目標は低くもちましょう!

ちきりんはとても目標が低い人間です。今までの人生において“達成が不可能なこと”を目標に掲げたことはありません。“達成が困難なこと”や“多大な努力が必要なこと”を目標にしたこともほとんどありません。

それは“多くをあきらめてきた”ということではなく、そんな苦労をしてまで達成したいことが特になかったからです。

「宝くじが当たったら何を買う?」というようなくだらない妄想にはよく浸りますが、だからといってお金を稼ぐために必死で努力したいとは思いません。手の届く範囲で暮らせれば十分です。


また、個人としてだけではなく、自分の国である日本の将来に関しても大きな期待はしていません。だから日本の将来についても極めて楽観的です。

皆さんの中には“国を憂うちきりん”というイメージをお持ちの方があるかもしれませんが、それは誤解です。ちきりんは日本が大好きな上に、日本の将来にもとても楽観的なのです。なぜなら過大な期待がないからです。

日本の将来に悲観的な人の多くはそそもそも“期待値が大きい”んですよね。たとえばそういう人達は「世界第2位の経済大国である日本」を維持したいと思っているのではないでしょうか。もしくは、「国際社会でリーダーシップを発揮し、諸外国から尊敬される日本」を夢想しているのかもしれません。

確かにそんな高い目標を掲げたら悲観的にならざるをえないでしょう。だってこんな体たらくの国では、そんな目標はとても実現不可能ですから。でもちきりん的にいえば、そもそもそんな高みを目指す必要は全くありません。

世界には200もの国があります。その中で、なぜトップ2を目指す必要があるのか、全く理解できません。トップ2位とは、トップ1%に入るという意味です。みなさん今まで自分の人生において、トップ1%に入ることを目指したことがありますか?

500人の高校で、勉強でも運動でもいいですが「俺はトップ5人に入る!」などと思っていたでしょうか。たいていの人はそんな希望をもったことはないでしょう。もちろんちきりんもそんな高い目標をもったことはありません。


世界第2位でいたいとか、世界でリーダーポジションを獲得したいとか、分不相応なことを考えるから「日本はこのままじゃだめだ!」という話になるんです。

歴史を振り返っても、分不相応な考えをもって、西欧列強と同じように植民地を持ちたい!などと過大な夢を見たからボコボコにされたのです。歴史から学び、過大な夢をもたないようにするのがなによりです。


ちきりんとしては、日本は「ぼちぼちやっていければいいんじゃないか?」と感じています。既にひとりあたりGDPはこちらのデータによると世界で23位です。為替レートによる変動を考慮に入れても今の日本の経済的な豊かさは世界ではせいぜい15〜25位でしょう。

一方GDPの総額では、アメリカが1位で日本は長らく2位でしたが今年はいよいよ中国に抜かれるようです。また、中国に抜かれた後に日本は3位を維持できるかといえば、他にもインドやロシアのような人口の多い国や資源国が控えていますから、そのうち世界で6位くらいになっても不思議ではありません。

でも、200カ国のうちの6位なら十分じゃないでしょうか?ちきりん的にはトップ5%の10位以内くらいであればなんの不満もありません。


また「アジアで一番」の地位を中国に譲り、「日本がアジアで2番目の経済大国」になることを「悲しい」と思う人もいるようです。けれどよく考えてみて下さい。経済規模の絶対額で、人口1億人の国が13億人の国に勝てたりするほうがおかしいのです。負けて当たり前だと考えるべきです。

今でこそ野球のWBC(ワールドベースボールクラッシク)も日本が優勝しています。しかし「日本チームにはイチローはひとり」しかいませんが、同じ確率でああいう人が出現すれば、将来の中国チームは「補欠まで含め、13人のイチローがいる」という感じになるでしょう。

せいぜい今のうちに勝っておいて、全然勝てなくなった将来には「あの頃はよかったのう」とか言って縁側でお茶でも飲んでればよいのです。


実際、数百年単位でみても1位や2位が“たとえ一時期でも”張れる国というのは限られています。無敵艦隊スペインとか、大英帝国とか、ローマ帝国など、ある時代は栄華を極め世界のトップにあった国が、数百年後に“6〜10位あたり”に落ち着くというのは、悪くないんです。

日本も次はそのあたりでいいではないですか。「自分が生きているあいだに2位を経験できてラッキー!」くらいに考えておけばいいのです。


ちきりんも別に原始時代に戻りたいわけでも、戦後の焼け野原に戻りたいわけでもありません。でもバブル直前の1985年あたりの経済規模まで、戻っても日々の生活がそんなに不便になるとも思えません。

むしろ、糖尿病などの贅沢病も減りそうだし、平均寿命も少し短くなって高齢化問題も少しは緩和されるんじゃないかと思います。


世界のリーダーシップに関しても、アメリカ、中国、ロシアなど、野望の大きな国に任せておけばいいように思います。別に日本がリーダーじゃなくてもいいし、国連常任理事国なんて本当にどうでもよいです。

シリコンバレーを例にとって、「日本人はグローバルに活躍できていない」と言われることもありますが、日本より圧倒的に人口の多いインドネシア人や、同じ先進国であるフランス人やドイツ人は、シリコンバレーで活躍しているんでしょうか?


日本はとにかく目標が高すぎるんです。なぜ「アメリカと互角に!」とか「中国には負けるな!」とかいう話になるのか。

アメリカや中国なんて特別な国なんです。小学校とか中学校にひとりやふたり、そういう同級生がいますよね。やたらと勉強ができて、やたらと運動ができて、いかにもリーダーという感じで生徒会長と委員長と運動部の部長などに常に選ばれる生徒が学年に2,3人いますよね。そういう人に凡人が勝負を挑むのはばかげてます。

というわけで、


気楽にいきましょう。


先日も書いたように、こんなにご飯が美味しい国はなかなかないし、街は安全だし清潔だし規律正しいし。


目標が低いのは楽ちんです。幸せになりたかったら、高い目標を掲げるのはやめましょう。


そんじゃーね!