国民の多くが自民党に呆れかえっていたし、怒っていた。安倍、福田、麻生と続いた“とんでも3代”に驚愕させられたし、小泉氏まで息子に地盤を継がせると言い出して困惑させられた。自民党は“自爆”した。
しかし、大接戦選挙区で大物代議士に競い勝ち、最後の30議席を上乗せしたのは、小沢さんの巧みな選挙戦術に寄るところが大きい。自民党&公明党の大物議員にぶつけられた民主党の候補者達は“特定の選挙区のために誂えられた”かのような効果的な対抗馬ばかりだった。
当選後にこれら若手新人当選者の中に、前回の自民党の大勝の時にいたような「アホ丸出しで騒いでいる素人」が目立たなかったのも、小沢氏が細部に渡るまで気を配った結果だろう。
選挙から一夜明けた昨日の朝、多くの民主党若手当選者が(おそらく徹夜であろうに)朝から駅前でお礼演説をしている映像が、全国あちこちの選挙区からいくつも報道されていた。それをみて「指導の行き届いていること」に驚いた。小沢氏が送り込んだ秘書、選挙参謀達の指導は生半可なものではない。その“選挙の小沢”のお手並みが、今回の結果につながった。
ただし、小沢さんの今回の選挙における最大の功績は実はそれではない。彼は今回、より大きな、歴史的意義のある、あることを成し遂げた。それは彼の政治家人生全体で見ても、最も意義ある成果ではないかと、ちきりんは思ってる。
それは、彼が“昭和の政治家達”にことごとく““退場通知”を突きつけた、ということだ。
下記に、
(1) 自民党公認・推薦の立候補者で
(2) 65才以上で、
(3) 今回落選した人(比例でも残れなかった人)
をリストアップしてみた。
この人達はおそらく次の4年間、衆議院議員になることができない。年齢から考えて、4年後に再チャレンジする人は何人いるだろうか。4年後には若くても69才以上なのだ。これから4年間必死で頑張っても復活当選できる可能性は高くない。それは彼ら自身がよく理解している。
ということで、おそらく少なからずの人が今回の敗北を機に引退を検討するだろう。
まずは、リストを見て欲しい。年齢も添えてみた。(敬称略)
中山太郎 85
堀内光雄 79
海部俊樹 78
井上喜一 77
尾身幸次 76
島村宜伸 75
谷津義男 75
杉浦正健 75
柳沢伯夫 74
深谷隆司 73
笹川尭 73
中野清 73
中馬弘毅 72
山崎拓 72
二田孝治 71
岡下信子 70
木村勉 70
保岡興治 70
倉田雅年 70
吉田六左エ門 69
小島敏男 69
今井宏 68
渡辺具能 68
久間章生 68
宮路和明 68
喜数知賢 68
土屋正忠 67
伊藤公介 67
大前繁雄 67
岩崎忠夫 66
森岡正宏 66
西川公也 66
稲葉大和 65
丹羽雄哉 65
実川幸夫 65
桜井郁三 65
金子善次郎 65
江崎鐵磨 65
奥野信亮 65
岡本芳郎 65
林田彪 65
これだけの人を、小沢氏は引退に追い込もうとしている。冬柴鉄三氏(73)や、綿貫民輔氏(82)、中山成彬氏(66)のような公明党や元自民議員の高齢落選者を含めれば、今回、政治舞台から退場を迫られるであろう高齢政治家の数は更に増える。
ちなみに今回“当選した”自民党議員の平均年齢はそれでもまだ56.6才と民主党の49.4才を7才以上も上回っている。上のリストの人達が全員落ちた後で平均が57才に近いってのはすごい。これが、もし会社だったら、そんな会社の株を買う人はいないだろう。
それと、「選挙前に諦めて、引退を決めた自民党議員」も上記とは別に存在する。(下記リスト参照)
津島雄二 79
遠藤武彦 79
臼井日出男 79
仲村正治 77
萩山教厳 77
大野松茂 73
小杉隆 73
佐藤剛男 72
河野洋平 72
玉沢徳一郎 71
いったい自民党って、解散前には何人の70才以上の議員がいたんだ???と聞きたくなる・・・
これらの中には政治家として立派な業績のあった方も含まれるだろう。しかしこんな高齢になって、まだ4年間も国会議員でありたいと思った人達が描く「日本の未来」とはいったい、「何年後の日本なのだろう?」、「どんな日本なのだろう?」
政治家は日本の未来を議論するのが仕事なのだ。政党に関わらず、明らかにもっと早くもっと若い人に、その立場を譲るべきであったろう。
小沢氏は今回、多くの“昭和の政治家”に引導を渡した。若き頃、彼はまさに“昭和的な政治の正当な後継者”と目されていた。その彼が平成への元号代わりから21年、ようやく昭和の政治にピリオドを打った。(もしくは、有権者がピリオドを打てる状況をようやく作ってくれた、と言ってもいい。)
これが、今回の小沢氏の最大の功績だ。このことの分だけでも日本は確実によくなる。民主党が少々政権運営にもたついたとしても、上記の人達を国会から追い出した分だけで、「日本の明日は日本の昨日より100倍マシ」になるだろう。
小沢氏には是非、来年夏の参院選挙でもう一度、最後の大掃除をしてくれることを期待したい。
ちなみにその時、小沢氏は68才。
きっとその年齢の意味も、ご自身が最もよく理解されているだろう。
そんじゃーね。