給食費不払い問題とは

給食代を払わない親がたくさんいるというニュースが多い。とても「嬉しそうに」いろんなニュースが報道してる。見ていて、なんで、そんなに嬉しそうなんだ?って思った。まるで「ほらみろ、世の中は崩壊しているのだ」と報道するのが嬉しいみたい。「そんな馬鹿な親がいるのだ」と報道するのが嬉しいみたい。マスコミってほんと変だ。


滞納費22億円という額がとてもセンセーショナルなのだが、何人分なのか、何年分なのかも報道されず、親全体の中でそういう親が何%いるのかも報道しない。しかもこの中には“払えない人”も含まれている。これじゃあ何の判断もできない。

払わない人の方の理由が「義務教育なんだから払う必要ない」とか「払わなくても食べさせてもらえるので、払う意味がない」とか「そもそもカリキュラムの一部だろ」という感じらしい。

これを「とんでもない(非常識な)親である」と糾弾するむきが多いようなのだが、ちきりん的には「一理あるんでないの?」という気もする。


ちとまとめてみましょう。

「公立の義務教育課程で、何は税金でまかない、何は親が負担するのか?」


<A.税金でまかなうもの>
1.授業料
2.教科書代


<B.親が負担するもの>
3.制服代(私服の学校も多そうだが)
4.給食代
5.修学旅行代
6.副教材費(リコーダー代、習字道具とか絵の具とか本代、体操服、内履き、スクール水着などなど)
7.クラブ活動代(野球、サッカー、その他)
8.PTA会費、子供会?の会費、イベント代(学芸会の一部費用とか)


この税金でまかなうものと親が負担するものの差はなんだ?というのが、ちきりんはよくわからない。これ、親が負担するものって結構な額になりませんか?子供が3人いたら、相当な額だと思うんだが。

だいいち給食は食育だって言ってるじゃん。なら国が払うべきでは?「習字」なんて時間を作っておいて、筆も墨も個人で買えって変じゃない?「体育で泳ぐ練習」するのに、水着は親の負担って何さ?って気もする。

少子化が問題問題と騒ぐ割には、子育てにお金ださない国だよね。育児手当なんかでは副教材も買えませんって額なわけでしょ。変な国だよ。


ちきりんはずっと公立校育ちなのだが、特に中学の時に「非常に幅広い層の家庭」の人たちがいたんだよね。で、その中には教育に全く理解のない親御さんもいて、そういう人は多分給食費も払ってなかったと思う。

でも生徒は給食食べてました。教育的配慮っつーか、食べさせないわけにはいかない。でも、先生には何度も「給食費もらってこい」って言われてた。それを見て、ちきりんは「なんでこんなかわいそうなことをするんだ、親は?」って思った。

もっと衝撃的だったのは、彼が修学旅行に行かなかったことだ。親が修学旅行費を払わなかったからだ。先生は家庭訪問もして「出してやってくれ、こればかりはつれていけない。子供がかわいそうだ」って説得してた。

でも親は「そんな金ねえよ」って感じだったらしい。(ちなみに親御さんの職業はカタギではない世界の方です)お金はもちろんあります。出さないんです、意思として。

息子の修学旅行代なんて、このお父さんの一ヶ月の酒代の半分以下だったろう。でも「無駄な金はださん主義だ」と。

先生は、先生と他の親御さんの間で寄付を募ってつれていこうかとか検討したみたいだけど、そういう親の多いエリアだから、そんな前例を作ってもということでやめたみたい。それ、つまり「やーさんに補助」ってことだからね。

そして彼は修学旅行に行かなかった。


実はちきりんは、彼がお父さんに「おやじ、金払てくれよ」って頼んでるのを見てしまった。彼は泣いてた。すごい威張ってる子だったのに。中学生なのに酒も煙草もやるし、「昨晩の性的な体験」についてえらそーに語ってるような子だったんだよ。

背丈も大きくて先生も(親のこともあるし)あまりタッチできないような子だった。いわゆる不良だし、不良の親分です。

その子が「金出してクレよ。修学旅行行かしてくれよ」って、泣きながら頼み込んでた。でも親は麻雀の牌から目も離さなかった。しらん、って感じだった。


その時、ちきりんは思ったよ。「なんで修学旅行代なんて親に出させるんだ?」って。

「義務教育って、親がどうであれ、家庭がどうであれ、この9年間だけは、すべての子供にきちんとした最低限の教育を受けさせますよ」という私たちの社会の意思ではないのか?


私立でも高校でもない。公立の中学校だよ。必要なものは全部、国がだせよ!って思うんだけどね。

ちなみに彼は高校にももちろん進学していない。高校は義務教育ではないからだ。親と同じ職業以外の選択肢は彼にはなかったと思う。(実際そうなった。)


義務教育とは、最低限の、この国の未来への投資だ。

★★★

今回の給食費も考えてみて欲しい。親は自分なりの信念があったり、モラルがなかったり、様々な理由で払わないと決めているのだろう。でも、おそらくその親の子供達は、学校でとても悲しい思いをしていると思う。

先生に「親に頼んでこい」「もらってこい」とずうっと言われながら9年間過ごすのだ。

かわいそうすぎない??彼らは、彼女らは、毎日美味しく給食を食べていると思いますか??高学年にもなれば、親を通じて友達さえ知っているんだよ。「○○ちゃんって、給食費払ってないんだよね。」って。

9年間、何も憂い無く給食を楽しんだ人たちにはわからないだろう。どんな気持ちでこの子供達が毎日給食時間をむかえているのか。


自分の子供にこういう思いをさせても全く平気な親は一定数いる。スーパーで万引きする手伝いを自分の子供にさせたり、男をつれこんでいる間に子供を家から追い出したり、パチンコするために炎天下の車に子供を放置するような親も、いくらモラルを叫ぼうと、一定数は必ず存在する。

でも、その子供達にはなんの罪もない。


だからこそ、義務教育があるんでないの?

だからこそ公立校があるんじゃないのか?と。

だからこそ、私たちは義務教育に税金を投入すると決めているはずなのに、なんでこんな中途半端なんだ?って思う。


マスコミは「親のモラル」ばっかり責めているのだが、そういう問題か?って気がする。


そんじゃあね。