「そうだ、選挙、行こう」

福島原発が大変なことになり、昔からの原発反対論者の人が勢いづいています。彼らの多くは自衛隊にも大反対していたはずと思いますが、彼らが今それを言うことはありません。

米軍の“思いやり予算”も先日、すんなりと可決・承認されました。これも同じで、原発反対に勢いづく人達の多くは、米軍予算に関して昨年までは大反対をしていたはず。でも今年は「国会を混乱させないため」という理由で、形だけ反対を述べて終わりです。

この辺が「大人の世界」というか、「空気を読む」というか、「とりあえず叩きやすい奴を叩いとけ!作戦」というか、人間様のおもしろいところだなーと思います。


★★★


原発問題が起こってから、「海外メディアの報道と日本のメディアの報道が余りにも違う。これはなぜなのか」的な論調が起こっているのも楽しいです。

なぜなら、震災前だって海外メディアと日本のメディアは全くちがうことを報道していました。別に震災後いきなり違ってきたわけではありません。

というより、震災前には、世界がチュニジア革命を報じている時に日本は相撲の八百長問題を報じていたし、世界がウィキィリークスのアサンジ氏と米政府の攻防について熱く報道している時に、日本は海老蔵さんが麻布で殴られた話を熱く報道していたんです。

そういう意味では震災後は(細かく言えば内容は違うにせよ)世界も日本も「フクシマ原発と放射能」について報道しています。「震災後、海外と日本のメディアは報道内容が非常に似通ってきた」というほうが正確なんじゃないでしょうか。


★★★


東京で放映されていない関西のテレビ番組、「たかじんのそこまで言って委員会」の中で原発問題について解説した某教授の映像がネットにアップされ、多くの東京の視聴者がそれをみて大騒ぎになり、その教授は大人気、みたいになっているのも愉快です。

原発問題に関わらず、あの番組では「これはとても東京では放映できないよね」というような内容をしょっちゅう電波に乗せています。「まじかよ!?」みたいなことがよくあるんです。が、普段は東京の人はそんなの見ていません。もし見ていたら(今回同様)大騒ぎになったはずです。

普段は海外メディアなんて見ない人が、今回は海外メディアもみて「違うことが報道されてる!」と驚いたのと同様、普段は関西の番組なんてみない東京人がたかじんさんの番組(のしかも一部だけを、取り出した形で)みて、番組の立ち位置も理解できないまま「こんなことが報道されてる!」と騒いでいるのは、構図として全く同じです。


ちなみに、この番組の特殊性に関しては、ちきりんは4年前にもこちらのエントリで書いています。橋下氏が大阪府知事になる前にこの番組内で煽り発言をし、それを「お作法を知らない視聴者が真に受けた」ため、現実社会におおごとを引き起こした例です。

世の中には「たかじんさんの番組だから許されること」があり、それらは「東京的なる世界では視聴されないこと」を前提とした内容です。「まさかみんな真に受けへんやろ」というのが前提になってるからこその内容なんです。

違う言葉で言えば、あの番組には見る時の「お作法」がある、と言ってもいい。ましてや今回は特に、震災の被害が遠い関西と東京ではいつも以上に受け手側の心理が違っています。それも踏まえての番組作りがされているのです。

今回の騒ぎは、それを知らない人が一部だけ切り出された映像や発言を見て、驚愕したり問題視して大騒ぎになってるようにも思えます。


★★★


66歳の清水正孝東電社長が入院されたということで、71歳の勝俣恒久会長が他の役員と共に記者会見されるのを見ていて思いました。

「この国のリーダーはこういう人達なんだよねー」て。そこに並んでいるのは全員が50代、もしかしたら60代以上の日本人男性。東電みたいな巨大な会社なんだから当然なのかもしれませんけど、日本の社会というのは、こういう人達が作ってきたし、動かしているんですよね。そうであれば、今回もみなさんで頑張って問題を解決してほしい。よろしく頼んだ!って感じです。


それにしても71歳とはいえ、とりあえず勝俣会長がお元気そうでなによりです。大危機が起こった時にはリーダーは「元気で丈夫」なことが一番です。菅首相も(なにはともあれ)頑強そうでよかったです。万が一にも与謝野さんが首相だったらどうなっていただろうと考えるとぞっとします。そして何よりも、枝野さんが体力がある人だったことは日本の僥倖でした。

私たちはたとえば選挙で政治リーダーを選ぶ時、「誰でも同じ」と思ってしまうことも多いですよね。けど、一旦こういう大災害が起これば、自分達が所属する組織のリーダーの体力と精神力と能力は、自分達の命運を左右します。東電の社員、株主、債権者は東電の経営者達に命運を左右されてるし、災害で避難されている方々も自分達が選んだ市長や町長の資質の影響を今、存分に受けていらっしゃると思います。


4月10日は被災地を除き、統一地方選挙です。東京でも向こう4年間のリーダー(都知事)を選びます。電力不足に日本&東京ブランドの毀損、原発の影響など、東京もこれから大変です。もちろん直下型の震災などもっと大きな問題さえ起こるかもしれません。

私たちはこの選挙で、「もしも東京にそういうことが起こった時、誰にリーダーになってほしいか」ということを選ぼうとしています。もしも東京で大震災が起これば、「今回選んだその人」が陣頭指揮をとるんです。いきなり入院しちゃう人とか、混乱しちゃう人とかじゃ困るでしょ?誰に自分の命運を預けたいか、よくよく考えて投票しなくちゃねって思いませんか?


ちきりんは選挙日の4月10日は用があるので、さきほど期日前投票を済ませてきました。みんな自分の住んでいる地域の役所のHPを見れば、どこで期日前投票できるか確認できます。たくさんの場所があるし、そんな手間じゃないから、10日が忙しい人は先に行けばいいと思います。候補者一覧やプロフィール一覧もネットで確認できるはず。


ほんとうに大きな危機が起こった時、その人に私たちは命運を預けるんです。



「そうだ、選挙、行こう」



そんじゃーね。