就活市場を一発で適正化できるミラクル解決法

2014年3月に大学を卒業する学生向けの就活イベントが、今日から解禁とのこと。

私が就活に関心があるのは、それが“最も機能していない市場の例”として典型的だからです。

ご存じのように、私はたいていの場合、市場原理を支持しています。
→ “There is no alternative to market


ちなみに、この“市場原理”がもっとも極端に機能しているのが(皮肉なことに)弱者保護の世界です。
→ “私的援助市場に見る市場原理


現在の就活市場は、“最も巧くいっていない市場例”と言えるほど滑稽な状態になっています。

もし私が(今)大学生なら、こんな市場にはまず参加しないだろうと思えるほどのヒドさです。

なぜこの市場は、こんなにも機能していないのでしょう??


その理由は、大学入試と比べれば明確です。今、大学受験市場は、就活市場よりは遥かに巧くまわっています。

「100社受けたけど、どこも通らなかった」という就活生の声は聞くけど、「100大学(学部)受けたけど、どこも通らなかった」という受験生の声はほとんど聞かないですよね。


「それは大学の定員が進学希望者数より多いからだろ」と言われるかもしれませんが、就活市場だって 2013年卒の求人倍率は 1.27ですから、今は「大学全入時代」であると同時に、「就活全入時代」なんです。

「企業の一部はブラック企業だから、求人倍率が 1を越えていても、まともなところだけでカウントすれば 1を割っているはずだ!」って? 

大学だって、一部は(てか多くが?)ブラック大学なんだから状況は同じです。


それなのになぜ大学受験市場は、就活市場のような“全員が疲弊する”みたいな状況に陥らずに済んでいるのでしょう? 

その理由を考えれば、現在のトホホな就活市場を適正化するミラクルな解決策が浮かんできます。


その解決方法とはずばり、大学受験と同様、
「応募検定料を、応募者が企業に払うようにする」
ということです。


実はこの点が、就活市場と大学受験市場の大きな違いです。

就活市場では、三菱商事や電通やJTBに応募するのはタダです。

企業側は採用パンフレットを用意し、何度も説明会を開き、適性検査や面接を実施するために多大なコストを掛けています。しかし学生側はこれを一切負担しません。


一方の大学受験市場では、入試のコストは受験生が払っています。

早稲田大学の受験料は 35,000円なので、政治経済学部と法学部と商学部と社会科学部を併願すれば、14万円かかります。

これに慶應の複数学部を受けて、滑り止めで他の大学も受けて、とかやってると・・・受験料だけで 30万円、50万円と必要になるでしょう。

多くの学生(のいる家庭)は、そんな額はとても払えないので、合格しそうにない大学や、合格しても行きたくない大学を受けません。

行きたい大学が 10校ある場合でも、よく考えて優先順位を付け、自分の実力前後の 5校程度を選んで受けるのです。


しかし、就活市場ではどんな人気企業も応募するのはタダです。

会社説明会の席を得るために画面から早撃ちクリック連打が必要にはなるけれど、お金は一円もかかりません。

だったら「行きたい会社はスケジュールが許す限り全部受けてみよう!」という話になります。

それどころか、内定がでても行きたいと思えない会社さえ、「話のネタに」や「面接の練習に」受けたりします。

こうして、IT化の恩恵により応募作業が容易になればなるほど、一人当たり応募社数がとめどなく増えていきます。

そしてそのことにより「落とされる人の述べ人数もどんどん増加する」という状況になっているのです。


学生 10人と企業 10社の例で考えてみて下さい。

ひとり 3社受けるとすれば、平均 2社ずつ落ちます。

でも全員が 10社に応募すれば、ひとり平均 9社落ちることになります。

落ちる人には偏りがあるので、結果として一人で 50社落ちる人が出現します。

換言すれば、今みんながこんなに就活で落とされるのは、単に「みんなたくさん受けすぎだから!」なのです。


学生が大企業ばかり受けて中小企業に人が集まらないと言われてますが、企業が「応募検定料」をとり始めたら、学生側は受ける企業を厳選し始めるはずです。

有名企業、超人気企業ではなく、自分が受かりそうな企業を必死で探そうとするでしょう。

そうすれば中小企業への応募者だって今よりずっと増えるのです。つまり「ミスマッチ問題」も(ある程度は)解消されます。


もちろん大学入試と同様、一部の人気大学に受験生が集中し、一部の大学は定員割れが続くという状態は残ります。

それでも、「100社落ちて、自分は世の中に必要無いのかと思って落ち込む」みたいなことは起こらなくなります。

企業側は希望者の数に応じて説明会を増やすから、説明会の予約だってとりやすくなります。

大学受験では、入学検定料を添えて応募したのに、会場が満員で入試が受けられないなんて起こらないでしょ? 

