上野の森美術館で「モネ展」をやっていたので観てきました。
こじんまりした美術館なので1時間くらいの鑑賞。
かなり混んでましたね。あいかわらず印象派は人気です。
★★★
私がクロード・モネの絵に最初に感動したのは、20代の頃、パリで「ルーアンの大聖堂」の連作を観たときでした。
→ ルーアンの大聖堂 モネ - Google 検索
衝撃が強すぎて数十分、絵の前から動けなくなったのを覚えています。
(私にはそういうふうになる絵がごくたまーにあります)
その後、パリ郊外にあるルーアンにも二泊の旅行に行ってきました。
あの大聖堂は確かにマジですごい。
↓
デカすぎて、画角に収まらない・・・(ルーアンにて@2019)
(※ただし、今回のモネ展にはルーアンの大聖堂の絵は展示されていません)
★★★
これに限らず、モネは「連作の画家」と呼ばれており、まったく同じ風景を、朝、昼、夜、春夏秋冬、晴天、曇天、雨の日など、さまざまな条件のもとで描いています。
この「同じ対象物を、時間の経緯に沿って描き分ける」のって、ビデオの無かった時代に動画を残そうとした行為なんだと(私は)理解しています。
朝陽のなかの大聖堂、昼間の太陽の下の大聖堂、夕暮れの中の大聖堂・・・
動画であればカメラを設置して放置すれば、その移ろいをすべて記録できる。
でも、絵に残すしか手段がなかった時代、「連作」とは、(パラパラ漫画的な)動画記録の試みだったんじゃないかと。
★★★
今日のモネ展では、サロン(当時のパリの公的な展覧会)でなかなか入選できなくなったモネが、自分たちで販路を切り拓くべく、印象派の会を創設した、というような説明がありました。
モネのような画家でさえ、生きている間は、経済的に苦しいことも多かったようです。
その後もパトロンのお金持ちが破産するなど苦労が続きますが、晩年はパリ郊外のジヴェルニーに広大な土地を購入し、「花の庭」と「池の庭」を併設。
この池が有名な睡蓮の絵の舞台となっています。
★★★
実は私、今年の5月にこのジヴェルニーを訪れています。
パリまでは何度も行っていたのに、なかなか足が伸ばせず、ようやく訪れることができました。
以下はその時に撮った写真です。
ジヴェルニーにあるモネのお家
とてもかわいいお部屋ばかり
彼が好きだった浮世絵コレクションも多数飾られてて、
お庭には竹林あり、
有名な睡蓮の池あり、
本当にすてき。
近くには、お墓のある教会や
印象派の美術館もあり、こちらの展示もとても充実しています。
街にはこじゃれたカフェも多いので、パリからのツアーじゃなく、自分で電車で行って、ゆっくり過ごすのがお勧めです。
★★★
今回のモネ展で考えたもうひとつのコトは、「アーティストってイノベーターなんだな」ってこと。
スマホ(写真)も動画もない時代、目の前の風景を「絵」に描いて記録しようと思ったら、
おそらくもっとも難しかったのが「光の違いをどう表現するか」だったんじゃないかと。
朝陽、昼間の強烈な日差し、夕暮れの薄ぼんやりした光、それらをどう描き分けるのか。
その手法を見いだすため、さまざまな描写方法を試行錯誤する。
これってまさにイノベーターの仕事ですよね。
科学技術のない時代のイノベーションとは、アーティストによって試みられていたんだなと。
光同様、絵に残すのが難しいのが「揺らぎ」でしょうか。
海の波、池の水面、風が吹き付ける様子をどう表現すれば他の人に伝えられるのか。
多くの画家たちが様々な試行錯誤をしながら、新しい表現方法を見いだしていく。
画家って「絵が上手な人」なんかではなく、「カメラもビデオもない時代に、光や揺らぎを記録する方法を見いだすため、あらゆる手法を考案し、実際に試みてみたイノベーターだったんだ」
そう強く印象つけられた今日のモネ展でした。
以上、記録まで。