自分の強みを活かすというアホらしい発想

まさかと思いますけど、「自分の強みを活かして勝負する」のが「いい作戦だ!」と思ってる人はもういませんよね?

この「自分の持っている価値あるものを活かして○○する」という発想法のリスクや限界については、しっかり意識しておいたほうがいいです。

だってこれ、あきらかに「供給者視点」であって「消費者視点」じゃないでしょ。

そこが致命的なんです。


↓こう書けばわかるかな。

供給者視点=自社の持つ圧倒的に優れた技術を活かして、商品開発!

消費者視点=消費者が熱狂するほど欲しがるものを、世界中から他社の技術を集めてでも開発!

どうですか?
前者と後者の典型的な会社名、すぐに思い浮かぶでしょ?

前者は「差別化が大事」とか思ってるけど、後者は差別化なんて気にもしてない。

「差別化」ってのは対競合の視点であって、対顧客の視点の言葉じゃないから。

競合と顧客、まずはどっちを見るべきなのか、よくよく考えたほうがいいんです。


てか、まずは顧客を満足させ熱狂させるのが最初であり、競合のことはその後なんです。

そこを間違えてるから、前者に対して顧客は「あんたの技術がどんだけスゴかろうとオレには関係ない。どんなに凄くても、要らないものは買わない」ってことになる。


今どき事業戦略を立てる時、「自社の強みは何か」みたいなところから考え始める会社って、たぶんすでに時代遅れになってる。

そういうのって、技術を特定の企業が囲い込んでいた時代の発想なんだよね。

今や、技術は世界中の企業(や大学や研究機関や個人)が持ち寄って組み合わせて使うものになってる。


個人でいえば、「やればできるのに(なんでやらないの?)もったいない」みたいなのも同じ。
んなもん、何ももったいなくない。

勉強ができるから医学部にいくとか、試験が得意だから公務員試験を受けるとか、そんな理由で職業を選ぶって変でしょ? いくらそれが「自分の強み」だとしても。

ピアノが少々巧くたって、好きじゃないなら練習したってしゃーない。そんなん人生の無駄使い。宝なんて持ち腐れてもいいんです。


子供に関しても、「この子の得意なことは何だろう?」とか考えてるとトラップにはまる。「この子が楽しくやってることの中に、世の中に求められてるものが、何かないかな?」って考えないと。

就活中の学生さんも同じです。

「自分の強み」なんかより、「自分が大好きなことで、世の中から求められてるものって何かないのか?」という方向で考えましょう。

面接する方だって「こいつは役に立つか?」=「世の中で求められてるものを、何かひとつでも提供できるやつか?」を見てるんだから。


下記の本↓にも「強みを活かすとか言っててはダメ」って書いてある。尊敬する野口先生の本。いつもながら超マトモなことをおっしゃってます。kindle版があるので今すぐ読める。いい時代。


日本式モノづくりの敗戦―なぜ米中企業に勝てなくなったのか
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
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就活する時も気を付けたほうがいい。

「わが社の強みは・・」とか威張られても困る。そんなもん、消費者(=お金を払う人)には何の関係もない。

そうじゃなく、「うちの商品はこれだけ売れてます!」=「うちは、これくらい世の中に求められてる価値を提供できています!」ってことを誇るほうが圧倒的にまとも。

消費者が「これが欲しかった!!」と思えるモノを作っているなら技術的に凄くなくてもいい。

てか今後は「これが市場から求められてる!」と思うものなら、外部から人を雇ってきてでも技術を買ってきてでもわが社で提供する! という覚悟のある会社じゃないと生き残れない。

「自分の強みを活かしてできる範囲」しかカバーしない企業なんかお呼びじゃない時代になってる。


このブログが人気化したのは、私が「自分の強みである文章力」を活かして何かできないかと考えた上で、ブログを書き始めたからなの? 

んなわけないじゃん。

読者は「私の強み」なんかには何の興味もないはず。

そうじゃなくて、ここに読みたい文章=読む価値がある文章、があるから読みにきてるだけでしょ。

あたしだって、文章が人より得意だからブログを書いてるわけじゃない。

自分が考えたことを書くのが好きだから書いてるだけ。そうでなければブログが人気化する前の 3年半、一人で黙々と書き続けられるわけがない。

そもそも「何を書いたらおもしろいかな?」の前に、「どうやったら他のブログと差別化できるか」なんて考えてたら、お話しにならない。

「自分の強みは○○だから、○○についてのブログを書くべきだ!」と考えてても、ブログが人気化するとは思えません。

考え始める原点は「自分の強み」なんかじゃなく、「何が求められてるの?」ってことだから。

大事なことを間違えちゃいけない。

くれぐれも「自分の強みを生かす」的な発想に陥らないよう気を付けましょう。



そんじゃーね

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