個人情報ロンダリング

下記は自宅の郵便受けに放り込まれていた広告。企業名はプロダクトダイレクトで、封筒の中に両面印刷の資料一枚と返信用封筒が入っていました。

表面↓はこちら。「ラッキーナンバーが当選したら一千万円を差し上げます!」だって・・

上記のラッキーナンバーをお送りいただき、その番号が私どもの顧問弁護士による厳重な監視セキュリティーの下で保管されている当選番号と合致していることが確認されれば、当選賞金1千万円全額を無条件にお支払いすることを保証します。

こんなのに返事する人がいるのかと呆れますが、私の興味を引いたのは、この広告の裏面に奇妙なモノが載っていたこと。


裏面はこちら。ガーデン用カメラの説明です。花の生育を記録するカメラらしい。


で、この広告の一部、顧客が切り取って返送する部分には下記の文章が載っているんです。

□参加します。 私の番号と貴社の顧問弁護士が厳重に保管している公式当選番号を比べて下さい。私のラッキーナンバーが当選している場合は、一千万円を支払うために私に連絡してください。


また、下のいずれかを選んで印をつけてください。(どちらを選んでも無料抽選には影響しません。)

□興味があります。  ガーデン用カメラに興味があります。詳しい資料を送ってください。
□興味がありません。  ガーデン用カメラには興味がありません。資料は要りませんので現金一千万円に当選しているかどうかだけを確認してください。


なんか謎でしょ?
欲の皮が突っ張った人の連絡先が知りたいだけなら「一千万円当たってるかもしれないから、住所と氏名を書いて返送してね!」でいいはず。

なんでこんな商品を紹介し、わざわざ関心の有無まで聞くの?


ちなみに、ご丁寧に同封されている返信用の封筒の裏面がこれ。まるで銀行や役所から来た封筒の文言です。



さらによく見ると、このチラシの一番下にはずいぶんと小さな字で注意書きが書いてありました。それは・・

個人情報の使用承認について:この申し込みを利用した者(広告の受取人)は、次に掲げる事項について同意するものとする。


広告主は、広告の受取人が提供した情報を、商品の情報提供と商品の発送、アフターサービスの為に使用し、また、通信販売によるあらゆる新しい商品や新しいサービスの提供の為に使用する。


さらに、広告の受取人は、広告の受取人が提供した個人情報が第三者に提供される場合があり、その場合に当該情報に基づき第三者が受取人の興味がありそうな商品やサービスを紹介することに同意する。


ひえー! 何コレ、この文章!!

これって「誰にでも合法的に譲渡できる個人情報リスト」を作るビジネスだったんですね。

こうやって本人から「誰に私の情報をだしてもいい」という同意を得てしまえば、その後の情報売買は自由自在です。


そういえば昔の名簿屋は、有名大学の卒業名簿や一流企業の社内電話帳、テレビの懸賞やキャンペーンに応募してきた人の葉書の束などを丸ごと手に入れて名簿を作って売ってました。

でも今は、そんな名簿は簡単には手に入らない。だからこうやって「正当な方法で集められた個人情報」(??)が必要になるわけですね。


それにしても、相変わらず「なぜ、一千万円の当選金だけじゃダメなのか?」ってのが気になるのですが、こうしておけば出来上がった名簿は(名簿屋で売るときに、)

「ガーデニンググッズの通信販売のチラシに反応してきた人で、情報の使用に関しては、本人の許可が得られています」と言えるんだよね。

もしくは、「家電・情報機器の通信販売カタログに反応してきた人で、本人の許可も得ている名簿」とも言えそう。


そうすると、少なくとも「一千万円当たります、というチラシで集めた個人情報です」って言うより、圧倒的に「合法感」が高まるでしょ。

このように「騙して集めた個人情報ではありません」と言い易くするために、「一千万円当たります」だけではなく、変な商品の広告をくっつけてるんだと思うんです。


そしてもちろん、こんなのに返信してくる人は、
・考えが足りず、
・欲の皮が突っ張ってる
わけだから、情報を買う側にもメリットが大きい。


★★★


そういえば、ネットのサービスでも会員登録すると、関係ない会社から営業メールが山ほど届くようになるサイトがありますが、ああいうのも「同意する」規約の中に、上記みたいな文章が入ってるんだよね。

たとえば「相談相手がいない高齢者」のリストが欲しい場合、「高齢者だけの安心コミュニティです! 登録して茶飲み友達を探しましょう」みたいなサイトを作って、個人情報を集めるわけです。

登録時には、住所のほか、一人暮らしかどうかや、貯金の額まで聞く。


しかもそれらの情報を第三者に提供することに、本人が同意してる(たぶんちゃんと文章を読んでないけど、「同意する」をクリックしてる)。

こういうデータを使う人って・・・


まっ、いずれにせよ、

ネットのサイトに登録する際 → 利用規約の文章に「個人情報」という単語で検索をかけて、最低でもそこだけは読んでから「同意する」をクリックしましょう。(他に「解約の方法」「契約解除」も検索するといいかも)

チラシや葉書、コンビニなどでやってるキャンペーンカードに住所を書く際 → まずは最も小さな文字の部分を見ましょう。そこに「個人情報」という文字を探しましょう。


あと、「抽選で(ひとりに)一千万円が当たる!」だとすぐに「詐欺だな」と思う人でも、「抽選で 10万円が 100人に当たります!」だと(総額は同じなのに)住所氏名を書いてせっせと応募したりするけど、こんなもんに応募しつつ「個人情報が云々」とか言うのは、完全に矛盾してます。


そんじゃーね。


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