<これまでのあらすじ>
第1話 ウォールストリートから八日市へ
第2話 価値を伝える
インタビューの中で北川社長が、
「楽天市場では、1万円もするウチのパジャマが ランキングでトップ 10にいくつも入れる んです。でも、Yahoo!ショッピング ではそうはいきません。トップに入るのは 2000円、3000円のパジャマばかり。安くないとダメなんです」
と言われた時、
「これを聞いただけでも、滋賀まで来た価値がある」と思いました。
みなさんが今、ネットで何かを売りたいと考えたとしましょう。どこのモールに店を出すか、比較検討しますよね。
名前の売れている会社なら独自ドメインでオンラインショップを開けばいいけど、そうでなければ楽天やアマゾン、Yahoo! など、ネット上のショッピングモールに出店しようと考えるはず。
そのほうが集客力も高いし、決済や管理もラクです。特に初めてのネット販売であれば、既存のプラットフォームを使うことでサイト作りについても学べます。
そこで、出店すべきモールを選ぶため「ショッピングモール 出店条件 比較」といったキーワードで検索をします。
見つかった比較サイトには、初期費用や毎月の出店料、売れた時のマージンなどの経済的な条件に加え、店舗数やプロモーション施策など営業支援策が載っています。
最終的には複数モールで店を開くにしても、最初はこれらの条件を比較し、まずはどのモールに店を開くか検討する --- これはまさに「市場の選択」です。
ではその際、もっとも重要な条件はなんでしょう?
初期費用や出店料などのコスト?
モール全体の企画力や集客力?
冒頭の言葉を北川社長から聞いたとき、私は、ラブリーが楽天市場に最初に店を出したことは、ものすごく幸運なことだったんだと理解しました。
だって、もし最初に Yahoo! に出していたらどーなったと思います?
ラブリーは最初に楽天に出店し、後から Yahoo! に出店したから「Yahoo!では、高いパジャマは評価されにくい」と言えてるけど、
もし最初に(安いパジャマしか評価されない)Yahoo!に出店してたら、こう思ってしまった可能性もあるんです。
↓
「やっぱりノーブランドのパジャマを 1万円なんて価格で売るのは無理なんだ・・・」
「一般の消費者に、生地の違いなんてわからないよな」
「ネット通販で高級品を売るのは無理かもしれない。。。」
これじゃあ「最初にどの市場を選んだか」によって、運命が変わるくらい大ききな違いになりかねません。
つまり、楽天市場のユーザーと、Yahoo!ショッピングのヘビーユーザー、そして、Amazon を好んで使う人、というのは、「何に価値を感じるか」が大きく異なってるのです。
といっても、「楽天ユーザーの方が金持ちだ」みたいな安直な結論にしないでください。
だって、オーガニックコットンなど自然素材に関しては楽天ユーザーの方が高い価値を感じるけど、
精巧に作り込まれたフィギュアについては、 Yahoo!ショッピングのユーザーの方が高い価値を感じる可能性だってありますよね。
市場によって顧客の経済力に差があるのではなく、「市場によって、顧客が何に価値を感じるかが異なってる」んです。
だから、自社が市場に提供する「価値」をよく理解し、その価値をもっとも高く評価してくれるユーザーが集まる市場を選ぶのがスゴク大事。
そうしないと、提供する価値と求められている価値が合ってない市場を選んでしまっただけなのに、
「自分は市場で評価されない人間なのだ・・・」
「うちの商品は市場では通用しない・・・」
みたいな誤った結論になりかねません。
こうして市場の選択を間違えて結果が出ず、諦めてしまう。そういう人、現実にもたくさんいるんじゃないかな。
5年前、Amazon は今ほど多様な商品を売っていなかったし、Yahoo!はモール事業に出遅れており、楽天ほどの集客は見込めないと考えられていました。
だから、当時のラブリーが楽天に店を出そうと考えたのは、ごく自然な判断だったと思います。
でも、もしも「すごく安くてかわいいパジャマ」を作っているメーカーが、5年前、同じように「とりあえず楽天で」店を出していたらどうなっていたでしょう?
Yahoo!ショッピングならトップになれたかもしれないその店は、「やっぱ無名の店にはネット販売なんて無理だ・・・」と思ってしまったかもしれないのです。
オーガニックコットン、極上の肌触り、日本製の手縫い・・・こういったコトに価値を感じるユーザーがどの市場にいるのか? どの E C モールを主に使っているのか?
「自分が提供できる価値を、正当に評価してくれる顧客は、どの市場に多く存在しているのか?」
ネット販売だけでなく、就活でも婚活でもリアル販売でも、こういう視点で「市場を選択」することがすごく大事なんだよって話は、下記の新刊にも書いたとおりです。
市場に向き合ってみたのに結果がでなかったら、「やっぱりダメだ・・」と落ち込む前に、「もしかして参加すべき市場を間違えたかも?」と考えてみてはいかがでしょうか?
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法posted with amazlet at 15.02.25ちきりん
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 6
そんじゃーね!
<関連サイト>