「公務員は安定してる」ってのはもう嘘だよね、というお話。
まず、公務員の給与の原資について考えましょう。
公務員の給与の原資は税金です。結論を先に言えば、これはもう増えません。
増えるわけないでしょ。まず人口が減る。稼ぐ人が減るんだから税金総額はふつーに減ります。
人数は減っても、ひとりひとりがもっと稼ぐようになると思う?
もはや給与がどんどん上がる高度経済成長時代でないことは皆わかってるはず。
じゃあ、税率が上げられる?
今でも租税公課の負担率は 50%、このまま行くと 60%まで増えると政府は予想してます。
それ以上にどんどんどんどん税率を上げるなんて可能かな?
消費税は 15%まではあげられるけど、30%にするのは無理でしょう。(そんな政党、さすがに政権党ではいられない)
税金総額、すなわち「公務員の給与の源泉」=「税金払う人数」×「一人の所得」×「税率」です。
どれも、もう自然に上がっていったりはしない。公務員の給与の源泉である税金は、もはや増えたりはしないんです。
だから今後は、収入側ではなく、支出側をコントロールしようという動きがより強まります。
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では支出側について考えてみましょう。
どこかを切ろうという話になった時、どこにしわ寄せがきそう?
政府支出で大きなものはいくつかありますが、まずは社会保障費です。これが全体の 4分の 1を占めています。
社会保障といえば年金や医療保険などですね。生活保護や障害者福祉、高齢者福祉にも使われてます。
これ減らせますかね?
今後も高齢者は増え続けます。高齢者が増えれば病気の人も必ず増えます。そして、年金も医療費も生活保護費(これも65歳以上の人と母子家庭が中心)も自動的に増えていきます。
今、日本の人口の 12人に一人は 90歳以上だそうです・・・60歳から年金もらって 30年もらい続けるんだよ。しかもその一部は国庫から出ているのです。
こんだけ高齢化が「確定」してる国で、社会福祉費が下がるとは思えません。
もうひとつ、現在おおきい支出は、全体の 5分の 1を占める借金返済費です。
これは自由に減らせる部分ではありません。過去の借金の返済ですからね。
これ、減るどころかいまでも借金は毎年増えてます。
もう一つ、大きな支出は地方交付金です。
国から県や市町村に渡すお金ですね。これ、結局は地方自治体が、国と同じように使っています。
つまり、社会保障や(地方の)借金返済に使われています。上と同じです。だから減りません、
ここまでの 3つで、国の支出の 65%を占めています。
つまり、「支出のうち 65%は固定的なので減らせない。それどころか、基本的には自然に少しずつ、そして、どこかでどかんと増えていく」んです。
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では残りの 35%の支出は? 削れるの?
残りは公共事業費、文教費、科学技術振興費、防衛費などです。
基本的には、ここを圧縮していくことになります。
公共事業費は今でもどんどん減ってますがもっと減るでしょう。
文教費だって、子どもの数が減るんだから減らすよね。国立大学が疑似民営化されたのも、ここの予算を小さくするためですよね。
科学技術振興費が減れば、研究系のさまざまな公団や財団も解散することになります。
防衛費は?
これはちょっと減りそうにないですね。まあ急に増えることもないでしょう(つーか、そんなお金ありません。)
とひとつずつ考えてきましたが、実はどの部分が一番おおきく削減されるか、という話は論点ではないのです。
だってどれが減っても、公務員の必要数は減っていくから。
公共事業といえば、ゼネコンとか思う人も多いですが、公共事業が減れば、それに関わっている多くの公務員の仕事がなくなります。
ゼネコンも減るけど、県や市の「建設課」とか「土木課」とかいうところも人が要らなくなるんです。
文教費が減れば、先生という名称の公務員が減ります。科学技術費が経れば、国の研究所で雇われている公務員や技術者が減ります。
防衛費を減らせば、自衛隊員が減ります。
どこが削減されようと公務員減るんです。
いや、公務員の解雇はできないはずだって?
そうですね。だから全員の給与を下げるか、新規採用を絞って非正規雇用(いつでも首にできるアルバイト)を増やすんでしょう。
そうすれば正規の公務員はめっちゃ忙しくなるはずです。今までと同じ給与で。
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地方の財政のこの部分(減らさざるを得ない 35%にあたる部分:割合は少し違います)は、県警などの警察、市営バスだの市営地下鉄だののいろんな地方事業に当たっています。
地方主導の公共事業もありますね。
これも同じで、どの項目が減るかはあまり重要ではありません。どこであれ、とにかく減らせるところはこの 35%部分しか無いんです。
そしてどれが減っても公務員は減ります。
バス運転手なのか警察官なのか知りませんけど。数を減らしたくない、首切りしない、なら、全員の給与減らすことになる、ってのも国レベルと同じです。
というわけで、最後の結論。「ここが減る以外に道はない、という部分は、何が減っても公務員の給与総額(人数か一人当たりの給与か)が減る方向に行きます」ってことです。
★★★
これが論理的帰結です。
ただし、世の中は論理的には動きません。
特に短期的には全く論理的ではありません。だからみんな呑気です。未だに「公務員安定してる神話」がまかり通ってます。
論理的には成り立ち得ないことが、信じられてます。
が、
世の中の大半のことは、長期的には必ず論理的な帰結に近づきます。ごまかしが通用するのは短期的な話であって、長期的には通用しないんです。
どこかで破綻します。
今 50歳の人はセーフです。30歳未満の人はアウトです。
どこまで悪あがきを続けられるか、という「時間の問題」です。
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ずっと前のブログで、「戦後の思想史は、左が消えていく歴史」と書きました。
公務員について言えば、「高度成長終焉後の歴史は、公務員が減っていく歴史」です。
日本航空も国鉄も電電公社も、昔は(準)公務員です。国立大学の先生もです。
ここ数年めちゃくちゃ増えている市町村大合併とは、地方自治体(市役所、町役場、村役場)の公務員を減らす動きです。
地方にお住まいの方、国立や公立病院だって、閉鎖が増えていることをご存じでしょう。
同じ流れで、郵便局なんて公務員のまま置いておくことはもはやできない。最後の巨大な(準)公務員団体だよね。
郵便局が終わったら次は各種の公的金融機関が狙われるでしょう。
彼らは次に自分たちがターゲットになるとよーくわかっているんで、世の中が郵政公社の話でもめている今の間に! とすごい勢いで「守りの屁理屈」を詰めつつあります。
大変だわ、そんなくだらない仕事のためにすごい残業させられてる人たち・・・
そして、まだまだ他にも民営化が進み、公務員が減らされる分野があります。
アメリカでは、刑務所もゴミ収集も民間に委託されてます。
そして数を減らすのが限界に達したら、今度は給与水準の方に削減目標が置かれます。
既に、地方公務員の給与が高すぎるという話や、無駄な支出についての批判がどんどん明るみにでています。
まっいずれにせよ、どっちも起こるでしょう。数も減るけど、一人当たりの給与も減ります。
これまでは首切りがないから公務員になったって人が多いけど、じゃあ、みんなで我慢しましょうという話になるでしょう。これが、次の 30年のトレンドです。
というわけで、今 30歳未満の人は、公務員なんか目指してちゃいけません。
もはや公務員は、安定している職でも給与のいい仕事でもあり得ません。
民間の場合、どの会社がこれから伸びて、どの会社がこれからダメになるか、見分けるのはとても難しいです。
でも、公務員という職業に将来性の無いことは、かなり明白です。