“開示したら、いーんじゃないの?”シリーズの第二弾。
所得税も法人税も相続税も、税金は基本的に「利益移転のための制度」です。誰から誰にお金を移転させるか、という富の再配分ルールですね。
税制をとおして、所得の多い人、利益の多い会社、資産の多い人から、所得が少なく、貯金がなかったり、福祉の支援が必要な人のためにお金を移転させる。
(もちろん、お金を払わなくても誰でも利用できるインフラ整備にも使われます)
TPP で議論されてる関税という税金も同様で、この場合は、消費者から生産者への利益移転が行われます。
たとえば、今アメリカとの間で争点となっている豚肉の関税であれば、
1)できるだけ安く豚肉を買いたい消費者から、
2)国内の養豚業者への 利益移転が目的です。
輸入豚肉は安い肉ほど高い関税率が適用されているので、この関税で一番ソンをしているのは「安い豚肉を頻繁に買う消費者」です。
すなわち、お金の出し手は富裕層ではなく、育ち盛りの子供がいる子育て世帯、少額の年金で暮らしている高齢世帯、片親世帯などの経済的に厳しい世帯、です。
TPP で、豚肉の関税を残すという判断は、こういう人たちに少しずつお金を(豚肉の値段に関税を上乗せすることで)負担してもらい、そのお金を、養豚業者に移転する、という判断です。
養豚業者のほうも、「関税がなくなれば死活問題!」らしいので、
かわいそうな養豚業者の皆さんへ、
家計の厳しい、食べ盛りの子供がいる家庭や年金世帯から、
少しずつ利益を移転しましょう、と。
これはお米でも同じで、関税が撤廃されても、お金持ちは高級なブランド米を買い続けるので、彼らにメリットはありません。彼らが贔屓にしている(回らない)寿司屋も高級割烹も、米の関税が下がっても、安い米に切り替えたりはしません。
「そんなの想像できない!」という人もいるかもしれませんが、富裕層の中には、肉でも野菜でも米でも、「値段を見て、高いのを買う」みたいな人がたくさんいるんです。
一方、今、関税があるために(農家への補助金に使われる関税分を上乗せして)本来は安いお米をバカ高い値段で買わされているのは、「もし安いお米があれば、そっちを買うはず」の、低所得家庭や、食べ盛りの子供がいる家庭です。
もしくは、それらの層が利用する格安の牛丼チェーンや回る寿司屋なども、安い米が買えれば、商品価格はもっと下げられるわけで、ここでも低所得者層が資金の出し手(負担者)となっています。
この、「低所得家庭から、農家や養豚従事者への利益移転」が、日本国民の(もしくは日本政府の)やりたいコトだというなら、それはそれでいーんですが、「こういう数字も全部、開示したらいーんじゃないか?」って思いました。
たとえば、豚肉を200グラムを買おうとすると、値札には、
価格 216円( 消費税 16円、養豚業者への利益移転額 30円 を含む)
って書いてあるとか。
お米も、価格は 2160円 (うち消費税 160円、コメ農家への利益転嫁額 1200円)って書いてあるとか。
こうしたら皆、TPP に反対か賛成か判断しやすいでしょ?
関税以外の補助金についても、どの食品に(どの商品に)誰への利益移転分がいくら含まれてるのか、全部、明記すべきかもしれませんね。
もちろん電気代も、請求書に 4000円(うち、原子力発電所停止代 500円、福島第一原発廃炉コスト 500円)と書けばいい。(※ ここで挙げている数字はすべて例示です)
あと、TPP が「豚肉の関税をゼロにする」という結論になっても、豚肉を二種類の値段で売ればいいと思います。
切手だと、寄付付きの切手があるんですけど → こういうの
関税がなくなって養豚業者さんが困るというのなら、豚肉も、「養豚業者さんへの寄付付き豚肉」を併売すればいいんです。価格 216円( 消費税 16円、養豚業者への寄付 30円を含む )てな感じで。
もちろんお米も、「農家の皆さんへの寄付付きお米」を、関税廃止後の国際価格のお米より 1000円でも 2000円でも高くして併売すればいい。
この方式の場合、日本の農業やら畜産やらを守るために寄付付き商品を買うのは、比較的お金に余裕のある人になるから、
今みたいに「すこしでも安いお米や豚肉を買いたい(経済的に苦しい)家庭から、農家&養豚業者に利益を移転する」という仕組みの関税より、よっぽど良いと思えます。
というわけで、補助金も関税もゼロにするのが難しいなら、せめて情報だけでも開示すればいーんじゃないかな?って思いました。
そんじゃーね!