上の人はもう勝手にやって下さい。

最近は日本のみならず世界中が、高失業率やら経済停滞やら財政破綻やらに苦しんでいて、これって今までみたいな「日本だけが経済停滞」なのと、どっちがいいんだか悪いんだか、微妙なところですね。

で、日本に関して言えば“相変わらず停滞&後退”なわけですが、そのせいか最近、社会で話題になるトピックはどれもこれも「底辺が大変なことになってる。どうにかしなくては!」系の話ばっかりだなーと思います。


人間社会というのは、何を基準にとっても大抵、こういうふうに(↓)分布します。ごく一部、すごい人(ピンク)がいて、大半の人は50歩100歩で(水色)、その下に「かなり大変」な人達(ブルー)がいる。



100メートルを走らせてみれば、イチローみたいな人がごく少数いて、大半の人は普通に走れて、でも一定数の人は(ちきりんみたいに)「スキップじゃないのよ?、駆けっこなのよ?」(@小学校)と確認されたりするレベルです。

手先の器用さとか、記憶力のよさとか、体力とか、絶対音感とか、ほぼ何でもそうでしょ。もちろん経済力とか容貌、音楽や料理やファッションのセンスも同じ。ごく一部「すげー!!!」って人がいて、大半は凡人で、一部が「あらら」な感じ。


最近思うのは、日本では経済停滞があまりに長く続いているせいか(もしくは現在の政権党がソコにしか関心がないせいかもしれませんが)、「一番下の青い部分をどうするか?」しか話題にならなくなってきてるよね、ってこと。生活保護問題や最低賃金問題はその典型だけど、「就活問題」も全く同じ。

「何百社エントリーしても就職できません。自殺する若者までいるんです」という話は社会問題になるけど、「日本で最も優秀な人が通ってる(らしい)大学を卒業しても、英語で議論ひとつできません」ってことは、話題にもなりません。


「日本を代表する製造業がどこも大赤字で、大リストラをしてて大変大変!」という話は、雑誌やテレビが特集を組むほどの話題になるけれど、同じく日本を代表する製造業が「75才未満には経営を任せられる人材が育ってないんで」みたいに開き直っても、大きな問題じゃないらしい。 (キヤノンは、77才で元経団連会長まで務めた人を、「この人しか社長ができる人はいない」とか言って社長に再任)

たしかに大リストラも大変でしょう。だけど、この「日本企業の、そもそも経営者を育てる気が全くない問題」もそれなりに深刻な問題じゃないですかね?


円高や電気代値上げの問題も、これじゃあ中小・零細企業は壊滅だとか、電気がないと命に関わる人がいるとか言う話ばっかり話題になる。

一方で、「為替も電力代も関係ない。世界中がうちの商品を欲しがってるんで」と言えるグローバルな成長企業が日本から現れてきていないことは、全く問題視されない。


ちきりんは、「上が弱いことこそ、日本の大問題」だと思ってる。下に関しては、横比較をすれば国際的には圧倒的にマシだと思っているし、「上がアカンから、下が大変になってんじゃないの?」とも考えているのだけど、こういう私の認識は徹底的に世間様とはズレている。

そういえば、いつぞやの首相も「最小不幸社会」とかいって、国のトップ自ら「私は青いところにしか関心ないです」って言ってましたね。


というわけで、これからもこの国は向こう100年くらい、「青い部分、大変大変!」と騒ぎ続けるに違いない。なのでもう、ピンクの人達も会社も、勝手にやって下さい。


ということなんだと思う。

まっ、それはそれでいいことなのかもしれない。


そんじゃーね。



追記)過去関連エントリ:「上の問題」を社会が問題視せず、「上は上で、自分達で勝手に解決してね」と言っているから、こういう状況が起こり始めているわけです。→ 「こっちの格差の方が問題でしょ