国の借金額  3つの視点から

今日も国の借金について。

一応断っておきますと、別に毎日毎日、国の借金について考えているわけではなく、先週ちょいと考えたことを文章化したところあまりに長すぎたので3回に分けただけです。


で、先日のエントリでは「国債残高800兆円」と書いたのですが、こちらをみるとすでに国債だけで850兆円、政府保証債務をいれると900兆円らしい。すごいな。ちょっと目を離すと50兆円くらいすぐ増えますね。

というわけで、とりあえず今後は国の借金は900兆円と書くことにします。

この900兆円という額が、個人の金融感覚的にはまるでよくわからない額なので、今日は下記の3つの視点でその額の意味をみていきたいと思います。


(1)資産と負債
こちらによると、国の借金900兆円にたいして、国の保有金融資産が半分の450兆円くらいあるらしく、差し引きの純負債は450兆円強らしい。

国の金融資産には「年金の支払いのための積立金」なども含まれているのでおいそれと借金返済にはあてられませんが、「国が破綻する」という話になれば、当然、借金返済に充てることになるでしょう。まさか国が破綻するのに、年金だけは払い続けましょうってな話にはならないでしょ。

なので“危機会計”としては、純負債は450兆円くらいである、ということらしい。

で、これを個人金融資産の1400兆円と比べて、個人金融資産がすべて国債に回るわけではないにしても、まあまだ20年くらいはもつかもしれない、という話がひとつ。

ただし、この20年は「破綻まで」の20年であって、混乱(福祉や行政サービスの切り捨て)はもっと早いと思いますけどね。

これが、借金額を「資産と負債」という感覚でとらえた場合の話。



(2)収支の話

次に、収支でみてみましょう。ここのポイントは、一般会計と特別会計を合わせた収支がきちんと開示されていないという点にあります。

ご存じのように一般予算側では、40兆円の税収にたいして国債元利払い20兆円。これは確かに“どうよ?”って感じの比率なんですが、実はこれとは別に特別会計と言われる“別の財布”がある。

これがいったいいくらなの?ってのが(霞ヶ関の各お役所により巧妙に隠されており)わかりにくいのですが、交付税と国債元利払いに当てられる基金、その他の重複を除いて、ざっと150兆円から200兆円くらいあるんじゃないかと思われます。(これ本当に魑魅魍魎なので、正確にいくらなのかわからないのですが・・)

つまり、一般会計では、
・収入90兆円=税収40兆+借金50兆円 なのですが、
それとは別に、特別会計で入ってくるお金が
・150兆円〜200兆円あるってことなんです。


これって、お父さんは40万円の給与に50万円借金して、家族の生活費を90万円払ってるってのに、お母さんがデイトレと別のバイト・・・?で、実は月に150万〜200万円稼いでいる家って感じです。ところがお母さんが稼いだお金は家族には開示されず、特別生活費としてテラスを直したりガーデニング経費に使ったりしているようなもんで・・・お母さんにきくと「家族の生活に必要なことにちゃんと使っている」とは言うものの、詳細がわからないし、お父さんの方の一般生活費とは絶対合算したくない、という。で、家計がこういう状態なのにそれはないでしょ、って話。

以前この話を塩爺さんは、一般会計(お父さんの方の生活費)=“母屋はお茶漬け食べてるくらい厳しい状態”といい、お母さんの方の財布を“でも、離れでは毎日すき焼きを食べてる”と表現してました。


もちろんこれらの特別会計の中には年金や医療補助を含んでいるし、各省庁に言わせればそれ以外の(道路や地方空港を造るための)特会も、「それぞれ必要な予算なんだから、一般会計と合算するなんてとんでもない!」ってことかもしれませんが、国民の目でみれば「合算して事業仕分けしちゃうべき」が大勢なのでは?


それと、ちきりんが思うに結構多くの人が「いざとなったら特別会計があるから大丈夫」と思ってるんじゃないかと。でも、いつのまにか「実は特別会計を合算してもかなりやばかった」という状態になっててもおかしくないんだよね。

なので第一歩として、「収支」を語る時は常に「一般会計と特別会計の合算で話す」と決めるべきなんじゃないかな。それだけでも相当の進歩があるはずなんだけどね。



(3)借金のGDP比率

国際比較でよく使われる借金のGDP比率。こちらの図とかみると、「おいおい」な感じですよね。

水準ももちろんなのだが、「日本は借金を管理しようという気がないのでは?」というのが一番問題な気がします。

意外にも過去3年程度はとりあえず国債残高の維持には成功してたわけですが、ここにきて不況で税収は減っちゃうのに加え、超のつく「福祉優先政権」の誕生で、国債を50兆円も発行するとか言ってますからね。

来年からまたこのグラフが右肩あがりに急カーブを描くと考えれば、そりゃあ諸外国の皆様としては心配にもなると思う。(てか、諸外国の皆様より日本の皆様が心配したほうがいいわけだが。)


借金額とGDP額を比べる考え方は、国際比較に便利というのはあるのだけど、実質的にはどういう意味なのか。おそらく、「“GDP=経済付加価値”の一定割合が税金となるわけで、その“税金=収入額”の最大ポテンシャルと、借金残高を比べる」という意味なのだと思われる。


だとすると、この比率を抑えるには、
(1)GDPをのばす=成長戦略
(2)GDPのうち税収の割合を増やす=増税策
(3)支出を減らす=行政改革
という方法がある。


で、日本の状況と各国からの乖離度合いを見ると、このうちひとつで解決するなんて不可能であり、日本は(1)も(2)も(3)もやりますよ、と言わないといけないのに、民主党政権は(1)は無視(or 現在深く考慮中?)、(2)は明確に否定、で、(3)は一生懸命やってるように見えたのに、いきなり90兆円予算とか出してくるから「まじまじ?」って話になってるんだろうな。


でも反対にいえば、「全部やっても借金が増え続けている!」という状態ではないのよね。つまり、「めちゃめちゃ勉強してるのに成績が落ちている」のではなく、「全く勉強してないので、成績が落ちている」わけで、


「だったら、勉強したら成績があがるのではないか?」


という希望ももてるんじゃないの?

とか思ったりもする。



あっ、すみません、またもや無責任で。


そんじゃーね。