休眠口座とか休眠宝くじとか

「休眠口座」をご存じでしょうか。10年など長きにわたってなんの取引も行われないままの銀行口座のことです。「よく覚えてないけど、自分にもそういう口座があるかも?」という人もいるでしょう。

小さい頃にお年玉用に作ってもらっていた口座、大学近くの銀行で作った口座、引っ越し前や結婚前の銀行口座などで、数百円の残高があるかもしれないけど、もう通帳も判子もなくしちゃった、銀行の名前も何度も変わってる・・みたいな口座です。

こういう口座はものすごい数、存在していて、合計するとその金額も相当です。銀行、信用金庫などはもちろん、郵便貯金にもあります。

昔は口座開設の本人確認が緩かったので仮名での休眠口座もあり、既に亡くなっている人の口座がそのままという場合もあるでしょう。(おばあちゃんが亡くなった後、すべての口座からお金を引き出して精算したりしてますか?)


これらの口座にあるお金は、一定期間たつと会計上、その金融機関の利益に計上されます。それ自体は正当な会計処理なので問題ありませんが、「金融機関の利益になるなんて、なんか釈然としない」と思う人もいますよね。

で、イギリスや韓国では、休眠口座のお金を福祉目的に活用しようという制度ができているようです。また、今年の1月末には国会議員の田中康夫氏が、休眠口座のお金を金融機関から国に移し活用してはどうかと提案しています。

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休眠口座の存在自体は昔から知っていたのですが、東北・東日本大震災で「街ごと流された」「一家全員が流された」ような被害がでたことから、ふと休眠口座のことが頭に上りました。

ひとり暮らしの方や、高齢者ふたり暮らしの両方が亡くなられた場合、もしくは一家全員が流されてしまったら、そういう方々の貯金や保険を誰が請求するんだろう?って思ったのです。

もちろん他都市に子供や兄弟、親戚がいる場合もあるでしょう。しかし「田舎の親がどこに貯金や保険をもっているか」「地震保険に入っていたか」などを把握している子供は多くはないですよね。ましてや親戚ではそんなこと知ってるほうが稀でしょう。しかも今回は通帳や保険証書は見つからない場合がほとんどだし、判子だってなくなっています。

金融機関側には「預金者が亡くなっていないか?」などを調べる義務はありません。すると、この災害を機に、相当の銀行口座が「休眠口座への道」を歩み始めるんじゃないの?と思ったのです。しかも今回の場合は「端数が残ってる放置口座」ではなく、津波直前まで生きていた生活口座ですから残高もバカになりません。

しかも、こういうのって後処理の手続きも面倒なのです。たとえば「亡くなった両親の貯金があったはずだからお金をおろしたい」と子供が窓口に言いにいっても、他に相続権者がいないか確認するため、遺産分割書や印鑑証明が必要、などと言われます。そうなると相当多額の貯金でないかぎり放置してしまう人もでてくるでしょう。


「そういうのが増えそうだなー」、「それ全部、将来は銀行の利益になっちゃうわけ?まじー?」と思ってツイッターで「コレどーなるの?」とつぶやいたところ、病児保育のNPO法人を運営されている駒崎弘樹さんからツイートを頂きました↓。


とのこと。


特に休眠口座が他国では活用されているという資料を見て、こういう具体的な方法論の提案まであるなら是非やるべきと思いました。
→「日本における休眠口座基金の創設プランの策定



ちなみに報道では、三メガバンクだけで21年3月末に242億円、平成22年3月末に303億円の休眠口座を益金計上し、日本全体では数千億円規模の休眠口座があるとのこと。(関連資料)今、益金計上されているのはかなり昔の口座です。昔の人なんてそんなにたくさんの銀行口座をもっていたわけではないのにこの額ですから、今後は急増するんじゃないでしょうか。

銀行も大げさに「我が行はこんなにCSRに熱心です!」とかアピールするより、「休眠口座のお金は、銀行の利益にするのではなく、災害復興基金にします!」と発表したらどうでしょう?

そういえば昔、銀行が潰れそうになった時、「銀行には公的な使命がある」とかいう理由で税金で助けてもらったことがあったのでは?その「公的な使命」とやらを発揮するいい機会だと思いますけど。

なお、今回の震災で発生し始める将来の休眠口座&保険に関しては、東北の小さな街という場所柄、郵便貯金と簡易保険や学資保険などが圧倒的に多いでしょう。ぜーひ、そちらもよろしくお願いしたいです。


あと、「当選してるのに、誰も賞金を受け取りに来ない宝くじ」も相当あるはず。これを機に、それも復興財源など福祉に使うべきだよね。それってまさに国民からの寄付じゃない?



そんじゃーね。

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!)上記の話を読者の方が動画にしてくださいました!! 是非、多くの方にご紹介ください! → http://www.youtube.com/watch?v=j1QRWDOsI4A&feature=player_embedded


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