世界のテレビが見たいです

昨日の朝テレビをつけたらマイケル・ジャクソン氏が急死したと報じられていたので、すぐにCNNにチャンネルを切り替えた。CNNは経済系のニュースの時間だったが、事実上マイケルのニュースばっかりを報じていた。

ちきりんは世界で何か大事件があると、できる限りその国のテレビを見るようにしている。韓国で南大門が火事になった時はKBSを見ていたのだが、当然のことながら日本のテレビ番組よりも圧倒的に“必死”な様相が伝わってきて臨場感があった。ロンドンでのテロの時はBBCを、911の時はCNNやブルンバーグやCNBCなどを含め、世界のニュースをあれこれ見比べていた。

ちきりんが理解できるのは日本語と英語だけなのだが、それでもたとえば韓国の大ニュースを見るにはKBSでみるのが一番だと思う。たとえ言葉が理解できなくても、アナウンサーの語り口や街頭インタビューを受ける人達の興奮度合いから、その事件がその国の人にとってどれくらい大きな事件であるか、ということがビビッドにわかるからだ。

それにテレビニュースは映像も豊富だし、よくわからないながらも“図表”などを使った解説も入っているので、言葉が理解できなくても案外わかったりするものだ。


というわけで、本当は中国の中央電視台(CCTV)や、アルジャジーラ(カタール)、その他の国のテレビ番組も是非視聴したいと思っているのだが、残念ながら視聴するには、かなりのコストがかかる。

ちきりんが今使っているのはスカパー!だ。月に3500円程払えば30以上のチャンネルが見られるようになっていて、CNNやBBCなどの英米のニュースはその中に含まれている。

しかし、中央電視台やブラジルのテレビ番組を見るには、番組ごとに個別に契約し一ヶ月にそれぞれ3000円ほどの視聴料を払う必要がある。これらの番組はおそらく、日本に在住する中国人や日系ブラジル人のために放映されているのであろう。そういう人にとっては「月に3000円払っても視聴したい」番組だというのはよくわかる。だからこういう価格設定なのだ。

また、そういう人の中には日本語がよくわからない人も多いのだから、他の日本語番組とパッケージにしてもあまり意味がない。ので、単独で値付けされてるってことだろう。

こうなると2カ国分の視聴だけでも各3000円で月6000円、年に7万円を超えるわけで、払えないわけではないにしろ「勉強にはお金を使わないこと」をポリシーとしているちきりんとしてはちょっと逡巡する値段。国の数もたかだかしれている。基本的には日本にその国の人が多くなければスカパー!もケーブルテレビも、その国の番組をもってこない。

それに中国のCCTVなども「まあ見たいイベントがあったらその時に申し込めばいいや」と思っていたりするのだが、実際にはこの間の「天安門事件20周年」だって結局見逃した。最初から契約していれば間違いなくあの日はCCTVを一日録画とかしてただろうな、と思うのだけどね。


ちなみに、海外の一定レベル以上のホテルに泊まると、ホテルってのは各国の人が宿泊するから、世界中のテレビ番組が見られるようになっている場合が多い。特に昨今の石油高を受けてアラブ系のチャンネルの充実具合はすごくって、ちきりんなんて「アルジャジーラ」くらいしか知らないのだが、実際には7つも8つもアラブ系の番組が見られるようになっている。(一方で、NHKが見られないホテルも結構あって、世界の中での力関係にがっくりさせられる。)

ああいう海外の一流ホテルみたいに日本国内の普通の家庭でも「テレビをつけたら世界中の番組が見られる」というようにしちゃえばいいのに、と思う。もちろん個人が申し込むのでもいいのだが、ちきりん的極論でいえば、税金で全部ライセンス買って一般チャンネルとして流せばどう?とさえ思ってるくらいだ。

っていうのはね、これ、留学とかに比べても圧倒的に「世界の動き」を学ぶために格安で効果的な方法だと思うから。言葉なんて聞き取れなくていいと思うわけ。小さい頃からテレビで世界中の番組が見られたら、子供の頃にスペインの舞踏や舞台放映にはまって、スペイン語を勉強しちゃう子供とかもでてくるんじゃないの?って気がする。他国の料理&グルメ番組に関心もってその国の料理のシェフになる子供がでてきても不思議じゃないでしょ。

ちきりんは教育に関して、「税金で日本中の全部の子供を最低半年は海外に留学させる」くらいのことをやるべきだと思っているのだが、その構想に比べれば、世界のあちこちの番組をテレビで流す、っていうのはかなり格安だと思う。それに留学だと一カ国しかいけないけど、テレビならあちこちのが見られるわけで。


昔、欧州をふらふらしていた時に、イギリスで毎日テレビがフェンシングの試合を長い時間流していて、それをみたちきりんは「フェンシングの世界大会でもやってるのかな?」と思ってた。そしたらそれはオリンピックだったと後から気がついた。当時の日本ではオリンピックの放映でフェンシングなんて一切流さなかったので、そんな種目があるって知らなかったわけだ。

メキシコに行った時には、たまたま「デノミネーション」を実施するまさにその日に遭遇した。たしか年末に切り替えたのだと思うのだが、1月1日からペソのゼロを4つとってしまう、という。

