久しぶりにナイスな本に出会ったのでご紹介

- 作者: アドルフ F.V.クニッゲ,服部千佳子
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 単行本
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ドイツの貴族階級に生まれた作家、アドルフ・F・V・クニッゲさんが書いて 1788年 ( 222年前!)に初版がでてるんですが、上記は日本語への翻訳本です。
いわゆる“処世術”的なアドバイスがいくつかの大分類の下に列挙してあります。
見開きの右ページにひとこと、左ページにはそのちょっとした説明が掲載されているという体裁で、アドバイスは全体で 100項目以上あるかな。
字がでかくて読みやすいです。
翻訳なのでイマ一歩日本語がこなれてないところもありますが、アドバイスの内容がなかなかいい感じ。
森鴎外氏もこれを読んで感動して本を書いたんだって。その気持ちはよくわかります。
私はあまり「どうやって人と巧くつきあうか」みたいな本は読まないのですが、この本は(タイトルは“交際術”ですが)どちらかというと「我が身を振り返る」系の話が中心で、とてもツボにはまりました。
ひとつご紹介すると、
成功をみせびらかさない
順風満帆なときも、それをあまり声高に話してはいけません。成功、富、才能を見せびらかすのはやめましょう。自分より優位にたっている人を、文句も言わず、嫉みもせずに受けいられる人はまずいません。
同じ理由で、人にあまり親切にするのも考えものです。とうてい返せない借金をした相手からは逃げようとするのが人間の性なので、寛大すぎる支援者は避けられてしまいます。
また、仲間の目にはあまりよくできた人だと写らないよう気をつけなさい。彼らはあなたに多くを求めるようになり、たった一度要求を断ったなら、たちまちそれまでに受けた数え切れない恩を忘れてしまうでしょう。
ちきりんのツボにはまったのは、この“ぶっちゃけ感”です。
前にも書きましたが、ちきりんは“人間のエゴにまみれた汚さ”が大好きなんです。
聖人君子みたいな人を信じてないし、「あなたが相手のことを親身になって考えれば、必ず相手も・・・」みたいなきれい事系の処世術には全く心動かされません。
この本の内容がおもしろいのは、「所詮、人間なんてこんなもんなんだから」というぶっちゃけ感をベースにアドバイスが組み立てられていること。上記の例でいえば、
「自分より優位にたっている人を、文句も言わず、嫉みもせずに受けいられる人はまずいません」というのもそうだし、「ものすごくお世話になった人、ものすごく助けてもらった人」って、(失礼な話ではあるのだけど)確かになんだか近寄り難くなりますよね。
最後の、ずうっと助けてきたのにたった一回断ったら、というのもまさに真実だと思います。
人間ってのは世話になったことはすぐに忘れるが、何かを断られたことは一生覚えてますから。。
そういう人間の身勝手さを理解した上で、こう振る舞うべきよ、ってのが展開されてて、読んでて笑えるし(恋愛、結婚、離婚についてのアドバイスもかなり笑える)、日頃の我が身を振り返えって反省するきっかけになりました。
ほかにも、
何よりも、たとえば相手があなたに恩義があるとか、何らかの世話になっているとかで、あなたの頼み事を断れない立場にいて、しぶしぶ頼みを聞き入れるしかないとわかっている場合は、どんな頼み事をしてもいけません。
っていうのも、ほんとその通り。それに続く次の文章も笑える。
しかしながら、人は相手が望んでいない親切や、自分が与えることができない奉仕なら大安売りするものです。浪費家は金銭を、能なしは助言を与えたがります。
私も気をつけねば・・。それにしても 200年以上も前に書かれた処世術が参考にできるなんて、人間ってなんて進歩しない生き物なんでしょう。
寝る前にベッド脇で読むとか、トイレで毎日ひとつ読むとか(!?)、身近に置いて定期的に読むとよいかもです。
ただし人にプレゼントするのは、とても嫌みになるので全くお勧めできません。あくまで“自分のために”読む本です。