最近、あちこちの食品会社のでたらめさが報道されますが、これって「内部告発」ですよね。昔はほとんどなかった内部告発が、最近はすごく増えているんだと思います。
いったい誰が告発するのか?
正社員で、告発の時点でまだ働いている人、これからも定年まで勤めようと思っている人は告発しませんよね。下手すると会社潰れちゃうわけですから。
つまり告発しているのは、辞めた社員なんです。正社員もいるだろうけど、派遣社員など含めてね。
で、なんで内部告発が増えているか、明らかだよね。そのメーカーに頭にきたっ!って人が増えているのですよ。労働力として使い捨てにされたことにたいして。
かなり構造的だと思う。
まずふたつの不正がありうる。
(1)材料や賞味期限をごまかす。衛生管理にコストをかけない、など
(2)労働力にコストをかけない。
このふたつ、やってる会社はどちらもやる。材料や賞味期限をごまかしてるけど、働いている労働者の給与はたっぷり払います、なんて会社は存在しない。
(1)の不正をやっている会社の大半は、労働者からも搾取しまくり、無茶な働き方をさせた上で解雇して・・・みたいなことを、かなりの確率でやっている。これ、構造的に「内部告発者育成コース」が内臓されてる会社みたいなもんです。一方で不正をやり、一方でその不正を告発するに躊躇しない人を内部にどんどん輩出している、ということ。
なので内部告発って今後もどんどん増えると思う。
★★★
そもそも昔は野菜に産地表示なんかなかったよね。当時から野菜のすべてが国産だったわけではない。しかし表示なんかなかった。単に100円の椎茸と300円の椎茸があるわけ。で、消費者は思った。「なんで同じ椎茸が3倍も値段が高いのだ?」と。その理由は「安いのは中国産だから」と説明された。この「中国産だから」という言葉を、“誰かが勝手に”
A) 中国産だ→中国は人件費が安い→だから椎茸が安くできる
と考えた。
しかし、可能性としては別の可能性もあった。
B) 中国産だ→日本で禁止されてる農薬が使えるから生産性が高い→だから椎茸が安くできる。
という可能性。そして、実はこっちだったと。(もしくは、こっちも理由の一つだった。)
消費者がBの可能性を考えず、Aの可能性をすんなり信じてしまった理由はなんでしょう?
理由は簡単。皆こー思っているのだ。「日本産のものも昔は安かった。だって、日本の人件費は当時安かったから」と。それとダブらせて考えてるんだよね。
でもそれも嘘だよね。日本の人件費が安く、日本産品が世界に「格安品」としてどんどん輸出されていた頃、日本産のものが安い理由は必ずしも人件費だけであったわけでもないと思うよ。今の中国産の問題と同じように、品質にも問題ありのものがたくさん混じっていたと思う。流れ出しやすい鉛とか有害物質の使用とか。
では、この「発展途上国の商品が安いのは、その国の人件費が安いからである。」という言葉が、無批判に広く信じられているのはなんで?
この理由、ちきりんは「あまりにも単純化された経済モデルの問題」だと思うのよね。つまり「原価=人件費と材料費」だ、とか「人・もの・金」とか。
「モノは、材料を加工すればできる」という欠陥単純化モデルが、価格競争の原因だし、危ない商品を市場に溢れさせてしまっている理由だと思う。
「中国のモノが安いのは、中国の物価が安いからだ」という嘘を、
「昔の日本のモノが安かったのは、日本の物価が安かったからだ」という嘘を、
私たちはどこで信じるようになったのか。
本当は、
「物価が安い」
=「人件費も安い」
=「人の値段が安い」
=「人の価値が低い」
=「人に害のあるモノが商品に含まれていても、たいした問題じゃない」社会でつくられたから、安いのだ。
ってことなんだよね。
じゃね。