福島県・被災地への旅行の記録 in 2022

2022年の9月、福島県の沿岸部、いわゆる”浜通り”と呼ばれる地域を旅行しました。ご存じ、福島第一(&第二)原発のあるエリアです。

福島に行くのは東日本大震災の翌年以来 10年ぶりで、「あれから10年(or 原発事故からは 11年)、福島はどうなっているんだろう?」と思ってのことです。

数日の旅行でしたが大変勉強になり、多くの人にこのエリアを訪ねてほしいと考えたので、旅行のプラン作りに役立ちそうな情報をてんこ盛りに書き記しておくことにしました。


<今回のルート>
東京から新幹線で福島市に入り、車で国道114号線を走り、浪江町へ。

そのあと沿岸部を、浪江町、その北の小高町、南の双葉町、大熊町、富岡町と回って、最後は郡山駅に戻って新幹線で帰京しました。

内陸部の福島市や郡山市から沿岸部までの”東西の移動”に時間がかかるので、東京からなら、「品川から浪江町などへ走る直通の特急電車」を使って入るのもいい方法だと思います。(※ただし現地ではレンタカーかタクシーチャーターが不可欠かな)


<帰宅困難地域>

下記のように沿岸部では、いまだ立ち入りが制限される「帰宅困難地域」が存在します。これらの情報は刻々と変るので、旅行前に復興関連サイトからダウンロードしましょう。

私は最初に福島駅の観光情報センターに立ち寄り情報を集めたのですが、広域地図で一番役立ったのが、下記のぐるぐるマップです。これは必携。

各地でもらえるので、当該エリアに入ったら最初にどこかの観光案内所に立ち寄り、この地図と、この後に紹介する各施設のパンフレットを入手しましょう。

★★★

原発事故関係の観光をしようと思うと、

沿岸部を北から南に、浪江町 → 双葉町 → 大熊町 → 富岡町へと南下することになります。車で国道 6号線を走るコースですね。

このエリアで私が訪れた施設は下記の 5つ。どれもとても見応えがありました。

1)東日本大震災・原子力災害伝承館
2)震災遺構 浪江町立 請戸小学校
3)東京電力 廃炉史料館
4)中間貯蔵工事情報センター
5)リプルンふくしま(特定廃棄物の埋め立て処分場)

その他、風景として見る価値があるのは、
・JR浪江駅やJR双葉駅など、各JRの駅前
・海沿いの再開発地域 (防潮堤の上からや、高台の見晴台がお勧め!)
・国道6号線や国道114号線(福島から浪江にいたる道)などの風景
でしょうか。

私はこれに加え、浪江の北にある小高町にも立ち寄りました。

ではひとつずつ紹介していきましょう!


<東日本大震災・原子力災害伝承館>

原子力災害とその影響について、後世に伝えるための伝承館です。

沿岸部の風光明媚な場所にあります。屋上には展望デッキも。

内部の展示も充実しており、1時半から閉館時間まで 3時間半、見学しましたが、時間が足りませんでした・・・

福島第一原発の模型
  ↓

映像作品や語り部の方のお話などを聞き、パネルを読みつつ案内スタッフの方にいろいろ質問していると、5時間くらいは必要だったかも。

印象的だったのは、原発を建設した当時の時代背景の説明。この写真は有名ですよね。

原発が建設されたのは、日本が高度成長で大量の電気が必要だった時代。しかも、石油ショックが起こり、「石油を代替するエネルギーを確保すること」が国家の最優先課題でした。

原発立地自治体の双葉郡では、原発ができて人口が増えていきます。

とてもここでは紹介しきれないくらい、本当に盛りだくさんな展示なので、ぜひたっぷり時間を確保して訪れてほしいです。

特に、展示スペースにいらっしゃるガイドさんの多くは被災者の方で、とても貴重なお話が伺えます。ぜひ積極的に声をかけ、いろいろ質問してみましょう。


<震災遺構 浪江町立請戸小学校>

海の近くに立地し、津波で被害を受けた小学校です。生徒と先生は避難してみんな無事でした。

外側だけみると、あまり被害を受けたように見えませんが、

内部は津波で大破しています・・・

津波の被害は福島県も岩手県も変らないのですが、福島県の原発周辺エリアでは、

・原発事故のせいで、津波がひいた後も、被害者の捜索や遺体&遺品探しがままならなかった。

・復興に関しても、まずは避難や除染が必要で、復興工事自体が何年も始められなかった。

という大きな違いが存在します。


<周辺の様子>

114号線を通って福島市から浪江町へ向かうと、道すがらにこうした看板がたくさん立てられているし、

除染が終わっているのは幹線道路沿いと駅前などだけなので、脇道の多くはまだ封鎖されたまま。特に山間部に関しては、今後はもう除染を行わない方針がアナウンスされています。

除染作業が行われている現場もいくつか見ましたが、空間線量はやはりまだ少し高いようです。
(↓下記は 2.8マイクロシーベルト。この数字は東京だと0.05くらいです)

幹線道路では、特定廃棄物や除染土壌を運んでいるとみられるトラックが数多く走っています。
これは、すでに復興工事の多くが終了し、ほとんどトラックを見かけなくなっている岩手県の三陸エリアとの大きな違いでした。


一方、再興が進みつつあるエリアもあります。

たとえば沿岸部。海は本当にキレイですが、津波の被害を繰り返さないため、海の近くは防潮堤や防風林エリアとなり、居住できなくなっています。

居住はできなくても産業立地には使えるので、大きな太陽光パネル畑や、

大型ドローンの実験場(空飛ぶ車??)などもありました。

ここでぜひお勧めしたい訪問場所が、こちら。

大平山霊園近くの見晴台です。

この上に登ると、沿岸部の復興計画の様子が 360度、一望できるんです!

