10月14日のNHK首都圏ネットワークという報道番組が、少人数学級に取り組む埼玉県志木市について特集していました。
一クラス 40人近い現状を 25人学級に近づけようという試みで、親や教師にも高く評価されています。でも子供が減るとはいえ、そのためには今までの 1.5倍の数の教師が必要になります。
だからといってどこの自治体も大赤字で、公務員である教師を増やすことはできません。だから、時給で働く契約社員という立場の教師を雇うことになります。
公務員といえば手厚い福利厚生や年金、景気に左右されないボーナスなど圧倒的に恵まれた身分ですが、契約教師にはそんなのは適用されないし、なにより何年やっていても昇級も昇格もありません。
契約社員として雇われる人は、もともと「正規の教員志望者」ばかりですから、みんな契約教師として働きながら、毎年、正規のポジションにも応募を続けます。
結果として、(優秀な)契約教師から順に、毎年のように(自校や他校の)正規教員となって流出するので、学校側は毎年、新規の契約教師を確保する必要がでてきます。
で、その獲得コスト(=人件費)も大変なのだ、というお話。
これ、どこの会社でも起っていることなんですよね。
「仕事のために人材が足りない。しかし予算がないから契約社員しか雇えない」、でもその裏には「たいした仕事もしていないのに一千万円も貰っている中高齢の正規職員がたくさんいるんです。
彼らは退職後にも高水準の年金を受け取る権利を持っており、その一方、新たに雇う人には、「年金も福利厚生も不要の契約社員という立場」しか用意されていません。
番組では、志木市の教員か市役所の人が夜遅くまで残業し、新規の契約教師を確保するための営業電話をかけている様子が映っていました。
が、「この電話をかけている人達の給与が高すぎるからこそ、契約社員しか募集できないのではないの?」というのが事の本質です。
私は志木市を責めているわけではありません。民間企業も市役所など他の公務員組織もみんな同じです。実は一番昔からこの体制で運営されてきたのは、天下りを養うことが目的の独立法人です。
そこでは昔から、2000万円以上の年収に、秘書と社用車と個室を与えられる中央官庁からの天下り理事を(しかも何人も!)支えるため、契約社員の職員が、何年も安月給で働き続けています。
今や普通の公務員や民間企業も、同じようになってきたというだけです。ようやく一般世間が、天下り系独立法人に追いついてきたのです。
そういえば国家公務員に関しても民主党政権が天下りを廃止したため、中高年の公務員を雇い続けることなり、人件費が足りないから若手の採用を絞るという、ミラクルに素敵な案が報道されてましたね。
ここでも、新入社員が減って仕事が追いつかなくなった分は、「バイト」の手でまかなうことになりますから、若者の正規雇用は粛々と非正規雇用に置き換えられていくでしょう。日本ではいつの世も、皇室と霞ヶ関が一般家庭や一般社会の半歩先を歩いているのです。
★★★
さて、日本企業の業績が悪くなり正規社員の採用を絞り始めたのは1995年くらいからです。ほぼ同時に非正規雇用制度も大幅に拡充されました。
2006から2008年くらいに数年だけ好景気の年がありましたが、それを除くと既に企業は15年間、正規社員の採用を絞っています。税収が少なくなり福祉にお金がかかり始めた自治体も同じです。
日本の終身雇用体系では、23才で雇った人を 60才まで雇う必要があります。つまり38年間、雇う必要があるのです。ということは、38年の間、正規社員の採用を絞り、その分の仕事を非正規雇用の社員でカバーしていけば、日本は「全労働人口がロスジェネ」になります。
既に15年(必要期間の約4割)は終わっているので、全労働者がロスジェネになるまであと23年です。みなさんの住宅ローンが終わるころですかね? もしくは、今年生まれた子供が大学を卒業する時期です。
問題の解決に最も長い時間がかかる方法を選ぶことを国是としている日本としては、当然の選択肢といえるでしょう。
そんなことになったら、世の中どうなるんだって?
いいんじゃないですかね。みんな平等になって。
誤解のないようにしてくださね。
働く人の全員がロスジェネになり非正規社員になれば、日本企業のコスト競争力も回復し、景気がよくなるなんてありえませんよ。
だって、今の正規社員の人は死ぬまで年金をもらい続けるんですから。その人達がいなくなるまでには、そこからまださらに20年が必要です。
全員が契約社員となった社会が、何年物間(みんなで頑張って力を合わせ!)先輩の年金を払っていくんです。
とすると、日本人がこの負担から解放されるのは、43年後ってことで・・、だいたい、今年生まれた赤ちゃんくらいからは、楽しい老後を送れるってことのようです。
そんじゃーね