の準備が整ったらすぐに真似して参入してくるという手法。
巨大な官に立ち向かった小倉氏はちきりんが尊敬してやまない起業家だ。
巨大な元官企業に果敢に挑んだ、という意味では孫さんも同様だ。ドコモがどこよりも早く日本中にアンテナを立て終えたのは、税金で日本中に作られている電話局の職員がいたからこそだ。これで新規参入の競合他社と公正に競争しているとは聞いてあきれる。
孫さんはまた、金融当局と大手銀行が牛耳っていた資金調達市場をベンチャー企業にもお金が回るようにした立役者でもある。彼がいなければ、ベンチャー企業はいつまでも銀行からの出向者を受け入れ、しかも個人保証をつけるという理不尽な方法以外の資金調達方法をもてなかったかもしれない。
先日、子供が持つ携帯から見られるネットサイトを一律規制しようとした動きに対して、モバゲータウンを運営するDeNAの創業者社長、南場智子氏らを初めとする携帯サービス各社の経営者がその動きを押し戻した。
そして今、ルルやバッファリンをネット通販できなくする規制を入れようとする厚生労働省に楽天の三木谷氏がかみついている。
いつの時代も、この国は官と戦う起業家達によってひとつひとつ成長の扉を開けてきたのだ。
一方で、官の払い下げ事業や官からの独占事業で大きな富を築いた伝統的な財閥企業を始め、いつの世にも官と寄り添い、その庇護の中で既得権益から膨大な利益を上げ続ける企業も営々とその軌跡をつなぐ。
ちきりんは、官と戦う起業家達を心から応援、支持している。
がんばれ、起業家!