今までにも書いてきてるけど、新聞ってほんとにやばくなってきたよね。
おそらく昨年までは、それでも人気就職先だったのだと思うけど、今年秋から始まる就職活動ではどうだろう? それこそ“ほとんど社会のことを知らない、先見性がゼロ”という学生以外で新聞社を志望する人なんているんでしょうか??
昔は銀行だって潰れるとは思われてなかった。大半の銀行は(潰れるという形ではなく)合併したり名前がかわったりした。おそらく新聞も同じでしょう。
新卒採用&終身雇用って、企業側にとっても、海のものとも山のものともつかぬ学生を「40年契約」で雇い、学生側は「向こう40年間、その企業が存続し続ける」ことに賭ける。お互いにギャンブルをしているようなものだよね。
★★★
新聞が大変なのは、「どこにも解がない」ってことでしょう。
たとえば 1997 年頃、日本で銀行がバタバタ倒れた時には、海の向こうには“解”がありました。日本長期信用銀行はなくなったけれど、“変な会社には貸さない”という普通の方法に変えた新生銀行は立ち直ったし、日本の銀行の経費率は国際比較でもかなり高く、改善の余地が相当あった。
つまり「潰れそうな銀行」でも「こうやったら立ち直れる」という処方箋が見えていたなかでの破綻、再生だったんですよね。でも新聞業界の置かれてる状況は全く違います。今、世界中の新聞で“やばくない”新聞なんて存在しない。「解はどこにもない」んです。
新聞ヤバイという話をすると「ネットのニュースだって、元は全部新聞社が提供している」という人がいる。でもそれって、「だから何?」って感じだよね。
ニュースを買っているネット企業が、「新聞社がなくなったら困る」から、「新聞社を潰さないようになんとか努力してくれる」とでも?
「なくなったら困る」ものは「だからお金を払う!」という人がいれば残れるけど、「無くなったら困るけど、俺はカネは払わない」という人しかいなけりゃ無くなります。
伝統名品みたいなものってみんなそうじゃん。みんなして「残って欲しい」とクチでは言いつつ、誰もお金払わないから結局消えちゃったものっていくらでも例がある。
★★★
実は議論として、新聞が「なくなる」か「なくならない」というのは、たいしておもしろくない。資産を切り売りすれば新聞社の倒産自体は相当先まで避けられる。でもそんなの(ちきりん的には)どーでもいい。
考えていておもしろいのは、次の“報道”の世界がどのような形になるのか、という点だよね。
上に書いたように、ネット上でニュースを流してる企業は新聞社が潰れたら困るかもしれないけど、だからといって助けたりはしないと思う。大新聞社がなくなったら、失業した“元記者”を格安で雇えばいいだけでしょ。
つまり新聞社の社員記者のかわりに、大量の“貧乏ネットライター”が現れるだけです。そして市場原理のなかでそういった「元新聞記者が寄り合ってつくった通信社」みたいなのもできてくるんでしょう。
彼らの収入は「一回クリックされたら○円」という今の新聞社がポータル企業からもらっている価格と同じであり、それは自社サイトの広告料をいれても、既存の新聞社の売り上げとは桁がひとつ違うレベルになるだろう。今、新聞社のネットからの収入って全体の 10%にいくかいかないかだと思うけど、収入はそういうレベルに切り下がる、ってことだと思います。
そして業界全体の「収入が 10分の1になる」ということは、今の新聞人のうち生き残れるのは10人にひとりである、ともいえるし、もしくは全員生き残るとしたら年収が 1000万円から 100万円になる、ということでもある。
これってまさに「高給取りの大企業正社員の新聞社員」から「貧乏ネットライター」の世界への転換ってことだよね。
まあ実際には、人数3分の1、年収3分の1とかの組み合わせになるんだろうけど。つまり貧乏ライターとして残ることができる人、通信社的な集まりを構成して残ることができる人でさえごく限られているということ。
というわけで“月極購読で読まれる紙の新聞”というものはなくなり、その発行を主要業務とする企業は消えるでしょう。
一方で、取材をして記事を書いてそれをネットメディアや他のアウトプットメディア(未出)に売って稼ぐ“通信社的な取材記者の集まり”みたいな小さな企業がでてきそう。
ってあたりが普通に考えた帰結ですが、、
実は、まだ当面の間、「紙の新聞」を「お金を払ってでも維持したい」と思う人がいるよね。と思いついた。ポータル企業とか個人とかはお金出さないだろうが、「お金出しても残したい!」と思う人はいる。
それは・・
自民党ですよ。
なんで共産党が赤旗をもってるか。政教新聞とか幸福の科学とかでも新聞(か、定期紙)を持ってるんじゃないの? ああいう団体って基本的に「自分達のための報道機関」が欲しいんだよね。
すごく便利なのですよ。選挙公報的な意味合いで、年間通じて、自分の党のことやその活動、政策についてあれこれ報道してくれる新聞社があるのは。
今、自民党が(共産党とかと違って)自分で新聞社をもとうと思わないのは「既存の新聞社が、事実上、自民党の新聞だから」だよね。でも既存の新聞社が無くなるというなら、たとえば一部の派閥で「産経新聞に出資しよう!」とかいう話になっても不思議でないです。
自民党の極右の人達が「産経新聞」を、右・中あたりの人達が「読売新聞」を、民主の左の方の人達と社民党で「朝日新聞」を(会社として)買えばいいじゃん?
資金の少ない小泉チルドレン議員はお金を出しあえば、格安っぽい「毎日」くらいは買えるかも? んで自分達のことばっかり書かせるってのもいい案じゃない?
「日経新聞」はどうなるんだって?経団連に出資してもらったらいいんじゃないかな。(ってか今までも広告料の大半が経団連企業から来てたんだから同じか)
もちろん、それなりに規模の縮小は必要でしょうし、新人議員は“新聞販売ノルマ”とか課されて大変かもしれないけどね。
最近は、熱心に新聞を読むのは、50代以上ばっかりでしょ。で、実は政党ってこの「紙の新聞読む層」がターゲットなんだよね。選挙に行くのもその年齢層だから。
「ネットは見てるが紙の新聞は読まない」って人って投票率が低い、だから政党はあまり関心がない。
民主党だって公約の柱のひとつが「農家への個別所得補償」ですからね。この補償をうける人達は、ネットより紙の新聞を読む人達でしょ。ネット上に「民主党は農家にお金配ります!」と書いてもあんまり評判よくないじゃん。でも、紙の新聞に「民主党は農家の味方!!」って書いて配れば、まさに有権者にアピールする。
なので、政党は新聞欲しい!って思うかも。農家の多い地方紙とかに出資したらどうだろ?
あと、「我が党が政権をとったら郵政の西川社長は更迭します!」っていう公約だって、特定郵便局の多い田舎では拍手喝采なんだろうから、今、民主党が買収するなら地方紙が一番いいかも。
いい案じゃん?
新聞社の皆さんも、内外から批判されながらも今まで必死で記者クラブを維持して、政治家と密な関係を構築してきたのがまさにここで活きるってわけですよ!
真剣に考えてみたらどうだろ?
そんじゃーね。
過去の関連エントリ