ちきりんは2年前に「日本が採用すべき10個の政策」について書いていて、その中で道州制を支持をしています。今日は「道州制」についての、ちきりんの考え方をまとめておきます。
<道州制のマイ定義>
いろんな方が提案しており、「どれが正しい定義か」というのはありません。ちきりんがイメージしているのは、下記のようなものです。
・国は外交、国防、憲法、天皇制に関することのみを業務として担当。
・現在、国が担当しているそれ以外のことはすべて「道州」が担当する。(例:税制&税率、教育、社会福祉、雇用規制、移民規制、公用語の設定、医療制度、その他)
・全国は5〜8個くらいの道州に分かれる
・その下に、住民サービスを手がける基礎自治体(今の市のレベル、大都市では区のレベル)が存在する
・結果として、国会議員の数は100名以下でいいし、霞ヶ関もほぼ解体。道州の長は直接選挙がいいと思います。
<道州制支持の理由>
理由その1:中央集権を続けていることが日本停滞の最大の原因
明治の官僚機構から戦争遂行体制(野口悠紀雄先生の言われる40年体制)が、そのまま残っていることが、日本の社会制度、政治制度が全く機能しなくなっている最大の原因です。
「中央がすべてを決めて、本来は事情も異なる多様な地域や個性的な個人がみんなでそれに従う」というこの体制は、発展途上国向けであり、軍事国家向きです。豊かな消費者、豊かな生活者のいる先進国家を運営するには不向きな体制なのです。
家庭でも部活でもそうでしょ? 家父長一人が家族全員の生活のルールを決めるとか、部長が全メンバーの役割や動き方を一人で決めるとか、今の時代にそんなのありえません。そういうのは「非常に貧しいところから、全員一丸となって生き残る&のし上がる」時代にのみ有効な体制なのです。
一定の水準に達した豊かな社会では、何にしても“中央で一律に”ではなく、できるだけ個人に近いところでそれぞれが決め、多様なスタイルを選べるようにするのがあるべき姿です。
理由その2:政治と行政に競争原理が働く
今の日本で政治や官僚制度がなんでこんなむちゃくちゃなのかと言えば、それは「国民には他にチョイスがない」からです。(東電が未だにむちゃなコスト計算をしてくるのも同じでしょう)
他と比べられないもの、どんなにダメダメでも見捨てられない人や組織は必ず堕落します。その典型例が政治であり官の組織です。
道州制になれば、日本の中に複数の「異なるリーダーに率いられる、異なる質や方式の政治体制、官の体制」が存在することになります。政治に関して超細かい悪口を大げさに騒ぎ立てることが使命であるマスコミも、そうなれば、「どこの州はいいけれど、こっちの州はそれに比べるとダメ」という論調に変わらざるをえません。
有権者も、「○○州はできているのに、なぜうちの州ではあれをやらないのか?」といった疑問をぶつけやすくなります。道州の政治家も、他の州のやり方を見ながら、自分にかかるプレッシャーを意識するようになるでしょう。
競争原理を政治と官の世界に持ち込めること、これが道州制の大きなメリットなのです。
理由その3:国民は多様な価値観での生活を選択できる
たとえばA州は、「日本語と英語を公用語にする」と決め、すべての道路標示、公的な書類を日英で作り、小中高校でも半分の授業は英語で行い、大学はすべて英語の授業として、海外からの学生が3分の1になる。
B州では、税金を下げ、高所得者や商業施設(当然、他の州からも買い物客がやってくる)、企業をどんどん誘致する。
C州では共働き家庭がフィリピンなどからナニー(子守兼家事手伝い)を雇うことができるようにして子育てを完全バックアップ。もちろん高校まで無償化、子供の医療費無料化などにより、州内に子だくさんの家庭がどんどん引っ越して来て、日本のなかで唯一、高齢化が進まない州となる。
D州では大規模開発をできるだけ抑え、古いモノ、日本的なもの、自然なものを極力残す。加えて学校では、武道、古典、伝統芸能をしっかり教えるなど、日本の美徳と文化を最大限に尊重。
E州では自然エネルギーのみで運営。大規模工場はみんな出て行ってしまうし、夏場には常に節電を求められ、それでも時々停電したりはする。一方、大学の周りには研究都市を造って、エコ技術、環境技術の企業や研究者、ベンチャーを集めていく。野菜も有機農法のもの以外は税金が高い。
という感じになれば、みんなどこに住みたいかを考えるようになる。「道州制にすると東京など大都市だけが有利」みたいなこと言う人って、想像力が決定的に欠如してるよね。A州が東北だったら、そっちで子育てしようという東京の人はたくさんでてくる。
もう、消費税や原発に賛成とか反対とかいつまでもウダウダ言ってないで、国民に複数の選択肢を与えるべきなんです。話し合って一つの結論にするとか無意味です。いろんな価値観があり、いろんな生き方がある。無理矢理ひとつの結論にせず、複数の価値観の世界を用意すべき時代になっている。
というわけで、ちきりんは“ビバ道州制!”です。
そんじゃーね!