で、経過措置やおつりがどうなるかとか、便乗値上げがどうとか、旧札は使えないのかとか、そういう説明番組をずうっとテレビが放映していた。教育レベルの高くない人にもわかるように懇切丁寧な解説がなされていたので、スペイン語がおぼつかないちきりんでもなんとか理解できた。「ほぉ〜、デノミってこういうことなんだ!!」という感じだった。

こういう、「世界で何が起きているか」「何がどう世界で報道されているか」ってのを小さい頃からずうっと身近に見て育つって、「小学校からの英語教育」なんかよりよほど日本人を“グローバル”に育てるのに役立つんじゃないの?って思うのだよね。


それに、ひとつの事件を「違う視点から報じる国々」を見るのは、物事を見る時の視点を複眼化してくれる。たとえばアラブの国では、911でNYのビルが崩れ落ちたというニュースを見て「万歳をしている街の人達」の映像が報道されたりしている。嘆き悲しむ欧米のテレビニュースとは対照的だ。

今回のBRICS首脳が初めて集まった会議なんかでもインドや中国やなどの当事者国でさえ報道のされ方が違うんじゃないか、と思うし、当然、それ以外の国と当事国でも報道のされ方が違うだろう。

終戦記念日に、日本のテレビが“耐え難きを耐え・・”と古い声のテープを回して沈痛なセレモニーを映し出す一方で、韓国や中国では「開放記念日」のお祝いの祝典やパレードが報道されてる。英米のテレビは「戦勝記念日」を高らかに祝ってる。そういうのを「あれこれの角度から見られる状態」ってのは、すごく意味のあることなんじゃないのかな、と思ったりするわけだ。


あと、先進国のテレビはそれなりに見られるけど、アジアって近いけどやっぱり圧倒的に情報量が少ない。台湾と香港と中国メインランドがどう違うのか、お互いをどう感じているか、ってことについて、何度これらの国の人に説明して貰ってもちきりんは理解が進まない。

でも、たとえば北京オリンピックを、3国(3地域?)のテレビがどう伝えたのか、伝え方にどんな違いがあったのか、比べてみるのはとても興味深いと思う。あの「花火がCGでした」「女の子は口パクでした」というニュースを彼等がそれぞれどう伝えたのか、そこには何らかニュアンスの違いがあったのか、って是非知りたいところだ。


インドネシアやフィリピンやタイやベトナムって、つまりはどういう国なの??ってのも、案外わかりにくいでしょ。日本では、欧米の情報の方が圧倒的に手に入りやすい状態で、アジアの情報って極めて限られてると思う。これもとってももったいない。

一カ国一チャンネルとまでいかなくても、「アジアチャネル」とかがあって、そこが各国のニュースを24時間でずうっと流してる、みたいなのがあればすごくおもしろいんじゃないかしらん。知らず知らずのうちに相互理解が進むし、お互いの文化や考え方を感じ取れるんじゃないかな、と思ったり。


テレビが見られない場合、グーグルのニュースのまとめページは非常に多くの国をカバーしているので、地震やテロなどが起きるとちきりんはとりあえず当事国のニュースページを見るようにしてる。だけど、やっぱり「知らない国のニュースを、知らない言語で理解する」のはとても難しい。グーグルから写真で選んでひとつの記事を見るくらいはできるが、リンクは言葉が読めないと使えないしね。

その点、映像(+音声)ってのは超パワフル。やっぱり圧倒的に理解しやすいです。じゃあYou Tubeでどうか、っていうと、あれって検索が必要。するとその国の言葉で検索しないとちゃんとしたものが見つからない。

自分で検索したり、検索の工夫ができる“知ってる言語”では、グーグルやYou Tubeは役にたつけど、そもそも言語がわからない場合はテレビみたいに「あっちから」勝手に提示してくれる一方的(受動的?)メディアが圧倒的に便利だと思う。自分で動かなくても何か事件があれば勝手に“緊急ニュース!”に切り替わるわけだし。



・・・などと、ちきりんは強く思っているのだが、でもあんまりこういう話は誰からも聞かないし、実際そうなる気配も全然ないんで、つまりは「世界のテレビが見たい」などというニーズがあるのはちきりんだけ、とは言わないが、少数派なんですかね?


ちきりんはあんまり東京のホテルに泊まらないので知らないのですが、東京だって高級ホテルでは各国のテレビが入るようになってんでしょ?だったらシステム自体は存在してるんだと思うのよね。それをなんとか安く提供してくれる仕組みができたらとても嬉しい。

ただ、この話が実現するとしたらそれはおそらく「テレビ」ではなく、ネット経由になるんだろうな、とは思ってる。その方が圧倒的に安いし、どうせテレビとPCも融合しちゃうかもしれないんで、それでももちろんOKです。大事なのは「安く(できれば無料で)、簡単に(検索とかせずに)、音声付き映像が世界中から波のように大量に、無作為に入ってくるっていう状態」になること。

こういうのが(ネットで実現)できたら、本当に「ネットは世界を変える」っていう気がするし、日本に関して言えば「“違う時代”を生きる日本人がでてくるってこと」だよね、と思う。


まあとにかく、なんとか安く他国のテレビが見られる仕組みができてくれるととっても嬉しいです。


そんじゃーね。