米の自給と安全保障論の欺瞞

米を始め食料の自給率問題を扱ったテレビの討論番組をみました。

「国の安全保障問題として、食糧を自給すべき」「いつまで外貨が稼げるかわからない。いつまでも海外から食糧を買えると思わない方が良い。危機管理のために、国内で食糧を作るべき」と言っている人がいた。


うーーーーん。


この手の主張は大昔からよく聞く“なんちゃって理論”なのだが、こういうことを言っている人は、自分の主張が変だとわかっていないのか? 
それとも、わかってるけど農協から研究費を出してもらっているから、という学者なのか?

なんで恥ずかしげもなくこんなことが言えるのか、全然理解できないちきりんです。


安全保障のためにお米を自給したって、安全保障問題で食物が入ってこなくなるような時には、石油がまず入ってこなくなると思うんだよね。

トラックはじめ自動車や飛行機、船はガソリンなどで直接動かすわけだから、燃料は完全に輸入でしょ。

食料は輸入できなくなったが、石油はいくらでもはいってくるという安全保障上の問題って何? そんなこと起こりえる??


本当に「安全保障上の問題」が起こったら、米が新潟県や秋田県で作れても、それを消費地に運ぶ電車もトラックも動きません。

米を炊く電気炊飯器も動かないし、マンションなんて電気がないと水も出ない。てか、米作り自体、トラクターも田植機も動かなくても今と同じ量を作れるの??

外貨云々も同じです。

外貨が稼げなくなると、もしくは1ドル 1000円になると、海外から食料が買えなくなる、だから食料は国内で自給すべき! って人がいるんだけど、1ドル 1000円になったら、まずは十分な石油が買えなくなるんですってば。


だから自給だの何だのの前に、日本は「世界と仲良くする」という途を選ばなくてはならないのです。

ってことを、日米戦争前のABCD包囲網とかで学んだんじゃなかったの?

アメリカ、中国、ロシア、フランス、オーストラリアなどがどこも日本に食料を売ってくれない関係に陥ったら、たとえ“食料自給率100%”であったとしても、この国はその時点で終わりです。

というわけで、この「安全保障のための自給率確保」論は、超詭弁だと(ちきりんは)思うのだが、全く衰えないところをみると、なにか私には理解できてないことがあるんだろうな。


んじゃね!

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