暴力的な言葉を使わない。それだけ。

去年の 6月、シリアとイラクにまたがる地域に、イスラム国という国が現れました。その後の行動を見る限り、まさにテロ国家の誕生です。

その行動は、人質の処刑(首切り)を youtube で公開するなど、残虐性を極めています。しかも驚くのは、アメリカやイギリスを含め、先進国からこの国に馳せ参じ、戦闘員になる人が少なからず存在するということ。

彼らが本国に戻ってテロを起こすケースもあれば、先進国でテロを起こした後、イスラム国に逃げ込む人もでてきています。

アメリカは空爆も始めたけれど、事態が劇的に好転しているとも思えません。先進国での(彼らの影響を受けた)テロも頻発しています。

「コレ、いったいどーすんの?」って感じです。


とはいえ、日本も他人事ではありません。オウムは世界を震撼させた日本オリジナルのテロ集団だし、イスラム国や過激派の行動に共感した日本人の存在も報道されています。

そしてなによりも、数年前からひどくなっているヘイトスピーチが、いっこうに収まる気配を見せません。


去年の 8月には国連人種差別撤廃委員会が、日本政府に対して、ヘイトスピーチ(憎悪表現)を法律で規制するよう勧告しています。海外から見ても、「目に余る」状態になってきたわけです。

デモの動画やニュースを見ると、ヘイトスピーチをしている人達の言葉の汚さには愕然とします。

まだ若い女の子までが「死ねー」「くたばりやがれっ!」「お前ら消え失せろ」などと叫んでいるなんて、いったい何が彼ら・彼女らをそんな行動に駆り立てるのでしょう?


こういう活動にのめり込む人達は、ネット上で誤った(&偏った)情報を読み、「外国人が不当に優遇されている」「彼らは狡くて不公平で許せない」と信じ込みます。

でもね。たとえ本気でそう思うのだとしても、「死ね」だの「クズ」だの、罵る必要は全くありません。そんな汚い言葉を使わなくても、何がどう問題なのか、どの制度をどう変えて欲しいのか、普通に主張すればいいだけです。


主張の中身がなんであれ、多くの人は、あんな汚い言葉を使う人達の意見を、まともに聞こうとは思いません。それは彼らもわかっています。つまり彼らがやりたいのは「意見の主張」などではないのです。

じゃあ、何がやりたいのかって? 

憎悪を撒き散らしたいだけですよね。憎しみや嫌悪の空気を、社会に蔓延させたいだけなんです。それは戦前にヒトラーがやっていたのと全く同じ事であり、「表現の自由」などという言い訳の下で、許容すべきものでは決してありません。


★★★


最近よく思うのは、ああいった汚い言葉を連発していると、憎しみの感情が増幅されるってことです。

子供のイジメの世界でも、「臭い」「死ね」「クズ」といった言葉が使われます。ネット上で誰かが叩かれるときや、ヘイトスピーチでガナられる言葉も、それとほとんど同じです。


集団イジメからヘイトスピーチ、そして過激思想者の叫びまで、狙い定めたターゲットにたいして容赦なく発せられる暴力的な増悪表現は、どんどんエスカレートし、最終的には暴力を伴い始めます。

憎しみの言葉は、それを口にする人の憎悪感情をさらに刺激し、より過激な言葉へ、より過激な行動へと駆り立ててしまうのです。


この本に書いたように、私は日常生活で使わない言葉は、ネット上でも使わないと決めています。知ってる人に言わない言葉は、見知らぬ誰かにも、投げかけたくはありません。

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たしかに人間だから、ついアタマの中で「ナンだコイツ!?」と思うことはあるでしょう。それをゼロにするのは難しい。でも、口に出して人を罵るのは、マトモな大人なら思いとどまれるはずです。


テロやヘイトスピーチや社会的な集団イジメに関して、あたしにできることは何もありません。だからせめてもの抵抗として、「汚い言葉を使うのをやめよう」と呼びかけることにしました。

イジメからテロまで、どこでも憎悪感情の表現ツールとして、全く同じような暴力的な言葉が使われています。

この世からそれらの言葉を追放することは、最終的には暴力そのものを無くすことにつながります。暴力的な言葉を許容する社会の延長線上に、暴力的な社会が出てきてしまうのです。


自分の口から発せられる言葉に、意識的になりましょう。それは自分の大事な人達に、自分の子供たちに、自分と同じ社会を構成する人達に、投げかけたい言葉でしょうか?

匿名だから? みんなやってるから? 相手が悪いのだから? だから罵りの言葉を吐くのは「当然」で「許されること」なのでしょうか?


暴力的な行為を無くすために、まずは暴力的な言葉を無くしましょう。

汚い言葉は使わないと、ひとりひとりが決めればいいだけ、それだけです。


多くの方に賛同していただけますように。


そんじゃーね。


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