変化の意味

もうすぐアメリカ新大統領の就任式ですね。

オバマ新大統領が選挙戦で掲げたスローガンが “We can change !” 、すなわち「変化」

この「変化」という言葉、アメリカではたいてい肯定的な意味で使われますが、日本では必ずしもそうではありません。

半々か、もしかするとさらに高い比率で「変化」をネガティブなものと感じる人がいそうです。


私にとっては、変化のない状態とは「退屈」「成長しない」「停滞している」「頑な」というイメージです。

一方で変化は、新しいものとの出会いや成長、ダイナミックなわくわくする経験といったイメージと結びつきます。


でもこの国では「変化しないモノ」にポジティブな意味を与える人も非常に多いです。

それは、「ぶれない」「安定している」「一貫している」「耐えしのぶ」といった言葉とつながっています。

変化をポジティブにとらえる場合でも「性急な変化」という言葉があるように、「変化するのはよいが、そのスピードはゆっくりの方がベター」という感覚があるようです。


「変化」という言葉から思い浮かべるイメージの国際比較とか、「彼は決して変わらない」という言葉を、異なる国でどう解釈する人が多いか、などについて調査してみたらおもしろいんじゃないかな。

変化が好きそうな米国はともかく、歴史の長い欧州でこの言葉がどのように受け取られているのか、急速に変わりつつある中国など新興国ではどのようなイメージとつながるのか、興味深いところです。


最近の日本では役所や大企業に入りたがる若者がたくさんいますが、ああいうところで働いていると、「 5年後の自分の姿は 2メートル先の係長席をみればわかる」、「 10年後の自分の姿は、4メートル先の課長席に見えている」といった状態です。

それを「安心できる人生」、「安定した人生」と感じ、「そういう人生を手に入れたい!」と考える人もいれば、「そんなつまらない人生は耐えられない!」と思う人もいます。

変化をポジティブにとらえる人にとっては、「 5年後はこうで、10年後はこうで、20年後は定年で、30年後は老人で、40年後は寿命」みたいに先が見えてしまっている人生では、自分で生きる意味がないとさえ思えます。

一方、変化嫌いの人にしてみれば、「そういう安定した人生だからこそ、日常のささいなことを楽しめるんだ」ということなのかもしれません。

自分の子供に安定した人生を与えたいと思っている親もたくさんいるのでしょう。


さらに、好ましいと思う変化スピードについても、意見は大きく異なります。

速いスピードでどんどん変わっていく世界にドキドキわくわくできる人もいるし、あまり早く変わるとついていけないから、ゆっくり変わって欲しいと望む人もいます。

ちきりんは日本人なので「日本も少しずつ変わっている」ことがわかりますが、海外の人からは「日本の変化は遅すぎて、変わっているのかどうかわからない」レベルなんじゃないでしょうか。

日本企業の中にも「少しずつ変えているつもり」の経営者と、「何年たっても何も変わらない」と感じる若手社員、という構図も存在しています。


私は、この「変化すること」「変化スピードが速いこと」をポジティブに考えるかネガティブに捉えるか、という違いは、

その人が楽観的か悲観的か、ということや、その人が今いるポジションが相対的に有利な場所かどうか、に依るのではなく、

「変化のわくわく」を実際に体験したことがあるかどうか、に依存していると感じています。

だから一度、変化を体験した人はどんどん新たな変化を求めるようになるし、変化を経験したことのない人はそれをどんどん怖がり始めるのです。

一生、変化を避けて生きていけると思うなら、できるだけそれを避けるのもひとつの選択肢かもしれません。

でも、もしも「これからの世の中、変化は必然!」と思うなら、早めに(若いうちに)大きな変化を経験しておくのは悪い話ではありません。

早めに経験しておけば「変わることを恐れない、むしろ楽しめる人」になれる可能性が高くなるからです。


「変化を楽しめる人」「先が見えないことにワクワクできる人」と、
「変化を恐れる人」「先が見えないと不安で不安で、という人」


みなさんにとって 5年後や 10年後の自分の姿が今から(手に取るように!)見えていることは「安定していて好ましい」人生ですか? それとも「退屈でつまらない」人生でしょうか?

想像もつかないことが未来の自分の人生に起るのは耐えられないことですか? それとも、「今は想像もできていない未来」にワクワクし、その中で翻弄される自分の人生さえ楽しみに思えたりするでしょうか?

自分の子供に「定年まで見えている安定した生活」を用意してあげたいと考えますか? それとも・・・?



そんじゃ。


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