梅原さんの本における印象深いプロットのひとつ。それは、彼が格闘ゲームを何度も「人間と人間の勝負」と呼ぶことです。
どんな相手でも、ひとりの人間を攻略するのは容易ではない。
強気なのか謙虚なのか、好きなものは何か、どういう家庭環境で育ったのか、どんなゲームが好きなのか、これまでどういうゲームをやってきたのか・・・。
そこまで考えて、必死に分析してもなかなか理解できるものではない。
(中略)
試行錯誤を繰り返し、いろんな戦い方をテストし、成功と失敗を繰り返して初めて、ひとりの人間を倒すことができる。それが、本当の人間と人間の勝負だと思う。
僕がやっていることは“人を理解する”ことが欠かせないし、表面的な戦略だけでは勝ち続けられない高尚な世界だ。
そうだったんだ。対戦ゲームって人間ゲームだったのね。
で、よくよく考えてみたらゲームには、「人間と人間の戦い」と、そうでないものがあるんだよね。
実は私も、過去いくつかのゲームにはまってました。
そもそも「ちきりん」という名前自体、ダビスタ(競馬馬育成シミュレーションゲーム)で大活躍した馬の名前であり、あのゲームなくしては「Chikirinの日記」自体が存在していません。
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その他、今まで私が熱中したゲームは↓
1.シムシティ(都市運営)やダビスタ(競馬)などシミュレーションゲーム
2.鬼武者(←刀で相手を斬りまくる)やガンコンを使ったシューティングゲーム
3.ファイナルファンタジー(RPG)
あたりでしょうか。
ストリートファイターも一時期、それが大好きだった友人に誘われて何度かやったことはあるんですが、全く熱中できませんでした。
なぜでしょう?
そういえば、私の家族はボードゲーム好きで、正月などに集まるとすぐにモノポリーを始めるのですが、私はこれも全然やる気になれないんです。
「私が熱中できるゲームとそうでないゲームは、いったい何が違うの?」
今までわからなかったのですが、今回の梅原さんの本を読んで気が付きました。
私は、「ゲームで人間と人間の勝負をするのが嫌い」なんです。
格闘ゲームは梅原さんが言うように「人間と人間の戦い」だし、モノポリーも他のプレーヤーとの戦いです。麻雀もそうです。(梅原さんは麻雀もプロ級です)
小さい頃、家族で麻雀をやってましたが、私は全く勝てません。なぜなら・・・すべてが顔や態度にでるからです。
チャッソを待っていれば、誰かが索子(ソーズ)を切るたびに瞬きし、1秒ほどもその牌を熟視してる。こんな人に麻雀はできません。
私には、人間と人間が勝負するタイプのゲームは向かないのです。
他のプレーヤーの表情や心理を読んだり、自分が読まれないように気を付けたりするのが苦手で、そんなことやっていると疲れてしまう。そういうゲームは楽しめない。
だから、ひたすら一人でのめり込めるシミュレーションゲームや、一人で撃ちまくって敵を殺しまくるゲームが好きなんでしょう。
そういえば、梅原さんはゲーム中の無表情さが特徴で、よく「スゴイ集中力だ」と評されています。
たとえそれが「集中力の結果にすぎない」のだとしても、あれだけ無表情では「人間と人間の勝負」において、対戦相手が彼から何かを読み取るのはとても大変だろうと思います。
というわけで今回、私は初めて、ゲームには「人間と人間の勝負」と、「人間と勝負しないタイプのもの」があり、私は後者じゃないと楽しめないのだとわかったのです。
★★★
ところで彼は対談の中で、「ゲームにおいて常に相手のことを読もうとしているので、そうでない場所で会った人でも、この人はどんな人で、どんな考え方をする人なのか、無意識に考えてしまいます」と言ってました。
「以前は、皆もそうなのかと思っていたけど、今は、そんなことを考えているのは自分だけだと気が付きました」とも・・。
あの対談会場にいた皆様は、この瞬間、あたしが 3秒くらい固まっていたことに気づかれたことでしょう。
・・・だって怖いっしょ。 そんなこと言う人と 2時間も対談してるなんて。
きっと前世の悪行までバレたに違いないよ。
★★★
気を取り直して、思考を続けましょう。
ここでさらなる疑問が湧いてきます。梅原さんは「人間と人間の勝負」が好きで、常に相手のことを読もうとしている。
一方のあたしは、そんなゲームはうっとうしくて嫌い。なんだけど、じゃあ私が人間に興味がないのかというと・・・、そんなことは決してないよね。
私も人間にはスゴイ興味があるし、というか、人間とその集合体である社会にしか関心がないといえるほどです。
質問 → じゃあ人を読むことが嫌いな私は、その関心をどうやって満たしているんでしょう?
答え → 私は口に出して、質問しまくって、相手を理解しようとするんです。
★★★
先日行われた梅原さんとの対談は、5分ほどの休憩を挟んで 2時間。司会はおらず、ふたりでしゃべり続けました。
でも、会場にいた方ならわかるはず。アレは「対談」ではないですよね? 実際には「インタビュー」だったんです。
2時間の間、ずっと私が質問し、梅原さんが答えるというスタイルが続きました。(念のため。梅原さんは無口な方ではありません。話すのは上手だし、回答はどれも具体的で、とても饒舌です)
数えてはいませんが、たぶん私は 50くらいは質問したはず。もし時間があと 2時間あれば、きっと 100の質問をしたことでしょう。
でも、彼から私への質問は・・・ゼロなんです。
おもしろいと思いません?
★★★
対戦ゲームで勝つために相手のことを理解しようとする際、口に出して質問するなんてありえません。「今日はどんな感じで攻めるんですかね?」とか聞けないでしょ。
直接聞くのではなく、事前の振る舞いやゲームの内容から、相手の考えていること、次にやろうとしてくることを読むわけです。
NYUのサイトには、「ウメハラはほとんど超能力者のように、相手の次の手が読める」と書いてありました。
(前世の悪行は絶対にバレてる・・)
一方の私は、ひたすら言葉にして質問を投げかけ、相手のことを知ろうとします。読むより聞いたほうが早いじゃん! って感じです。
しかも私は、相手が楽しく、自分からいろいろお話ししてくれるよう、あれこれ工夫して質問するのが超得意。
これってもしかして職業病なのかも? お互い?
★★★
でもそういえば・・、先ほど「梅原さんから私への質問はゼロです」と書きましたが、対談前の打ち合わせ時間を含めると、2つだけ、彼から私への質問もありました。
それは・・・
ひとつめ → 「えっ! ビール飲んでんですか?」
その 20秒後くらいに二つ目の質問 → (結構冷たい声で) 「お酒、強いんですか?」
今から対談だってのに生ビール飲んでる私の姿は・・・何も問わずとも超能力者のように相手の行動が読めてしまう世界のウメハラでさえ想定外の、思わず口にだして訊ねてしまうほど、衝撃的なものだったのでしょう。
そんじゃーね・・・