お金を払うシステムであれば、大学も企業も「応募してきた人、全員が参加できる会場」をきちんと用意してくれるんです。


しかも、今は東京だけで会社説明会を行っている企業も、北海道から九州まで日本全国で採用プロセスを開催してくれるでしょう。

大学受験の場合、東京の大学が、関西を始め全国で入試を行うのは、もう珍しくもありません。

コストさえ応募者が払ってくれるなら、大学側(企業側)はできるだけ優秀な応募者を獲得すべく、自ら地方まで出かけて行くのです。


同時にこの方法で、「地方の大学生の場合、就活に多大な交通費と移動時間がかかって、ものすごく不公平」という問題も解消できます。

てか今って事実上、地方の大学の人だけが就活応募料を(交通費&宿泊費という名目で)払ってるようなものなのです。

というわけで、就活に応募検定料制度が導入されれば、大学全入時代と同様、就活全入時代というすばらしい時代がやってくるはず!


加えてこの制度により企業側は、ほんとの意味での学歴不問採用が可能になります。

現在、企業側が学生を大学名で区別するのは、応募者が多すぎて、彼ら全員に適性検査を受けさせたり、面接に呼ぶなんてことは、コストがかかり過ぎてできないからです。

1000人の学生に東京都心で適性検査を受けさせようと思えば、テスト代や会場代、現場スタッフ代(派遣スタッフ代)などで、応募者ひとりあたり数万円ものコストがかかります。

費用負担は大学と同じか、それ以上です。試験会場として使える校舎・大教室を最初から持っている大学の方が、むしろコストは安いでしょう。

たかだか 100人ほどしか採用しないのに数万人が受験してくるような人気企業が、数万人分の説明会会場や面接会場を用意して、全員を受けさせるなんて、経済的に不可能なのです。


でも!


学生側が検定料を払うシステムなら、企業は全員にテストを受けさせるでしょう。大学名で足きりをする必要はありません。

めちゃくちゃ応募者の多い一流大学だって、高校名で受験生を足きりしたりしないでしょ? あれは、入試を受けてくれる人が多ければ多いほど、入学検定料が入って大学は儲かるからです。

ひとり 3万5千円ずつ払ってくれるからこそ、できるだけたくさんの受験生に受けて欲しいと大学は考えます。

同じシステムになれば、企業だって同じように考えるはず。大学名による履歴書不合格や、セミナーからの閉めだしなんてことも、やらなくなるでしょう。

結果として、みんなが求めてる「大学名不問採用」が実現するのです。 今の大学受験市場において“高校名”が不問であるようにね。


「応募検定料なんてとったら、貧乏人の子供が就活できなくなる」って? 

そんなこと起こりませんよ。大学の入試検定料は昔はせいぜい 1万円だったのに、今や 3万円を越えています。

なのにその間に、大学進学率は 25%から 50%に伸びました。入試検定料が 3倍にもなった今の方が、進学率は圧倒的に高いんです。


「いい加減な応募者を減らすためなら、長い課題作文を応募者に課せばいい」と言う人もいますが、そういう人って世の中がどう動いているか、全くわかってないです。

そんなことして、電通や三菱商事に送られてくるだろう数万通もの作文を、一体誰が読んで、審査するの?? 

その作文を読むための新たな人件費負担を企業側に押し付ければ、企業はいまよりも更に応募者を狭く(大学名に加えてコネなども加えて)絞り込もうとするでしょう。

それでは逆効果でしょ? 「お金を取らずに課題作文を課せ」などというのは、世の中を知らない人が言いがちな机上の空論です。


こんな話を聞けば、学生さんも「えっ! 企業に応募するのにお金がいるの!?」と思うかもしれません。でも、皆さんはいったい、今の就活市場と大学受験市場を比較して、どっちがマシだと思ってるんでしょう?

明らかに受験システムの方がマシじゃない? 


大学受験で入学検定料が廃止になったら、「慶応は受けときたいな。かっこいいし」みたいな高校生が激増し、人気大学にはものすごい額のコスト負担が降りかかります。

そうなれば大学側は慌てて「高校名での足切り」を始めるはず。地方での入試実施だって止めてしまうでしょう。

そして高校生側には、「 20校落ちた」とか「 30校受けたのにどこも通らなかった」みたいな人が現れるのです。つまり、今の就活市場みたいになってしまう。

大学受験がそんなふうになったらイヤでしょ? 学生から見たって、「応募者がコストを負担する方式」の方が好ましいはずなんです。


というわけで、就活市場をまともにする方法はとっても簡単。企業側が、大学と同じように「応募検定料」をとればいいんです。



そんじゃーね



就活生は、下記の本の第七章「情報ではなくフィルターが大事」の部分もぜひお読みください

自分のアタマで考えよう

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