難民について考えるイベントの課題発表!

JARとの共催 「日本の難民問題を考えるイベント」は、いよいよ次の日曜日に開催です! (イベント告知エントリはこちら

当日は参加者の方にもアイデアを出していただく予定なので、事前に課題を紹介しておきます。

まず全体のテーマは前回も書いたように、「日本が先進国として恥ずかしくないレベルの難民受け入れ=年間1万人の受け入れを実現するための具体的なアクション」を考えること。


そのために必要になるのが、
・医食住といった緊急支援から難民申請のサポート、定住支援などの「直接支援」と、
・世論を盛り上げ、政策決定に影響を与えていく「間接支援」という二方向からのアプローチ。


なかでも不可欠な要素が、お金、仕事(雇用)、そして難民を受け入れてくれるコミュニティです。


年に一万人を受け入れるのに、それぞれどれくらい必要なのか、計算してみました。

まずお金。現在の JAR の支援人数と難民ひとり当たりにかかっている費用から計算すると、1万人の支援には年間約 30億円が必要です。

これを個人、法人からの寄付で集めるには、下記にあるように
4万人を超える個人からの寄付や、年間 10万円とか 30万円を寄付してくれる企業が 1000社単位で、さらには、年間 500万円とか 3000万円といった規模の寄付をしてくれる大企業が数十社必要になります。



(数字が細かくて読みにくいですが、当日は配付資料としてお配りします)


これが毎年、必要になるのだから簡単ではありません。

今回みなさんに考えていただきたい最初の課題がこれです。どうやったら個人からの寄付を継続的に増やしていけるか、法人の寄付を増やしていけるか。

中小企業と大企業ではアプローチの仕方も変える必要がありそうだし、

なによりマーケット感覚を働かせて考えてほしい。

「寄付をすることにより、寄付者にはどんな価値があるのか?」ってふうにね。


みなさんのアイデアは、当日お配りする A5サイズのポストイット(付箋)に書いていただき、壁に貼ってみんなで共有します。

なので、各自 筆記具持参! (サインペンなど読みやすいペンがいいけど、裏移りする油性マジックは使用禁止!)


2番目の課題は、企業協力を増やす方法。企業からの協力は大きくふたつに分かれます。ひとつは、難民を雇用してくれる企業が必要。

難民申請には長期間かかるので、その間の生活資金が必要だし、認定が認められた後も定住や社会参加には仕事が不可欠。

アメリカではホテルやファストフードのチェーンなどが、数十人、百人といった規模で難民を雇っています。日本だって人手不足なんだから、同じようなことは可能そう。

それに、日本語はできなくても、難民の中には母国で専門的な教育を受けた人もいます。彼らの力をどう日本社会に活かしていくのか。

こちらも「雇う側が得られる価値はなに?」というところから考えてみてね!



もうひとつは、難民支援に直接役立つノウハウや専門性を持つ企業の協力を増やす方法。法律事務所や空き屋斡旋企業や通訳など、いろんな支援が考えられます。

こういった協力企業を増やす方法もぜひ考えてみてください。


3つめの課題は、どうやって世論を高めていくのか。


今までも「昔は疎外されていた様々なプロフィールの人たち」が少しずつ「多様性の要素」として認定されてきました。

若い人には信じられないかもしれないけど、30年前には「女性も仕事仲間として認めること」が多様性を確保する、という意味だったんです。

その後、「障害者にも健常者と同じチャンスを与える」ことが多様性を意味するようになり、

ここ数年で「 LGBTなど性的マイノリティにも同性カップルと同じ権利を認め、社会の構成員として受け入れる」ことが、多様性の条件として加わりました。

次はいよいよ、難民など他国からやって来た人についても、「日本人じゃ無いからと彼らを排除しておきながら、我が社は我が国は多様性を重視してるなんて言えないよね!」と訴える番です。


私は 30年前、飛行機の中で日経新聞を読んでいたら、隣に座ったオジサンから「女のくせに日経新聞なんて読んで何がしたいんだ?」と言われました。

もちろん、何の面識も無いまったく知らないおじさんに、です。

「女にマトモな仕事なんてできるはずがない」-- 30年前は多くの人がそう思ってる時代でした。

そう考えれば、「難民なんて受け入れたら犯罪が増える」と思われてる時代だって、永久に続くわけではありません。


んが、これまでのグループとの違いは、彼らには選挙権がないということ。

今でも(もし戦前のように)女に選挙権がなかったら、いくら「保育園が足りない!」と女性が騒いでも政治家は動きません。

難民には選挙権も無いし、認定を待つ身で目立つ活動をするのも憚られるでしょう。支援する側としてここをどう乗り越えるのか、知恵の出しどころです。

どうやったら「次の多様性の要素」を認知させられるか。女性、障害者、LGBT グループの人達がどうやってその立場を獲得してきたか、それらを参考にしながら考えてみてください。


最後が、受入れコミュニティを増やすこと。


難民とは限りませんが、今、事実上の「外国人・受入都市モデル」となっている都市がいくつか存在しています。

ひとつは浜松市のように、地方の中核都市が一定規模の外国人を受け入れているケース。

もうひとつは群馬県の大泉町のように、小さな自治体に大量の外国人が住んでいるケース。なんと人口 4万人のうち 6000人もの人が日系ブラジル人など海外から移り住んできた人なんです!

そして最後が新宿のように、大都市の特定エリアに、多くの外国人が住んでいるケースです。


こういった都市やエリアをどう増やしていくのか、が4つめの課題です。

マスメディアは「外国人が増えたことの問題」ばかり取り上げますが、これからの人口減少時代、たくさんの外国人がやってきて、働き、消費し、家を借りて子供を産んでくれたら「ありがたい!」と感じる自治体だって、それなりの数、存在するはず。

とはいえ、いろいろ不安が先に立つ・・・

そこで!

彼らがもつ不安を解消し、多様な人が住む街のよい面をどう伝えていけばよいのか、ぜひ考えてみてください。

都市のタイプ毎に、それぞれの都市に与えられる「価値」を考えるという、マーケット感覚からの発想が重要です。


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以上、当日は A5サイズのポストイットをお配りするので、上記の課題について「こーしたらよいのでは?」と思うアイデアを、その場で書いてください。

その後、ポストイットを会場の壁に貼り、私が司会をしながら、使えるアイデア、膨らませられそうなアイデアなどを紹介しつつ、みんなで考え、

最後は JARスタッフの方に「これは使えそう!」と思えたアイデアをピックしていただき、今後につなげられたらいいかなと。

とはいえ、すべての課題について考えてくるのは大変過ぎるので、ひとつでもふたつでも「こんなアイデアどーかな?」というのを思いつけば、それで十分です。


それと!
当日は私の私物を持ち込んでのバザーも行います。バザーの売上金にその同額を上乗せし、後日 JARに寄付をする予定です。

出品商品や購入方法は下記。関心のある方はチェックしてみてね!
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楽しみだー!


そんじゃーねー


追記) → JAR イベント報告ページ


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