日本の科学研究の未来は?

なんとまた日本人研究者がノーベル賞を受賞。そんなニュースが流れた昨日、私もリツイートした下記の呟き。


確かに受賞者の多くはご高齢。素人目で見ても、かなーり昔の功績にたいしての授与っぽい。

ただそれはノーベル賞の「賞としての特徴」の話なので、今も日本の若手研究者の方が、国際的に評価される論文をたくさん書いていらっしゃるというなら、なんの問題もありません。


なんだけど、「いや、実は日本の科学研究の未来は暗いのだ!」と言う主張もちらほら。

たとえば昨年末に文部科学省の学術政策研究所が出したこのレポートを見ると、日本の科学分野の研究論文って、数でも質でも世界でのプレゼンスがここ 20年ほど、大幅に低下してる。


アメリカに次ぐ 2位だった論文数は、今や中国、そして、人口が日本より遙かに少ないドイツ、英国にも抜かれて 5位に。

論文の質(被引用数の数やシェア)でも、米・英・独に続く世界 4位だったのが、中国、フランス、カナダに抜かれて 7位。注目度が極めて高い論文だけで比較すると更に下がって 8位。


また、アメリカと比べると、博士課程やポスドクなど若手研究者が筆頭著者になる論文が少ないとか、


「長期の時間をかけて実施する研究」が減り、「一時的な流行を追った研究」や「短期的に成果が生み出せる研究」が増えていると感じる人が増加してるという関係者アンケート、

大学教員の研究時間割合が、2002 年調査の 46.5%から 2013 年調査の 35.0%まで下がってることなど、いろいろ分析されてます。


★★★


その後、今年 5月に発表された鈴鹿医療科学大学 豊田長康学長の 「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」 なんて、サマリーページの一部がこんな感じ・・・↓


ずいぶん激しい言葉ですよね。とはいえ、こんな状況(↓)では口調も厳しくなる?


イノベーション、イノベーションと声高に叫ばれるわりに、企業の新規プロダクトイノベーション実現割合と高い相関を示す GDP あたり論文数も先進国では最も低いとか・・


★★★


まあでも文部科学省のレポートは、「文部科学省が財務省から予算を引き出すために、敢えて危機感を煽ろうと作られた資料」であり、

豊田学長のレポートは、「大学が文部科学省から予算を引き出すために、敢えて危機感を煽りたいと書かれたもの」にも見えるので、

どちらも“ポジショントーク”(自分のポジションに利益をもたらす結論を引き出すための主張)という可能性もあります。


もしそうだとしたら、何も心配する必要はありません。日本では今も、未来をリードするさまざまな研究が行われているのだと信じたい。


大村智博士のノーベル医学生理学賞、梶田隆章博士の物理学賞の受賞、本当におめでとうございます。


そんじゃーね!


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