結婚はオワコン!?

下記は先進国における、「全出生数に占める、婚外子の出生数比率」、すなわち「正式には結婚していない母親から生まれた子供の比率」です。

その比率が、1980年から2008年までの約 30年でどれほど変化したか、よーくご覧ください。

<婚外子の比率の変化>

スウェーデン  39.7% → 54.7%
フランス    11.4% → 52.6%

                          • -

イギリス    11.5% → 43.7%
オランダ    4.1% → 41.2%
米国      18.4% → 40.5%
ドイツ     15.1% → 32.1%
スペイン    3.9% → 31.7%

                          • -

カナダ     12.8% → 27.3%
イタリア    4.3% → 17.7%

                          • -

日本      0.8% → 2.1%

(ドイツは1991年→2008年 イギリスは、1980年→2006年、カナダ、イタリアは1980年→2007年、その他は1980年→2008年 データ:先進各国の婚外子の比率」)


上記データには、2つの注目点があります。

ひとつは、「西欧の先進国では、生まれる子供の半分近くが婚外子になりつつある」ということ。

日本ではまだ「結婚は、出産の前提」と考える人も多いですが、他の先進国では既にそうではありません。

日本ではたった 2%しかいない婚外子が、30%、40%、50%などケタ違いの比率になっているのです。

これは「西欧と東洋の違い」みたいなぼんやりした要素で説明できる差ではありません。

背景には明らかに、「結婚していない女性が子供を産む」ことへの法律的な保護、福祉制度や経済支援、社会の認識の差があります。


なかでもスウェーデンとフランスの婚外子比率が特に高いのは、この 2カ国には社会的に受け入れられた「事実婚」のシステムがあり、

事実婚カップルから生まれた子供でも、結婚した夫婦から生まれた子供と同様に保護する包括的な制度があるからでしょう。

この 2カ国はよく「少子化を克服した国」として紹介されますが、その裏には「制度的な事実婚の認知」が存在しているのです。


もうひとつ注目すべきは、1980年段階では、オランダ、スペイン、イタリアのように、婚外子比率が一桁と、非常に少ない国も存在していた、という事実です。

というか当時は、スウェーデンとアメリカ以外では「婚外子は 10人に 1人」しかいませんでした。

つまり 1980年段階では、欧米先進国でも「結婚は出産の前提」だったと言えます。


しかし、それらの国でも過去 30年で婚外子が大幅に増えました。

スペインやイタリアは教義的には婚前交渉さえ認めないカトリック信者が大半を占める国で、婚外子は宗教的な観点からも認められにくい風土です。

それらの国でさえ、状況はここまで劇的に変わってきました。

これって何が起こってるのか、わかりますか?


西欧先進国においては、すでに「結婚」という制度は崩壊しつつある、んです。

結婚は過去の制度となりつつあり、もはや 100年後に残っているとはちょっと思えないよねって感じの制度になってるんです。

だから、今どき「婚姻率を高めよう」なんて、完全に時代に逆行してる政策なのです。


みなさん、“ 3世帯同居”って聞いたら、どー思います? 

結婚しても親と同居し、祖父母と孫をあわせ 3世代が同居する世帯。

「ああ、うちも昔はそうだったよ」って感じでしょ。

その比率が減ってると聞いたら、どう思います?

「 3世帯同居が減ってるって? それは問題だ! 3世帯同居がどうやったら増えるか、みんなで知恵を出し合って問題を解決せねば!」って思いますか?

