自動運転車 超楽しみ!

各国で走行実験が始まり、あの(超保守的で慎重な)トヨタまで実験を始めるというのだから、いよいよ現実味がでてきた自動運転車。

自動車が「人間が運転するもの」ではなくなり、自分で走って目的地に着くなんて、ほんとーに未来的です。

最初に実現するのは高速道路上での自動走行だと思いますが、それだけでも日本経済には極めて大きなプラス影響があるでしょう。

なぜなら、


1)人手不足が解消される

日本は今、急激に生産年齢人口が減少しています。働ける年齢の人は、今後の数十年で 1000万人以上、減るんです。

そんな中、物流量が増えたからといって、ドライバーの数を増やすのには限界があります。

「高速道路の起点から終点までは運転手が要らない」時代がくれば、大量の労働者が「高速道路でトラックを運転する」という仕事から解放されます。

これは高速バスでも同じです。

海外から訪れた観光客は、高速バスで東京から京都、大阪まで移動しているし、日本人にも、割高な新幹線を避け、高速バスで移動する人が増えています。

それらのバスに運転手が不要になれば、どれだけ人手不足解消に役立つことでしょう。

さらにいえば、「人手が確保できないために、これまで提供できなかったサービス」も、どんどん実現するはずです。



2)事故が減る。被害者に加え、加害者も減る

長時間労働に疲れ、居眠り運転で事故るトラックやバス、
行楽からの帰り、お酒を飲んで運転する不届き者、
田舎の高速道路を逆走する高齢者、
運転に慣れない休日ドライバー
持病で突然死する高齢ドライバー
無理な割り込みや追い越しをする人、

などによる事故が、大幅に削減できます。


最近はタクシードライバーも高齢者が多くて、夜中に首都高をぶっ飛ばしてると(後ろの席に座ってて)ほんとに怖いです。「お願いだから急死しないでね!!」と思わず呟きたくなるほど高齢の方もいらっしゃるんで・・・

もはや自動運転車のほうが、よほど安心です。


ちなみに、自動運転で上記のような事故が減れば、「死んだりケガしたりする人が減る」だけでなく、
「運転のミスで他人を殺してしまったり、傷つけてしまう人も減る」(=被害者だけでなく、加害者も減る)ので、
結果として日本全体の幸福量を大幅に増やす効果があります。


なおこの点に関して、コンピュータがバグって事故が増えるとか言う妙な人がいますが、既に何年も前から、最先端の医療機器の大半はコンピュータに制御されて動いてます。

そういう医療機器が「バグって死んだ患者」ってどんだけいるんでしょう? 医者の判断ミスや看護師の投薬ミスより、手術中に機械がフリーズして起こる医療事故のほうが多いの?


新幹線だって飛行機だって、コンピュータに制御されて走行しています。

ニューヨークから東京までの 12時間のフライト中、パイロットが飛行機をずっとマニュアル操縦してると思ってます? 

「自動運転車が暴走したら怖い」などと言う人は、「新幹線が暴走して東京駅で止まらず、丸ビルに激突する!」みたいな事故を、同じように心配してるんですかね?

既にコンピュータは、人命を預かる仕事を数多く、そして難なくこなしているんです。



3)物流コストが下がり、生産性が上がる

今は自動運転車も高価ですが、普及が進めば、人間が運転するより全体のコストは安くなるでしょう。

また、人間が運転するより全体のスピードも上げられるので(=時速制限も、人間の運転技術ではなく、機械の性能に合わせて上げていける)、東京・大阪間の所要時間も短くなるはず。

