エネルギー史における中東と先進国

原油が高騰してますねー。当然といえば当然。もう世界には石油しかないというこのタイミングで、産油国が政治不安にゆれているのですから。


ところで石油資源ってオイルショックの頃から「あと50年しか持たない」と言われ始めてました。1974年ー1979年、既に35年前です。では今、石油はあと15年しかもたないと言われているでしょうか?

算数的にはそうなるはず。でも実は変わらず「石油資源はあと50年しかもたない」と言われてます。30年後にもたぶん「石油資源はあと50年」と言ってるんでしょう。

なんで?  結局、永久にもつの??


何が起こっているかというと、石油の埋蔵量自体は“いっぱい”あるんです。でも、その時点の科学技術をもって計測できない埋蔵量は、理屈としては“ない”とされます。加えて、“30年前の技術で採掘可能”であった石油と、“今の技術で採掘可能な石油”の量も違う。昔は、深ーい海の底の石油まで掘ることはできませんでした。

もっと言えばコストです。オイルショックの前、石油は1バレル4−7ドル。オイルショックで倍になって15ドル。最近は1バレル50-100ドルにもなります。

海の奥深ーくにある海底原油を採掘するには、ものすごいコストがかかります。1バレル4ドルでしか売れないのでは、誰も掘ろうと思いません。埋蔵量を調べようとさえ思いません。

でもバレル50-100ドルで売れるのなら、調べて堀りに行っても利益がでます。こうして石油はどんどん増えているわけです。だから、いつでも「あと50年しかもたない」んです。


こんなことはちきりんが書くまでもなく、みんなわかっていたことです。でも(それを隠して)「石油資源はあと50年しかもたない!」と言いたい人がたくさんいたんです。無くならないとわかっていたけど、「なくなる!」と言わねばならなかった。

なぜか。


原子力発電を推進するためですよね。「石油はもたない」だから、「しかたないから、原発しかない!」と。そういうロジックが必要だったんでしょう。

★★★


世界のエネルギー史には大きな転換点が3つあります。


1. 産業革命
2. オイルショック
3. フクシマ
です。


産業革命で「エネルギーは、人類の豊かさを左右する最大の要因」となりました。

オイルショックで先進国は、自分達の豊かさを左右する最重要要素を中東のアラブ国家に握られます。

その後、何年もかけて、先進国はその呪縛を「技術」によって覆そうとしてきたのです。ところが、
フクシマにより、先進国が得たと信じていた「自分達の自由になるエネルギー」が不完全な代物だとバレてしまいました。


フクシマじゃなくて、スリーマイルでもチェルノブイリでもいいような気もしますが、スリーマイルは昔過ぎて技術がまだまだだった、という言い訳がありました。最後はミラクルに解決したしね。

また、チェルノブイリに関しては、世界は「まあ、ソビエトだからな」と言えました。「西側先進国ならこんなことは起こらない」という言い訳が使えました。

が、フクシマではなにも言い訳が見つかりません。

原発で事故が起こるたびに「言い訳」を探してきて、「あれは特殊なケースだ」とごまかしてきたのに、今回はそれが見つからないのです。


★★★


無くならない石油を「無くなる」と言いたかった理由は、「脱石油」を急ぎたかったからです。他にも「原子力はコストが安い」ともよく言われます。しかしフクシマは今、いかに原子力発電が「安くないか」を世界に示しています。

「化石燃料を燃やすとCO2がでて、それは地球環境を破壊する」、今年の初めまで世界中はそう言い続けていました。

しかし今、原発は二酸化炭素の何万倍も巨大な力で自然を破壊し、環境を汚染する可能性があると世界は認識しつつあります。原子力発電が石油より望ましいと主張するために挙げられていた、あらゆる理由が今、崩れようとしているのです。


「石油をもつ中東への依存から脱皮して、豊かさの源であるエネルギー源を自由自在に操りたい」、それは1970年以降何十年もの間、先進国の悲願でした。そのために「いかに石油がアカンか」というプロパガンダが、先進国の頭脳を結集して行われてきたのです。

そういえば、(中東に関係のない)メキシコ湾の海底で石油を掘ろうとしていたイギリスの石油会社(BP)が事故を起こし、広範囲な海洋汚染を起こしたのも昨年です。先進国のエネルギー獲得策は。ギリギリなところまで来ているようにも思えます。


サウジアラビアは王政が崩れたら一バレル300ドルだと脅します。ここにきて先進国連合は再び中東に振り回されつつあります。


結局は石油、なのか。
結局は中東、なのか。


そんじゃーね