今年のキーワードは「見限る」

年末に取材を受けたプレジデント誌 2012年 1/2号 で「今年のキーワード」を教えてくださいと言われ、ちきりんは「見限る」と答えました。

昨年来、多くの人がいろんなものを“見限り始めた”と感じたからです。


日本人は世界で稀なほど“お上”や“権威あるメディア”への信頼度が高い国民ですが、昨年起こった福島の原発事故を経て、いよいよそれらを「見限った」人も多いでしょう。

将来、他の原発で何か起こった時、政府やNHKが「爆発はしません!」「メルトダウンなんてありえません!」、「直ちに健康に影響はありません!」と連呼しても、それを素直に信じる人は相当少なくなりそうです。


原発事故は、霞ヶ関、永田町、そして経団連を含めた既存の政治体制、日本の権力当事者に対する不信感も大きく増幅させました。

それにしても、原発事故が起こった時、リーダーシップの“リの字”も見せなかった監督官庁、経済産業省にはあきれました。(誰かひとりでもリーダーシップを発揮したと思える人っていましたっけ??)


また、大阪や名古屋における首長選の結果は、中央の政党政治、中央集権制度への見限りとも見えますし、ここに来てもまだ原発推進にこだわる経団連や、多額の投資損失の隠蔽を続けた上に責任逃れの嘘をつきまくるオリンパス経営者の姿を見て、「日本のモノ作り企業の実態」に失望した人も多いでしょう。

東大の9月入学検討は「日本の18歳人口」を見限り、「アジアの優秀な学生を集めたい!」という意思表明に聞こえるし、既に多くの企業は日本市場を見限って、本格的にアジア市場での成長を求め始めています。

個人のレベルでも日本や日本企業を見限って、最初から海外や外資系で働こうと考える人が増えるだろうし、高校生ですら日本の大学を見限り、海外の大学に進もうと考える人がでてきています。

日本航空も東電もオリンパスも超のつく一流企業であり、22歳でこういう会社に入って、65歳まで40年間働くことを目指すのが“日本の就活”なわけですが、その制度そのものを見限る人も(まともな学生から順に)今後は増えていくでしょう。

というわけで、ちきりんは「今年は見限る一年だよね!」と考えています。


念のため書いておくと、ちきりんは「見限る」という言葉にも、さらには「捨てる」という言葉にも、全く悪いイメージは持っていません。

むしろ「捨てずにずっとグズグズしている」方がよほど後ろ向きです。要らないもの、使えないもの、どうでもいいモノを抱え込んでいると、本体が腐ってしまうから。

今年は要らないものをどんどん捨てて、新しいものを手に入れましょう。「捨てる勇気」「見限る判断力」がないと、要らんものをたくさん抱えて大変になるだけです。

そんな人やそんな組織はさっさと見限って、新しい世界へレッツラゴー!



そんじゃーねー!


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