完全にコントロールされた車間距離で走るから、渋滞も減るし(それによって、さらに所要時間が減り)、燃費も良くなります。

人間と違って途中の休憩も不要だし、夜中に働かせてもなんの問題もないので、24時間稼働も可能。


加えて自動運転になれば、トラックももっと大型化するはず。アメリカの高速道路を走ってるトラックって、日本の倍くらいにも見えますよね。

人間が運転しないなら“操作性”とか気にしなくてよくなるわけで、東京・大阪間なんて、もっとでかいトラックを走らせればいーんです。


物流企業では、ドライバーの採用や健康管理、運転技術の訓練や体調のチェック、手配(スケジューリング)が不要になります。

今はこういう管理業務にものすごい手間がかかってるので、それらの業界では大幅なコスト削減が見込めるでしょう。

こうやって物流コストが安くなれば、都会にモノを売る地方のお店のチャンスはさらに拡がります。高速バスだって料金が安くなれば旅行者も増え、いろんなところが潤います。



4)人生の時間の浪費が減る

これは、トラックドライバーやバスドライバーの時間だけではありません。

帰省や行楽時、3日間で 10時間近く運転のために拘束されていた“お父さん”は、その苦しい責務から解放されます。

高速道路上の移動時間は子供と触れあったり、行楽地に着く前に一眠りして疲れをとったりもできるでしょう。

盆と正月、ゴールデンウィークに年 3回、出かけるだけでも年に 30時間は有意義な時間が取り戻せるし、渋滞時のイライラが減れば、精神衛生上もよい影響が大きいです。


そもそも、「長時間の運転や渋滞が嫌だから出かけたくない」「運転が疲れるから、出かけるのをやめた」って人も多いと思われるので、

あの苦痛がなくなれば、より積極的にみんな旅行にいくようになると思います。

その経済効果も大きいし、特に「車でしか行けない地方」が潤うはず。


ただし、ラジオは壊滅的な影響を受けそうですね。運転中、前を見ている必要がなくなれば、誰だってラジオじゃなくてテレビを見始めるでしょうから。

ラジオ局の皆さん。始まりは 5年後、終わりは 20年後ですよ。



5)商圏が拡大し、施設の集約が進められる

観光地でもない地方では、高速道路の出口には「なんもない」みたいな場所がたくさんあります。

高速道路上の自動運転が実現した後、こういった出口のすぐ側にその地域の基幹病院を作れば、数十キロ先からでも高齢者がひとりで通ってこれるようになります。

過疎地の自治体は、高速道路の入り口までだけのマイクロバスを走らせれば、あとは自動運転車が住民の高齢者をその病院まで連れて行ってくれるわけです。

病院に、介護施設やショッピングセンターや図書館を併設すれば、みんな毎日でもそこに通えます。


今、過疎地では(高齢者は増えるのに)病院は減り、介護保険料をずっと払ってきたのに介護施設も存在しない(から利用できない)、スーパーも閉店してしまった、みたいなことが起こってます。

しかも、これからそんな村のすべてに必要な施設を作るなんて、いくら補助金をつぎ込んでも不可能です。

だったら、客の方を遠い場所まで運べばいい。

今は 50キロ先のショッピングセンターに日常の買い物にいくなんて考えられませんが、地方のスカスカの高速道路ならたいした時間はかかりません。

同じように、工業団地で働く人も 50キロ先から通えるし、高校や大学だって 50キロ圏内から(運転できない子供も)通えます。


鉄道や地下鉄の駅ができたら駅前は急速に開発されますよね? 

でも今までは、高速道路の出入り口が作られたからといって、必ずしもその周辺が発展するわけではありませんでした。

この鉄道と高速道路の差は、「誰でも簡単に行けるかどうか」だったんです。

日本は田中角栄先生のおかげで、地方の隅々まで高速道路が整備されています。高速道路の入り口が近いエリアでは、すべての施設の商圏が一気に何倍にも拡大することでしょう。



というわけで、自動運転は“未来的”であると同時に、

・高速道路網の整備がされており
・そんなに国土も広くない(アメリカだと自動運転車が実現しても、地図上ですぐ近くに見えるサンフランシスコとロスの間でさえ、飛行機のほうが圧倒的に便利です)
・かつ人口が減り、高齢化の進む日本には、

ほんとーに大きなメリットがある技術です。


早く「高速道路の入り口には、一人乗りの自動運転タクシーが置いてある」「誰でもそれに乗れば、さくっと温泉地まで行けちゃう」みたいになったらいいな!



 そんじゃーね

<関連エントリ>
2015-11-30


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/