先日の「原発の名前は変えたらどうだろ?」というエントリへの感想として、福島市にお住まいの20代の方からメールを頂きました。
とても誠実ないい文章だなあと思ったことと、「現状を知って頂けたら幸いです。」と書かれていたので、私だけでなく多くの方に読んでいただければと思い、ご本人の許可を得て下記に転載させて頂くこととなりました。
文中にでてくるお名前は本名のままではありませんが、それも含め転載許可を頂いています。また、これは一個人の方のご意見であり、「福島市住民の代表的な意見」「大半の方の意見」ではないことをあらかじめご理解下さい。
転載は全文で、修正はありません。ただし改行等書式は私がはてなで読みやすいよう整えています。
「言葉の力」が実感できるすばらしいメールを頂いたことと、掲載許可をいただけたことの両方に感謝しています。
★★★
ちきりんさんはじめまして。
ちきりんさんのブログの一読者のこうちと申します。突然のメール失礼します。(現在はコメント欄も停止のようですし、私はツイッターを利用していないので…)
今日のエントリについて思うことがありました。長くなりますがこのメールを読んでいただき、現状を知って頂けたら幸いです。
私は現在福島県の福島市に住んでいる27歳です。そもそも福島市は福島県を縦に3つに割ったうちの真ん中の中通りと呼ばれる地方、その北部にあたります。
震災当日はもちろんおおきな揺れで、私の部屋もレンジが落ちて壊れたりはしましたが、幸いなことに私の実家である隣の市では電気、水道は使えていました。
その点を考えると、ちきりんさんの方が当日大変な思いをされていたと思います。翌日から約1週間断水となりましたが、現在では物流の回復で不自由なく生活ができています。
ただ1点を除いてです。原発の問題です。
福島市は原発からだいたい60〜70km離れています。避難の対象の区域にももちろん入っていません。
この「福島市」という名前、お気づきと思いますが「福島原発」の福島です。
「会津」はもっと原発から離れていますし、会津だけでもある程度名が知れていると思うのでこれから挽回できることを願います。
福島市はどこまで切り離して考えても、福島の名前がつきまといます。せめて、その町の名前にしていてくれたらと今更ながら考えます。
そう悶々と考えているときに今日のエントリを読みました。離れている方でもそういう考えをもってくださっていることが嬉しかったのです。
一方で、福島市は避難区域外で飯舘村に次いで2番目に放射能の数値が高い市です。
「人体にただちに影響ない」と言われ続けて、毎日放射能を浴びています。
県が雇ったアドバイザーは大丈夫だと言い、ツイッターでは誰だかわからない人が危険を訴えます。私たちは何を信じていいのかわかりません。
なぜ避難にならないのか、まだまだ安全なのかもしれませんが、避難区域に比べて人口が多いのです。
そして津波の被害にあった海沿いに住んでいた方が福島市に避難してきています。
計画避難となった飯舘村の妊婦や子供も避難してきています。ここで福島市までが避難区域となればパニックになることは目に見えているから、行政は避難させないのかもしれません。
そもそも、こんなに少しずつ放射能を浴びて生活することになった人は初めてなのかもしれないから、人体実験されている気分だと友達と話したりします。
これから体にどんな影響があるのか、何もないのか、まだわかりません。結婚の予定もありませんが、今は子供を産むことは諦めています。
そういう考えが広まりつつあるように感じます。
今まで原発が県内にあることに対して何も考えたことはありませんでした。立地してる町ではありませんので恩恵があったわけでもありません。
今でも、原発に賛成でも反対でもありません。代わりにもっと安全なエネルギーがあればとは思いますが。
東電の対応がよくなかったかもしれませんが、東電に働く1人1人が悪いわけでもなくと考えると何も言えなくなってしまいます。
菅さんが辞任しようが、東電の社長が辞任しようが、この事態に大きな差があると思えず、今言うことじゃないよねと思っています。
どうしてさっさと自主避難しないのかという声もありましたが、福島市で自主避難しているのは、他県に実家や親せきのいる専業主婦と子供だけです。
私のように、自分で生活をしている人、家族を養っている人は簡単には離れられません。この仕事が大事な以上に、避難した先で仕事が見つかる保障がないからです。
まして、福島県民自体が変な風評にさらされています。福島県民は採用しないとか、福島県民は嫁にもらうなとか、福島県民給油お断りとか…他県で生活どころか旅行すらできる気がしません。
私は福島で産まれ、育ちました。高校を出て働きはじめたので、この地のほかで生活したことはありません。(その分視野は狭いかもしれませんが)福島は果物がおいしくて、野菜もおいしくて、車を走らせれば海もあって、いいところです。
正直、こんなにいいところがなんでこんな目にあわなきゃいけないのかと泣きそうになることもあります。この1ヶ月ちょっとのできごとが全部なかったことになればいいのにと。
福島市民がのんきに花見しているとツイートされていましたが、福島では行政も、会社も放射能の値などまるで無視です。毎日放射能におびえて、室内にこもっているような生活を送ることも不可能です。そもそも福島市は国的には「安全」なのですから。
放射能を浴びてる福島県民が近くにいたら、怖いかもしれません。感染はしなくても、服についてたのが飛び散るとか思う人もいると思います。そういう考えを否定しませんので、どうかその場をそっと離れてください。気がつかないように。
あからさまな看板を出したりしないでほしいのです。
ある日自分が突然差別される側になった恐怖を少しでも考えてほしいのです。
突然メールを送りつけた上、長くなってしまい申し訳ありません。今更になりましたが、ブログ毎回楽しみにしています。
ニュースって案外偏っているので、ちきりんさんの日記を読むと「なるほどね〜」と思うことが多々あります。本も面白かったので、いろんな人にすすめてみました。
こうして外に向けて情報や意見を発信されている方に、フクシマの声を聞いていただけたらと思いました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。