新元号が楽しみ

いよいよ来週には新元号の発表ですね。

昨年末、85歳のお誕生日に天皇陛下は、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵しています」と述べられました。

陛下はご自身も疎開を経験され、多くの人が「天皇陛下、万歳!」と叫んで玉砕していった戦争を幼少期に見聞きされているし、父である昭和天皇が終戦の詔勅を出されているわけだから、

自らの時代=「平成」を「戦争のない時代」とできたことに深く安堵されるお気持ちはよくわかります。


一方、戦争を知らない私のような世代にとってみれば、「戦争がなかっただけ」で、ひとつの時代が高く評価されること自体に、違和感も感じます。

高度成長期に教育を受け、バブル時代に社会にでた世代としては、「平成」は日本がまさに地盤沈下していった時代であり、「右肩下がり」の時代でした。

昭和の終わり、世界第二位の経済大国だった日本は、平成の終わりには世界で 20番目くらいの国となりました。

昭和の終わり、海外に行けば、空港から街までの道路沿いには数多くの日本企業の看板が目に入りましたが、

平成の終わり、先月訪れた国では、空港から街まで一直線に敷かれた大きな橋が中国の援助で作られており、中国語でデカデカと「これは中国との友好橋である」と書かれていました。

世界市場を席巻していた日本企業がどんどん「世界の一流企業」から脱落する一方、国内では格差が広がり、生きづらいと感じる人が大量に生み出されています。

あわせて保守という名の内向きかつ偏狭な愛国主義が幅を利かせ、ヘイトやバッシングも珍しくなくなりました。

みんな余裕がなくなり、「大丈夫なのかね、この国」みたいになってしまった。


それが「平成」だと考えれば、「できれば次の時代は、戦争がないだけで満足する時代にはなってほしくない」とも思います。

戦争の悲惨さを知らないからそんなことが言えるのだという指摘もよくわかるし、「戦争がなかっただけ」で、ここまで安堵されるくらい「戦争のあった昭和」が悲惨な、後悔に満ちた時代だったのだということもあらためて理解するけれど。

★★★

次の元号はもう決まっているのでしょうか?

新元号は漢文学や日本文学などの研究者(複数の有識者)がいくつかの候補を挙げ、その中から、各界の代表や国民の代表たる国会議員(衆参議長など?)が意見を述べ、最終的には閣議決定されて決まるとされています。

元号選定に意見を述べる「有識者」に関してもあれこれ名前が取りざたされていますが、ぶっちゃけそれ以外にも、元号選定に関わってる人はいるんじゃないでしょうか?

だってさ。

「平成」とは「内外、天地とも平和が達成される」という意味で、他にふたつの候補があり、計 3案の中から選ばれたというのですが、その際、今の天皇陛下の意向がまったく反映されてないと思います?

陛下の「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵しています」というお言葉を聞いたとき、ちきりんはごく自然に「そうか。そういう思いでこの元号を選ばれたのね」と思ってしまいました。

形式的・公式には、陛下(新天皇)が元号選定に関わられることはありません。

前回も今回も。

でも、ほんとにそう思う?


現在、天皇にとって元号とは、「自分の時代の名前」なわけです。

それを、「有識者と国民の代表と内閣メンバー」だけでほんとに選んでる?

で、新天皇はすべて決まった後に新元号を教えられ、「ああそうですか」って受け入れてると、みんな信じてる?


次の元号が何になるのか。

私はけっこう興味があります。

なぜなら、

それこそが新天皇の、最初の意思表明だと思えるから。

自分の時代をどんな時代にされたいと思うのか。そのお気持ちが込められるだろうと思うから。


とはいえ候補を出すのは学者であり、それを絞り込むのは時の政権なので、「もう中国古典からは抽出しない」という時代の色(安倍政権の意向)を反映した候補しか上がってこない可能性もあります。

まさかとは思うけど元号が「桜(さくら)」とかになり、5月から「桜元年」になったりしたら、ビビります。

(てか、たとえ漢字 2文字熟語の音読みであったとしても、出典が中国古典でなく日本の古書になるだけでも政治の影響が感じられて衝撃的)

★★★

年齢によるご譲位が可能になった今、
・今上天皇のご譲位時のご年齢= 85歳が踏襲されるとしたら、
・現皇太子が 85歳になられるのは 25年後
・秋篠宮殿下が 85歳になられるのはその 5年後なんで

既にいい年になってるあたしでさえ、平均余命まで生きれば、あと 2回の元号変更を経験することになります。

秋篠宮様が代替わりに伴う様々な儀式について「天皇家の私的行事として質素に行うべき」と主張されているのは、

ご自身の代が極めて短期間になるかもしれず、たった 5年のために多大な費用をかけて大がかりな儀式を繰り返すことのないよう、今から伏線をはってらっしゃるのではないでしょうか。

いずれにせよ、私より若い人達の多くは、今後、「平成」「平成の次」「その次」「さらにその次」の時代を生きていくことになります。

元号なんて実務的には面倒なだけだけれど、それぞれの時代がどんな時代になってほしいと思うのか、ひとりひとりがちょっとだけ考えてみてもいいのかもしれません。


新元号の発表が楽しみ。

東京オリンピックのエンブレムみたいに、いったん決まってから問題が発覚し、仕切り直しになったりしませんよーに。


そんじゃーね。

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