相対比較の不毛

下記の読売オンラインの記事

厚生労働省は23日開かれた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で、5年に1度実施する公的年金の財政検証の結果を提示した。


 現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準(所得代替率)は2038年度に50・1%となり現在より約2割低くなるが、それ以降は固定されると試算し、04年の年金改革で政府・与党が公約した「現役世代の5割確保」は辛うじて達成できるとしている。

“2038年に所得代替率が50.1%”ってのは、「2038年の日本の平均的な給与の 50.1%がもらえるってこと」ですね。

そもそも 30年後なんて、当の現役世代がその額で食べていけてるのかさえ不安なのに、年金がその何%なんて数字にどういう意味があるのか、よくわかりません。


次は時事ドットコムの記事。

厚生労働省は26日、公的年金の世代間格差に関する試算をまとめた。

厚生年金で、来年70歳となるモデル世帯(40年加入、妻が専業主婦)の場合、支払った保険料の6.5倍の年金を受け取れるが、来年30歳となる1980年代以降生まれは2.3倍にとどまり、後の世代になるほど負担割合が高くなる実態が浮き彫りとなった。

こういう比較もよくされるのですが、私にはこれもよくわからない。

来年70歳になる人ってのは、戦争前に生まれてます。公共設備も制度もなにもないものすごく貧しい日本で育ってきたわけで、年金として払ってきた額が少ないのだって当たり前。だから受取額との倍率が6.5倍と大きくなる。

一方で1980年代以降生まれの人は、生まれた時が一番豊かな時代。払う額が大きくなるのは当然。それでも受取額がその2.3倍もあるってんだから、十分割に合う制度なのでは?

厚生労働省が “若い世代は負担が重い”言いたがるのは「世代対立を煽りたいから」だよね。

理由は「高齢者は貰いすぎだ!」という世論を高めるため。

そうすれば、年金の支払い額を抑制することができる。つまり、高齢者への年金支払いを抑制するのが彼らが世代対立を煽る理由です。


厚生労働省って、大事な年金をグリーンピアなんていう訳わかんないプロジェクトに注ぎ込み、ド素人な運用で大損するなど、既にものすごい額の年金を無駄にしてる。

年金支払い事務が「台帳に手書き記入」の時代なんて、窓口で支払われた年金を自分の財布にいれて横領してる人もたくさんいたと言われてる。

でも、「年金が破綻してるのはグリンピアのせいじゃないですよ。自分達の不手際のせいでもネコババのせいでもないですよ。年金がもたないのは高齢者が貰いすぎだからですよ」ってことにすれば、世間の批判をかわせるからね。

★★★

加えて彼らが発表する試算は、そのほとんどが“相対比較”です。

たとえば“現役の給与額 対 年金額”、“70歳の人対30歳の人”、”専業主婦の場合と働いてる女性“などなど。

あれだって「専業主婦がすごく得してる」みたいにいうことで、「払ってない専業主婦のせいで年金制度が破綻する」と思わせ、

「専業主婦からも年金を徴収するべきだ!」という世論を高めたいからでしょ。

つまり、世代や立場の違うグループの人を比較して、誰が得してる、損してるって話にもっていけば、得してる人を引きずりおろしてコストカットができる。

もしくは得してると言われてるグループから徴収できる額がもっと増やせるってことです。

★★★

年金に関して本当にみんなが知りたいのは、「仕事ができなくなった後、年金で生活できるのか、できないのか」ってことです。

そしてその答えは下記

(1) 年金だけで食べていくのは不可能

(2) 年金はお小遣いと考え、生活費は自分で貯めておく必要がある


大事なのは「年金だけで食べていけるなんてことはありえない」のだと理解すること。

すべての人は、引退後から死ぬまでの生活費を働いている間に貯金しておく必要があるんです。

家を確保した上で、65歳から80歳までの15年分。(家賃をのぞく生活費で)月に15万円でも15年分で2700万円。

つまり「誰と比べて得・損」という相対比較ではなく、「いくら自分で貯めておくのか」という絶対基準のほうがよっぽど大事なことなのです。