平成 25 年( 2013 年)の国民生活基礎調査の結果が発表され、既存メディアは子供の貧困率が過去最高になったと(なぜかどのメディアも全く同じことを)報道してますが、この調査、他にもいろいろ興味深いデータが含まれてます。
全体の構成は、以下の4つに別れてます。
1.世帯数と世帯人員数の状況
2.各種世帯の所得等の状況
3.世帯員の健康状況
4.介護の状況
以下、各セクションで「なるほど」と思った箇所を自分用にメモ・・
<セクション1 世帯数と世帯人員>
・日本の総世帯数がいつの間にか 5000万世帯を超え、 5011万になってて驚きました。人口が 1億 2千万人ちょいなのに、世帯数は 5000万を超えてるんですね。
・このうち、高齢者世帯( 65 歳以上)は 23 %を超えてて、昭和 61 年( 1986 年)の 6.3 %から 4 倍近くに増えてるんだけど、
・母子家庭は昭和 61 年も今回も 1.6 %で、比率的には全く増えてないんです。感覚的には母子家庭って急増してるのかと思ってたので意外でした。ちなみに父子家庭は、0.3 %から 0.2 %に減ってます。
・児童のいる世帯が 1208 万世帯っていうのにも、けっこう驚きました。5011 万世帯のうち、24.1 % ( 4軒に 1軒以下)の家しか子供っていないのね。
だから公園で子供の遊ぶ声がウルサイとかいう話になるんだなと思いました。昭和 61 年だと 46.1%の世帯に児童がいたので、「お互い様」感がもっと高かったんでしょう。
・末っ子の年齢別の母親の職業という統計もおもしろかった。末っ子が 15 歳以上でも、働いてない(パートも含め仕事してない)母親は 23 %で、専業主婦ってまだまだ多い。
ただし子供は 15 歳以上でも、介護を担当してる可能性もあるので、必ずしも「優雅な専業主婦生活」とは限りません。
・男性の働いてる率は、(子供・学生と定年後を除き)どの年齢でも 90 %以上ですが、女性は「仕事してる率」が一番高い二十代後半でも 75 %。へー、20 代後半の女子って、4人に一人は働いてないんだ!
<セクション2 世帯の所得>
・世帯の平均所得は 537 万円で、全体の 6 割の世帯が平均以下なんですが、これはなんとも言えません。
高齢化が進むと自然に「収入が少ない世帯」は増えます。でも、高齢者の中には「定年したから収入は低いけど、土地や貯金や株はがっぽり持ってる」人もたくさんいるんで、必ずしも「収入低い世帯=貧困」ではありません。
・世帯所得で目をひくのはやはり母子家庭世帯です。所得は平均で 243 万円しかない。しかもコレ、福祉での給付金を含めた数字なんです。そして一人親世帯(=父子世帯を含む)の貧困率は、54.6 %となんと半分以上!
・実は一人親世帯の貧困率って、昭和 60 年にも 54.5 %なので、ここ 30 年くらい「全く改善していない」んです。この件に関する政府のやる気のなさが如実に表れてますね・・・
・なんでやる気が無いかというと、最初のところで書いたように、高齢世帯は多いし増えてるけど、一人親世帯って少ない上に増えてもいない。おそらく投票率も高くない。つまりは票にならないからでしょう。
・なお、今回の調査時点での貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は 122 万円で、全世帯での「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は 16.1 %
<過去関連エントリ>
「相対的貧困率って、つまり何?」
<セクション3 健康状況>
・病気やけが等で自覚症状のある人のことを「有訴者」って言うんだけど、あたしが驚いたのは、80 歳以上でも、千人中の有訴者は 538 人しかいないってことです。えーーーー! 80 歳を超えても、半分近い人は、なんの自覚症状もないの?? 高齢者、どんだけ元気やねん!?
・でもね。傷病で通院している者(通院者)の割合は、80 歳以上の千人中、734人・・・何ソレ? 有訴者より多いじゃん? 自覚症状のない高血圧や糖尿病で通院してるってことかもしれないけど、有訴者より通院者のほうが 20 %も多いってちょっと微妙よね。
・ちなみに、20 代だと有訴者が(千人中) 213 人なのに、通院者は 150 人。若い人は自覚症状があっても病院行ってないし。。。。
<セクション4 介護の状況>
・要介護者の 65 %以上は、80 歳以上。どんだけ長寿社会なんだよ、日本・・・。団塊世代が 80 歳になるのは、2026 年からなのであと 12 年ですね。。。こわっ!
・同居の主な介護者と要介護者等の組合せを年齢階級別にみると、
「 70 〜 79 歳」の要介護者等では、「 70 〜 79 歳」の者が介護している割合が 50.6 %、
「 80〜89 歳」の要介護者等では、「 50 〜 59 歳」の者が介護している割合が 29.9 %で
最も多くなっている
って書いてあって、これはつまり、
親が 70 代の間は夫婦の間で介護が行われてるんだけど、80 代になると(どちらかが亡くなり)夫婦間介護ができなくなるので、50 代の子供世代が介護に乗り出してるってことなのかな?
なお、介護のうち同居家族が主な担い手なのは 6 割で、残りは、別居の家族や事業者などです。ただ、この介護に関する統計は、介護認定を受けてる人の統計なので、認定を受けてない人だと、もっといろいろ大変なのかもしれません。
★★★
以上、政府の統計や調査はいつ見ても興味深いですね。ところで、こういう調査の結果が発表されたとき、大手メディアの報道って、いつも全部同じでしょ。
たとえば今回だと、どこのメディアも貧困率、特に「子どもの貧困率が平成 24 年時点で 16.3 %と過去最悪を更新した」という点をやたらと強調して報道してます。
なんでこうなるかというと、調査結果を発表する役所(官僚)が、記者クラブメディア向けに「今回の調査結果の見所はここですよー」的な“ご説明”をするからですよね。
で、メディアはそれをそのまま紙面に載せたり、ニュースで読みます。だからどのメディアも、注目ポイントが全く同じになる。メディアのお仕事ってのは、役所の発表文を紙面&電波にのせるだけの、簡単なお仕事ってことです。
あたしは別に、今日このエントリで取り上げたポイントが、重要な点だとか注目点だと言うつもりは全くありません。これらは私の単なる個人的な感想です。
でもね。これだけのデータが開示されたら、人それぞれ、注目ポイントは違うはずでしょ。感じること、驚くことも違うのが当たり前だと思いません? それが「自分のアタマで考えるってことなんじゃないの?」とは思います。
ブログを書く人も、メディアの報道を見て、「子供の貧困率が高いのが問題だあ!」とか書くかわりに、自分でデータを見て「自分はここに驚いた!」って書いたりすればいーんじゃないかと思う。
人それぞれ、違う点に驚く、それ自体がおもしろいじゃん。
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