「再分配」の仕組み

所得格差や貧困率について語る際、「再分配前か、後か」という区別があります。

「再分配」とは、税や社会保障などによって所得の偏りを是正する仕組みです。

高所得の人はより多くの税金や社会保障費を払うので、実質的な可処分所得が減ります。一方、所得の低い人は税金や社会保障費をあまり払わず、生活保護や各種手当てを受け取ります。

このように税や社会保障を通して、お金をたくさん持っている人から余り持っていない人に移転させるのが「再分配の仕組み」です。


たとえ一部の人の収入が突出して高く、再分配前の貧困率が高くても、再分配後の貧困率が低ければ実質的な格差はありません。そういう社会は、税や社会保障など再分配の仕組みが巧く機能していると言えます。

「再分配の仕組み」といえば、普通は税制と社会保障制度を指します。しかし社会には「非公式な再分配の仕組み」もたくさんあります。今日はそれらの「隠れた再分配の仕組み」を非合法なものも含め、リストアップしてみます。


(1) じじばば再分配=裕福な祖父母が孫にお小遣いをあたえ、娘や息子には住宅取得費を補助、さらに日常的にお米や野菜を送るなど生活費用を援助して、世代間で所得が移転する仕組み


(2) オレオレ再分配=オレオレ詐欺により、何千万円も貯めている高齢者から、「や」の人、そして「や」の人に雇われた貧しい若者達(もしくは失業者、多重債務者)に所得が移転する仕組み


(3) キャバクラ再分配=実力以上の給与を受け取っているオヤジから、キャバクラ嬢や、(キャバ嬢経由)でホストの若者など、若い世代に所得が移転する仕組み


(4) 税金対策再分配=税金対策のためにほとんど使わない別荘やヨット、高級車を買う開業医、歯医者、中小企業のオヤジのお金が、別荘販売会社や外車販売会社などでノルマに追われる営業マンの給与として移転する仕組み


(5) パラサイト再分配=終身雇用制度の下、ツツガナク資産形成してきた親世代が、ニートやヒッキー、もしくは非正規で働く低所得労働者の息子や娘を、40代、50代まで同居させて養うことによる実質的な所得移転の仕組み


(6) 投信&変額年金再分配=数千万円もの退職金をもらえる大企業勤めや公務員の団塊世代が、退職金で投信や変額年金に投資して大損し、投信販売ノルマに追われる若い世代にそれらの販売手数料を稼がせる所得移転の仕組み(「リフォーム再分配」とか「シロアリ再分配」も類似商品)


とりあえず思いつくのはこんな感じですが、水が高きから低きに流れるように、これからも多くの「非公式再分配の仕組み」がでてくることでしょう。

なお、道を歩いている高齢者のかばんを若者がひったくることを「ひったくり再分配」という人もいますが、これは再分配ではありません。再分配とはお金が「富者から貧者」に移動することです。ひったくりについては、多くが「貧から貧」への資金移転なので再分配の仕組みとはいえないのです。



そんじゃーね。


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