思わないよね。


結婚制度も同じです。

時代に逆行してまでそんなオワコン(=ブームの終わったコンテンツ)である制度を、再普及させる必要なんてないんです。

結婚がいったいいつ頃「みんながするもの」になったのか知りませんけど、今や「社会的な役割を終えつつある制度なのだ」ってことに、早く気が付きましょう。

★★★

西欧先進国に比べて日本の婚外子がこんなに少ない理由は、日本女性が法的な結婚にこだわっているからではありません。

単に日本では、「結婚せずに子供を産める環境が整っていないから」です。

婚活している女性の中には、「子供を産める限界年齢が近づいているからすぐにでも結婚したい」と焦る女性がたくさんいます。

でも実は、彼女らが探しているのは「人生のパートナー」ではなく、「子供の父親」です。

「自分が子供を産むために必須となる男親が必要だから」婚活してるんです。

日本でも西欧のように婚外子がごく普通になれば、彼女らの一部は(結婚をとばして)出産に向かうでしょう。

結婚相手が見つからないから、子供が欲しいのに産めない。そういう女性が子供を産めるような社会にすれば、出生率はかなり上がるはずなんです。

★★★

ちなみにここでいう「結婚してなくても安心して子供が産める環境が整っていない」とは次の 2点のことです。

1.法制度的に婚外子は不利益を蒙る

2.シングルマザーが子育てするのは、経済的にとても厳しい


世間の目もありますが、それは上記 2点が変われば改善されます。

他の先進国のように「子供の半分は婚外子」になれば、子供がいじめられるとか本人が気にするという状況は自然に減じられます。

そして、「友達はみんな結婚してる!」ではなく「友達はみんな、結婚せずに子供を産んでる!」になれば、「自分もそうしよう!」と考える女性は相当数いるでしょう。

てか、今の時点で夫と子供がいる女性でさえ、「子供がいない人生なんて考えられない! 耐えられない!」けど、「夫がいなくなっても・・・まあね」って人はたくさんいるんです。

法律を変え、シングルマザーを経済的に手厚く保護すれば、日本でも数十年で(=みなさんの子供の世代では)婚外子が 3割を占めるようになる。

そしてその過程で出生率が上がり、少子化は改善されていくのです。

「子供を産みやすい社会」とは、そういう社会なんです。

★★★

現在、経済力があり、かつ、世間の目にも強い女性の中には、最初から結婚せずに子供を産む人もいます。

「結婚はしなくていいけど、子どもはほしい」 そういう女性は日本にもたくさんいるんです。

とはいえ現時点でそういうことができる女性は、まだまだ少数。

未婚の母として出産し、子供を育てるには、経済力だけでなく強い精神力も必要です。


だから、「子供を産むためだけに結婚し、子供が生まれたら離婚に躊躇しない」女性も増えています。

最初から結婚せずに子供を産むのは「世間の目」も怖い。自分の親にも心配をかけてしまう。将来、子供に聞かれても父親が誰だか説明できない。

ですが、出産前後の 3年ほどだけ結婚していれば、そのあと離婚しても、最近は比較的「よくある話」として受け入れられる時代になってきました。

だから「子供を産みたいから、とりあえず結婚しよう」と考えるのです。

「とりあえず結婚」をもう少し詳しく説明すれば、「一生を共にする気はないけど、子供を産むためのパートナーとしては合格」な相手と結婚するってことです。


こういった女性は、多くの場合、非常にスペックの高い男性と結婚します。

一流大学の出身者だったり、背の高いアスリートだったり。

「最初から離婚する気だった」、「種だけが欲しかった」とまでは(敢えて)いいませんが、「子供はかわいいけど、夫の世話のために自分の人生の時間を使うのは勘弁」と考え、子供が 3才くらいになったらさっさと離婚する、というパターンです。

シングルマザーと言えば貧困家庭と思われがちですが、経済力が高く、離婚してもひとりで子供を育てるのに困らない女性ならではの選択です。

★★★

一般の人に関しても意識が変っています。

たとえばデキ婚の増加。

これ、なぜ増えているかというと、「子供ができたら結婚するけど、(子供もできてないのに)結婚するってことの意味がよくわからない」からです。

「結婚自体はオワコン」だけど、日本の場合、制度が整ってないから、「妊娠したら法的に結婚しないとなにかと不便だから籍を入れる」んです。

★★★

それにしても、最近、安倍氏を中心とした自民党の保守系議員から出てくる少子化対策はホントにおもしろい。

彼らは
・たとえ選択制であっても、夫婦別姓なんて絶対反対である
・保育所を増やすくらいなら、育児休暇を 3年に伸ばし、家で子供の面倒をみてもらおう
・「女は早く結婚しないと卵子が老化して子供が持てないぞ」と書いた手帳を女性だけに配ろう

みたいな案を次々と出してきます。

一方で、
・妊娠した時点で保育所の入所希望を出しておけば、一年後までに保育所を整えておきます! とも、
・妻が子供を産んだ男性の育児休暇の取得実績が低い企業にはペナルティ与える! とも
・シングルマザーでも子供が育てられるよう、経済的な優遇措置を大幅に拡大する! とも
・婚外子に関する法律的な区別を一切なくすから、結婚前提にせずに子供つくってOK!
・もちろん夫婦別姓も認める!

とは、ぜったい言いません。


なぜだって?

だって彼らが目指しているのは、子どもを増やすことではなく、“昭和”に戻ることだからです。
Back to the Future or to 昭和?

下手すると、育児休暇を 3年にした暁には、保育所を減らせるだろうくらい考えてそうです。

「やっぱり3歳までは、子供は母親が育てるべきだろ。その後に、どうしても働きたいというなら働けばいいけどね」って感じ?

平成の次の年号が “昭和 2.0” だったりしないことを祈りたい。
いろんな意味で古すぎです。


そんじゃーね

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