選挙制度を変えない限り、何も変わらない

衆議院も参議院も、長らく「一票の格差」が放置されたまま、全く改善が成されません。

既に最高裁で「違憲=憲法違反」状態だと指摘されているのに、政府も国会議員も「最高裁なんてみんな腰抜けだから、違憲判決は出せても“選挙無効”の判決はだせない。だからあんまり急ぐ必要もない」とでも思っているかのようです。

実際、裁判官なんて“超安定LOVER”(またの名を“事なかれ主義”)の人ばかりなので、どんだけ政治家に甘くみられても、選挙無効の判決なんて出さないでしょう。この国の司法は、やらなくてもいい余計なことばっかり口をだし、重要なことは何もやらないって感じがします。


加えて、ネット選挙の議論も全く進みません。この国の政治家は、「アジアの中でネット選挙が許されてないのは、共産党独裁の中国と日本だけ」みたいになり、「えっ?日本の選挙って、まだ手書きなの?」とか言われる時代にならない限り、そんなものには関心を示さないのかもしれない。

ちきりんは「選挙制度の改正」が、日本の政治をマトモにする唯一の、そして最重要な施策だと思っています。下記は、2011年01月08日に言論プラットフォーム・アゴラに寄稿した文章の一部抜粋&修正文です。


<最優先課題は選挙制度の改革>

2009年9月に自民党から民主党への政権交代が実現して既に2年半。政権交代によって、停滞した日本経済と、制度疲労甚だしいこの国の抜本的な構造改革が行われると考えた有権者の期待は、完全に打ち砕かれました。

ようやく実現した政権交代が、こんな期待はずれの様相を呈している理由は何でしょう?


それは、民主党に政権をとらせた勢力が、必ずしも「日本の構造改革を心から望んだ有権者だけ」ではなかったからです。

民主党の政権奪取の功労者のひとつは、連合に代表される労働組合組織であり、もうひとつは小規模兼業農家を中心とする地方の有権者でした。

もちろん、改革を切望した都市部有権者の票や若い世代の浮動票が民主党に流れたことは最後の決め手とはなりました。

しかしそれらの票はあくまでも”決め手”となっただけであり、そもそもの勝負の土台となる組織票なしに全国の小選挙区で議席を積み上げることはできなかったでしょう。だから政権担当後は、それらの組織票の意向に政策も政局も振り回されるのです。

では「抜本的な構造改革を求める勢力」の力だけで、政権をとらせることは不可能なのでしょうか?


その実現には、2つの障害があります。ひとつは一票の価値の格差です。

抜本的な構造改革を求める勢力は都市部に多く、その票の価値は司法の場で違憲判決がでるほどに低いものです。まずは公正な票の重みを取り返さない限り、この勢力だけで支持する政党に政権を取らせることは困難です。

私は一票の格差は、今のこの国では「最も深刻な格差問題」だと考えています。


もうひとつの問題は、抜本的な構造改革を求める層に非常に不利な(時代遅れの)選挙制度です。

現在の選挙制度では、公示日以降にネット上で演説会のスケジュールを知らせることさえ問題といわれます。ツイッターやブログで政策の説明をしたり、有権者からの問いに答えるなどもってのほかです。(追記:2012年3月時点の話です)

また選挙日には、わざわざ住民票登録された地域の小学校や公民館まで出向く必要があり、職場の近くでの投票もできないし、出先からスマートフォンや携帯で投票することもできません。

このため、平日の昼間から公民館に集まっての支持大会にでることが可能な人たちや、活動範囲の狭い人たちと比べて、土日も働いていたり、土日しか遠出できない多忙な都市部の人たちの選挙権行使コストが非常に高くなっています。


またこのような選挙制度の中では、立候補者側も効率的なネット上での政策討議より、毎朝の駅前での連呼のような“根性系”行動を優先するため、それらの非合理な選挙運動が嫌いな人たちは立候補自体をしなくなります。

野田総理も1986年から、財務大臣になる2010年まで24年間、毎朝、駅で演説していました。そういうことに意義を見いだせる人しか政治家になれないのです。


実際、ネットやマスコミ上で政治や政策について継続的に発言している発言者の多くが、「選挙にでるなんてばかげたことは、自分には絶対できない」と考えていることでしょう。

このように、まともな人ではとても立候補する気になれないような選挙制度にしておくことによって、「どんなにバカげたことをやってでも権力を手にしたい」と思う人が当選しやすい制度が維持されているわけです。


★★★


この現状を打破し、“抜本的な構造改革を求める人たち”が支持する政党が政権の中核を担えるようにするには、下記のふたつが必要です。反対にいえばこのふたつだけ実現すれば、政治家の言動も、有権者行動も、当選する人たちの顔ぶれも大きく変えることができるでしょう。

(1) 一票の価値の格差是正
(2) 時代にあわせた選挙制度の合理化


今の制度のまま次々と異なる政党に政権を回しても、結局は「浮動票を獲得するために口では改革を叫びながら、組織票を得るために裏で利益誘導型の政策を着々と推し進める政治家」しか当選できないし、そういう政党しか政権を獲ることができません。

今、私達が声を合わせて主張しなければならないことは、このふたつの政策を争点化すること、そして、それを最優先課題として推し進めると確約した候補者に投票すると宣言することでしょう。



そんじゃーね


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<過去関連エントリ>

・「農業従事者はごく僅かなのに、農業票が政治的にあまりに強力な理由

・「一票の格差がひどいために落選した人達・・・

・「国民審査に国民の怒りが表れ始めてる!

・「20代、30代の人数は、まだそんなに少なくはない。問題は投票率です