B級グルメから神戸ビーフまで

このエントリは連載ものです。

第一回 浅草から考える多文化共生
第二回 インバウンド観光にみるムスリムの可能性


今回の取材は、 ハラールメディアジャパン株式会社 の代表取締役、守護さんから、

「ちきりんさん! 今度、HALAL EXPO JAPAN 2016 をやるのでぜひ観に来てください!」とお誘いを受けたところから始まりました。


11月下旬に台東区の施設で行われたイベントはものすごい盛り上がりで、ムスリム素人の私でも十分に楽しめました。

会場のブースは大きく「食品・食材」と「それ以外」の展示に分かれていたので、今日は主に前者の紹介をします。

ハラール食材と言えば、イベントに行く前は「ハラールのルールに基づき屠殺処理された食肉を売る卸店」くらいしか想定していませんでした。

もちろん、そういうお店の出店もあります。こちらはハラール肉の卸店。日本でハラール屠殺をした食肉の他、ハムやラーメンなど加工品も販売されてます。


こちらはマレーシアなどから輸入したハラール対応食材。試食してみましたが、どれもかなり美味しかった。近くのスーパーに売ってたらふつうに買うレベル。


でも行ってみて新たに理解したのは、それ以外にも

1)たこ焼きやラーメン、カラオケ屋など、B級グルメ店の対応が大事
2)パンや鶏ガラ出汁など、思わぬところにもハラール対応が必要
3)日本の食材を世界に売るにはハラール対応だけでは不十分

ということでした。


まず最初の点。アジアからの観光客って寿司や天ぷらだけでなく、ラーメンやたこ焼きなど日本の B級グルメに興味津々なんです。

ところがムスリム観光客の場合、それらの大半が食べられない。だからハラール対応のラーメンとかが大人気になるんです。


こちらのサムライラーメン。麺にもスープにもアルコールや動物系食材をいっさい使ってない。それでも私には十分の味。コクもあり美味しかった。

ちなみに、ハラールチキンは輸入で手に入りますが、ラーメンなどを作る際の「ハラール鶏ガラ」は輸入では手に入らない。

なので自分で作るか、日本の卸業者さんから購入します。こういう見えない部分の調味料が大事なんだよね。


B級グルメの代表、たこ焼きもハラール対応!


通常、たこやきのソースには動物由来の成分、生地に混ぜる出汁にもアルコールが含まれているのですが、

この店ではそれらを自家製造することでハラール対応をしています。

ちなみに大阪でハラール対応ができているたこ焼き屋は一軒だけとのこと。どんだけブルーオーシャンなんだか!?

食べてみたら・・・関西人の私にも十分おいしかったです。


アジアからの観光客は日本のスイーツをお土産品として爆買いしますが、お菓子でさえムスリムの人にはハラール対応でないと買えません。

だからこいう、外国人に人気の抹茶系スイーツや、

もみじまんじゅうでハラール対応をすれば(山ほど存在するお土産品の中で)確実な差別化が可能になります。


それと今回はじめて知ったのですが、実はパン類も難しいらしい。

食パンを焼く時の型の内側にラードが塗られたり、材料であるマーガリンやショートニングにも動物性油脂が含まれることが多いんだって。(詳しくは こちらのサイト

初めてハラール対応の食パンを食べてみたんですが、たしかに普通の食パンとはちょっと食感が違います。でもサクサクして美味しかった。


こういう和風お弁当も、日本に来た外国人観光客なら一度は食べてみたいよね。

あれこれ入っているので、弁当全体でハラール対応が明確になってると安心です。


「カラオケ」も外国人観光客、そして日本に留学中のムスリム大学生などに人気なんですが、ここで出されるお料理もハラール対応でないと、彼らは利用ができません。

だから対応してるカラオケ店はとても貴重!


今や、ワタミのような大企業も対応を始めていたり、


鹿児島や北海道など、地域ぐるみで取り組もうとするところも、


それと、会場ではハラール対応の先進国シンガポールから招かれたシェフが調理のデモストレーションを行っていました。


当たり前のことですが、日本の食材を世界に向けて売り出すとき、「ハラールです」と言うだけでは売れません。

だって見たことも無い日本独特の食材なんて味も使い方も知られてませんから。

そこで、たとえば味噌を売りたいなら、ハラール味噌を開発した上で、味噌を使ったレシピや料理を紹介し、その材料として

「大丈夫。この味噌はハラール認証を受けてますよ!」と勧める必要があるんです。


このエキスポは今年で 3年目。今はハラール対応の食品や商品を扱うお店と、それを買う可能性のあるお店や人を結ぶものですが、

将来的には海外でもエキスポを開き、日本のバイヤーが海外から商品を買い付けたり、日本のハラール対応商品を海外に売り込むお手伝いもしたいとのこと。


おもしろそうやん!


海外でエキスポ行われる時は、ぜひあたしも遊びに取材に行こー!


★★★


そうそう。会場内のお祈りスペースが大きい!と思ったら、お祈りスペース自体のサンプル展示でした。

簡易設置型なので、スペースさえあればホテルや空港にも低コストで設置できそう。

(写真に写ってくれたのは日本に留学してる学生さん)


会場には日本のマスメディアに加え、海外のメディアも多数取材に訪れていました。


私もあれこれ試食して周り、山ほどパンフレットを頂きました!


なお、ムスリムにはインドネシアなどからやってくる「普通の観光客」の他、中東などからやってくる「超富裕層ムスリム」もいます。

西麻布にあるこのレストランでは、ハラール神戸ビーフを使ったコースが最低でも 2万 5千円、上級コースは 4万円もするのに、予約が取れないほどの人気だそう。

B級グルメから超高級神戸ビーフまで、ハラール対応するだけで完全ブルーオーシャンじゃん!


しかも海外からの観光客が日本で使うお金のうち、飲食費は 2割もの割合を占めており、加えてお土産代にもお菓子など食品が含まれてると考えれば、市場規模もかなり大きそう。

なんでみんなもっと積極的に対応しないの??


「でも、ハラール食材ってお高いんでしょ?」って?

それがね・・・・そうでもないんです。

その辺は今後少しずつ明らかにしていきましょう。


[
そんじゃーね。


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