1997年11月 三洋証券が倒産、続いて、北海道拓殖銀行が破綻し、山一証券も自主廃業、翌年には日本長期信用銀行が国有化(実質的な破綻)、日本債券信用銀行も同様に経営破綻した。
その10年前、銀行は“最も安定した会社”のひとつとして高い社会的ステイタスと就職人気を誇っていたし、長銀に至っては潰れる直前まで一流大学の学生が喜々として内定を得ようとしていた一流企業だった。
「大手企業でも、一流企業でも潰れることがあるのだ」と日本人が理解したのは、戦後の高度成長が始まって以来では、この1997,1998年が初めてだったのではないか。
その後も多くの企業が危機に直面した。日本が世界に誇る技術をもっている自動車業界では、ルノーの日産買収のように、外国メーカーに買われる形で破綻を免れた。
一方、外資が関心を持たないゼネコンなどは軒並み破綻し、カネボウやダイエーなど往年の大企業も実質的な企業生命の終焉を迎えた。特筆すべきことは、これらの大企業破綻の大層が、97年、98年の金融危機の際に比べると圧倒的にショックの少ない形で処理されたということだ。さらに最近では、半導体の会社や飛行機会社の実質破綻に際して、数年間ほど破綻を先送りするために手厚いソフトランディング策が採用されている。
これらの倒れゆく巨象に最後の餌を与えるため、多額の税金投入が行われた。「痛みを伴う根本治療だけは、なんとしても避けたい」と願うこの国のリーダー達のおかげで、我が国の国民は“経済恐慌”を経験せず、長期不況に苦しめられるだけで済んでいる。
しかし2010年からの数年間は、1997,1998年の再来となるかもしれない。人々は“次の巨象”が倒れる可能生が十分にでてきたことを知り始めている。多くの人が予想しているように、まずは新聞社が、数年遅れて出版社が、さらにはメディア業界全体で巨象が倒れる可能生がでてきた。
総合電機と言われる巨大メーカーの多くも、今年内定をもらう学生が中高年になるまで存在し得るのか極めて疑問だ。大手生保に関しても、ちきりんの保有する個人年金の支払い開始日までもってくれたら御の字である。大学だって3割程度は破綻しても可笑しくない。今年の就職人気一位のJTBはいったいいつまで存在する会社なのだろう。デパートが10年後にも存在していると思っている人はどれくらいいる?ドコモが10年後も通信業界のリーダーだろうと思っている人は?
何よりも象徴的に、自由民主党という“日本の戦後成長時代の政治シーンをすべて担ってきた政党”が2010年に崩壊する。
今はまだ、行政単位では夕張しか破綻していない。しかし日本の地方自治体で、20年後まで存続できるのは何割なのだろう?彼等はいつまで、誰も使わない“オラが空港”と高給取りの役所職員や地方議会の議員を維持できるのか。(参考エントリ)
★★★
その昔、黒船が来た時だって、日本人の多くは「まさか、おサムライさんの時代が終わるなんて」想像もしなかっただろう。年々厳しくなる暮らしの中でも、なんとか少しでも俸禄の多いお役目をいただけるように、必死で就職活動をした下級武士達も多かったんじゃあるまいか。
明治になった時、商売の仕方を知らない上に、プライドばかり高かった元サムライの多くは、残り少ない穀を食い潰して身を滅ぼした。
混乱を楽しみたい。
そんじゃーね。