しかも説明パネル付き。水素エネルギーの研究施設とか、

ロボット技術の研究、実験施設などが多いみたいですね。

こちらは林業再生のための材木加工施設かな?

お天気がよいと景色も素晴らしいのでぜひ訪れてみてください。

★★★

次は浪江駅。これはもしかすると震災前の建物のままかも。

が、こちらも壮大な再開発プランが存在するようです・・・

津波で寸断された常磐線の全面開通はこの地域の悲願だったと思いますが、もともと車文化だったことに加え、いまだ多くの住民が帰還できていないため、駅のまわりはどこも閑散としていました。


<道の駅なみえ>

私が訪れた範囲では、浪江町でもっとも賑わってる場所は直売所、レストランなどの他、無印も入っている「道の駅なみえ」でした。

B級グルメとして有名な「なみえ焼きそば」

「しらす丼」が気に入って2回も食べました!

この周辺にはイオンやホテルもあり、浪江町の宿泊場所として最適だと思います。


<福島県復興祈念公園>

こちらはまだ工事中でしたね。

岩手県など地震と津波だけの被害に遭ったエリアでは、こういった「大規模工事=ハードとしての復興」は終わりかけていますが、

福島の原発周辺ではようやく立入可能になったエリアも多く、ハードな復興(いわゆる大規模工事)自体がまだまだこれから、という感じでした。


<東京電力廃炉資料館>

現在は(コロナ予防のため)訪問には事前予約が必要です。

予約した時間に集団で説明を受けつつ見学するのですが、そのあとも係の方が個別に質問に答えてくださり、大変理解が進みました。

団体説明のあと、スタッフの方を1時間くらい個別に質問攻めにしていたら、最後のほうは「あなた、いったい誰ですか? ほんとに一般観光客なの??」的な視線を感じました・・・

各原発でどのような事態がおこったのか、資料ももらえますし、現地では模型を使いながら、大変わかりやすく説明してもらえるのでとてもお勧め。

なお、トリチウムの残ってるALPS処理水の海洋放出、私は支持します!


<中間貯蔵工事情報センター>

福島第一原発の周辺に、除染ででた汚染土壌などを”一時的に”保存しておく中間貯蔵施設が作られています。

今回は予約なしで立ち寄りましたが、たまたま手の空いていたスタッフの方が 30分ほど、詳しく説明してくださいました。

実は定期的に中間貯蔵施設の見学(無料)も開催されているようなので、旅行の計画をたてるときは、こういうのにあわせるといいかもしれません。もちろん要予約です。


<特定廃棄物の埋め立て処分事業>

環境省がやってる“リプルンふくしま”

こちらは特定廃棄物の恒久的な埋め立て処分地です。

行く前は「特定廃棄粒ってなに?」「中間貯蔵施設とどう違うの?」というレベルで何もわかってなかった私ですが、

スタッフの方がパネルを使って丁寧に説明してくださり、とても勉強になりました。

埋めたてる廃棄物をまとめたサンプルなども展示されてます。

またここでは、ガイドさんと一緒に放射能測定器を持って敷地内のフィールドを歩き、放射能レベルを測定したりもできます。

もっとも興味深かったのは、実際の埋め立て場所の見学です。

ただ、こちらは撮った写真を「ネットに載せないでください」とのことだったので、残年ながら写真なし。

あと、下記は予約が必要なため今回は見学できなかったセメント固形化処理施設の模型。次にいく時はこちらも予約してぜひ見に行きたいです!

★★★

次は今回、時間切れで訪れられなかった施設をいくつか。

<とみおかアーカイブミュージアム>
震災前からの街の歴史が展示されているようです。次回にいくときはぜひ訪れたいです。

それ以外にも、事前予約をすれば見学できる施設や、NPOや被災者個人の方が案内してくれる震災・原発事故関連のツアーなども(ググれば)けっこうでてきます。

旅行前にはそれらについても情報を集めるとよいかもしれません。

自分たちでパネルを見て勉強するだけでなく、口頭で説明してもらうと、本当によくわかるので。

★★★

最後に、浪江町の北にある小高(おだか)町にも足を伸ばしてみたので、そちらの情報も載せておきます。

<小高町>

この町には、震災後に移住された作家、柳美里さんのフルハウスという書店併設カフェ(カフェ併設書店かも?)があり、ランチをいただいてきました。

売られている本は「さすが作家さん!」という、素敵な選書でしたし、

カフェで食べられるランチも本格的でおいしかったです。
下記はサラダランチ。写真を撮るの忘れましたが、パスタもかなりおいしかった。

近くにある小高パイオニアヴィレッジという、宿泊施設付きのコワーキングスペースも見学しました。若い方が多くてけっこう賑わってましたね。

★★★

以上なのですが、

今回の旅行に際しては事前にツイッターで情報提供を求めたところ、多くの方から情報をお寄せいただきました。

ここまで充実した旅行ができたのは、ひとえにみなさんのおかげです。あらためて御礼申し上げます!

長いブログとなりましたが、多くの方に読んでいただけてとても嬉しいです。

今回の福島旅行については音声配信 Voicy でもその感想を語る予定なので、そちらもぜひお楽しみください。


そんじゃーね

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/