なんで意見が違うのか

A君とB君の意見が違うとします。さて、なぜ二人の意見は異なるのでしょう? というのが今日のお題です。


最初に考えられる理由は、「持っている情報が違う」ってことです。

A君は、消費者金融の企業で働いたことがあり、実際どんなもんだか知っている。

B君は街で看板を見たり、テレビで消費者金融のCMを見てるだけ。

「消費者金融でお金なんて借りちゃだめだ」というA君の意見と

「いいんじゃないの、別に。ちょっとお金足りない時あるし」というB君の意見の差は、

二人が持っている知識や経験などの情報の差から来ています。

★★★

二番目は、分析方法や解釈方法が違う場合。

過去 20 年間の日本株の動きを分析したら「株なんて上がらない」となるし、
100 年分を分析すれば「長期的には上がる」となる。
そして 50年分を分析したら「上がったり下がったりする」という結論になります。


他にも、平均値を見て語る人もいるし、飛び離れ値を見て語る人や、分散に注目する人もいる。

日本の財政赤字は、国際的な水準から言うと超危険レベルですが、日本人はそんなに深刻に考えてない。

国際比較とは他国と比べることですが、日本人は「過去の日本との時系列比較」をしてます。だから、「今まで何とかなったように、これからも何とかなる」となります。


では (1)持っている情報と、(2)その分析方法が同じなら、A君とB君の意見は同じになるでしょうか?

★★★

なりません。ふたりの価値観が異なる可能性もありますよね。

報われると信じて努力することに意義を感じるか、報われるかどうかもわからないのに努力するなんてバカらしいと思うかは、価値観の問題です。

価値観が違うと、同じ情報を同じように分析しても、ふたりの意見は同じにはなりません。


この「価値観が違う」状態を、話し合いで解決しようとするのは極めて無謀だし危険です。

だって、みんながいろんな価値観を持ってるからこそ世の中は多彩なのであって、

全員が説得し合って、結果として「全員が同じ価値観」になったりしたら、怖いでしょ。そんな画一的な社会。


なので議論して、「意見が違うのは価値観が違うからですね」って理解できたら、そこでお互いの価値観を尊重し、議論は終わりにすればいいんです。

どうしても決める必要があるなら民主的な方法(多数決)で決めれば良い。

「自分はなぜこういう価値観を持つに至ったのか」と自分で考えるのはいいけど、

相手の価値観を変えさせ、自分と同じ価値観にさせようとするのは暴力的な行為なのだと覚えておきましょう。

★★★

じゃあ、情報量、分析方法、価値観が同じなら、意見は同じになるか?


もうひとつ大事なことがあります。「ゴール」が違う場合です。

金メダルをとりたい(一番になりたい)のか、新記録を狙いたいのか、この二つは全然違います。

ゴールが異なれば、ベストな練習方法も変ってきます。一番になりたいなら、ライバルの研究と対策が大事です。

一方、目標は新記録を出すことだ( 2番でもいい)というなら、他者のコトなど考えず、自分の改善だけに集中すればいい。

★★★

(1)情報量、(2)分析方法、(3)価値観、(4)ゴールが同じなら、A君とB君の意見は同じになるでしょうか。


そうですね、それだけ一緒なら結論は同じになりそうです。

ただし、同じなんだけど、同じに聞こえない場合もあります。言葉の使い方が違う場合です。

「靖国参拝を遺憾に思う」と、「靖国参拝なんてとんでもない。いい加減にしろよ」のふたつは、もしかすると気持ちは同じかもしれないけど、全然違う意見にも聞こえます。

というわけで、この5つの条件のどれか、もしくは、組み合わせによって、A君とB君の意見が異なるわけです。


まとめときます。

あなたと誰かの意見が異なる場合、その原因は、

(1)情報量が違う


(2)分析方法が違う


(3)価値観が違う


(4)ゴールが違う


(5)言葉の使い方が違う

のどれかです。

郵政を民営化すべきか、すべきでないか。この意見の違いはどれから来るんでしょう?

一番大きな理由は(4)だと思います。

民営化すべきと思っている人とすべきでないと思っている人は、この国をどうしたいと思うか、というゴールの姿が違ってる。だから意見が違う。

であるならば、ポイントは「どちらの意見が正しいか」ではなく、「どちらのゴールを私達は希望するか」です。


こういう場合、どちらが正しいかを議論していても答えはでません。

どちらの意見も(それぞれのゴールのためには)正しいのです。

だから、「郵政を民営化すべきか否か」ではなく、「この国をどうしたいか」を話し合い、民主主義的な手段(=選挙)で結論を出せばいいんです。


誰かと意見が異なる時、まずは、この (1)〜 (5)のどの理由によって意見が異なっているのか、考えると早いです。

そして、(1)が理由なら、お互いの持っている情報を共有化すればいい。


(2)が違うなら、お互いの分析方法を開示して比べて、どっちの分析方法が適切か? と議論する。

(3)が原因だとわかれば、話し合っても意見が同じになることはありません。。お互いの意見を聞いて「そういう考え方の人もいるのね」と理解すれば終わり。


(4)なら、まずはどちらのゴールを選ぶかを議論すべき。

(5)なら、お互いの主張を様々な言葉で説明し、コミニケーションの齟齬をなくせばいい。



また明日!



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