<これまでのあらすじ>
第1話 ウォールストリートから八日市へ
第2話 価値を伝える
第3話 「市場の選択」という幸運
第4話 「買うと決める」と「買う」の分離
インタビュー中、北川社長は何度も「一般の消費者が生地の違いをここまで理解し、評価してくれるとは思っていませんでした」と言われてました。
パジャマを買う時に気になる項目を挙げてみると、
・季節とのフィット(生地の厚みや、長袖か半袖かなど)
・デザイン(パンツタイプかネグリジェか、ボタンかかぶりタイプか、柄など)
・値段
・肌触り、素材
などでしょうか。
通常、肌触りや素材は検討要素のひとつに過ぎず、それもせいぜい「綿 100%か」「自然素材か」くらいしか意識されていません。
でも、ラブリーが売ってるパジャマって、「まず素材で」選ばれてるんです。
たとえば私が好んで着てるのが、オーガニックコットンのパジャマ。真冬用がコレで、↓
春秋がこちら↓
春先から夏は同じ天竺ニット生地で半袖の↓
上記はいずれもオーガニックコットンのニット系(編み地系)生地ですが、ほかにも、織り地系の生地があります。
たとえば下記はガーゼ製品で、左から、一重ガーゼ、二重ガーゼ、三重ガーゼのパジャマです。
一重ガーゼは本当に薄くて、透け感があるほど。二重ガーゼは普通に冷房を使う家なら夏用にぴったりですが、三重ガーゼはかなり厚手(↓)
「なんでガーゼなんていう夏の素材で、こんなぶ厚いパジャマを作るんですか?」と聞いてみたところ、「ガーゼという生地が大好きで、一年中、ガーゼのパジャマを着ていたいという人もいるんです」とのこと。
なるほどねー!
私は真夏だけガーゼのパジャマを着ていますが、「ガーゼを一年中着る」いう発想はありませんでした。
でも、洗えば洗うほど柔らかくなり、通気性も良くて他の生地にはない肌触りがあるガーゼを「一年中、着ていたい!」と思う人は(言われるまで気が付かなかったけど)確かにいるでしょう。
まさに「パジャマ選びには、生地が何より大事!」という人です。
他にもパイル生地が好きな人向けの、パジャマがこれ↓
パイルも汗をよく吸い取ってくれるタオル地というイメージで、どちらかといえば夏の素材だと思うのですよね。
だからもしパイルを冬にも着たいなら、相当に分厚く作る必要があるわけですが、それがなかなか難しいらしい。
上記のパジャマは極みシリーズというブランドで 1万 5千円もするんですけど、びっくりするようなボリュームのパイル(両面ループなんです)で、
なんと 1964年(前の東京オリンピックの年!)に輸入されたフランス製の織機で作られてる生地なんだって。(今の最新の機械だと、こういうボリュームは出せないのだとか)
ふーん!
とはいえこれも確かに、「ガーゼ命!」「パイル大好き!」って人には、極上のパジャマなんだと思います。
★★★
その他にも、
麻好きの人には、リネン(左側)と、ラミー(右側)のパジャマがあるし、(リネンとラミーは全く異なる植物で、手触りもかなり違います)
アウターに使われるシャツ生地で作られたパジャマもあります。
→ レディース オックスフォードナイティ
私自身は、アウターとしてもシャツを着ないので(=硬い生地が好きでないので)、パジャマでこんな生地を選ぶのはありえないと思うのですが、人の好みは様々。
こういうパリッとした生地のパジャマが大好きという人も当然いるんでしょう。
あと、こちらは、リヨセルという天然繊維にシルクとナイロンの混紡。アウターのドレスにもいいんじゃないかと思えるほど光沢があってなめらか。肌触りもとてもよいです。
というように、パジャマ工房では様々な自然素材のパジャマを作ってて、おそらくここでパジャマを買う人は、「生地でパジャマを選んでる」と言えるくらい、生地へのこだわりが強い人なんだと思います。
というか、私のように今までパジャマの生地なんて、せいぜい「綿 100%かどうか」「自然素材かどうか」くらいしか考えてなかった人も、こういうお店でパジャマを買い始めると、とことん素材にこだわりたくなる。
つまりパジャマ工房は「生地中心でパジャマを選ぶという楽しみ or 新しい市場」を創造したんですよね。
ちなみに私の場合、自然素材の中でも特に綿と麻が好きで、シルクやカシミヤ、ウールなどは、そこまででもありません。これ、前者と後者の違い、わかります?
綿と麻は植物由来、シルク(繭・蚕)やカシミヤ(ヤギ)、ウール(羊)は動物由来なんです。
植物由来の素材の方がさらっとしてて、人間の肌と一体化しない。一方、動物由来の生地は肌と馴染むような暖かさがあると感じます。
「一年中、ガーゼのパジャマを着て眠りたい!」という人もそうですが、違いがわかってくると、みんな生地に自分なりの好みがでてきて、どんどんこだわりたくなる。
★★★
加えて、ここまで多彩な自然素材を扱えるのも、同社が「ローテクの小さな縫製工場だから」なんです。
というのも、オーガニックコットンなどの自然素材は、ちょっと引っ張るだけで長さが変わってしまう。縫っているうちに、Sサイズが Mになってしまったり、ということもあるそうです。
規格品を大量に作らねばならない大手メーカーでは、こういう素材はとても扱いにくい。
つまり「小さな縫製工場だから、超ローテクの会社だから、手作りだから」こそ、ここまで生地にこだわることができたわけで、まさに弱みを強みに逆転させた好例です。
このページには、パジャマ工房で扱われている多彩な種類のパジャマ、そしてその生地の説明がまとまっています。
→ ★生地についての説明ページ★
パジャマの生地にココまでこだわれるなんて、ほんとーに豊かな時代になったって気もするし、同時に、そういう新しい「価値」が取引される市場が出現した(作られた?)ことにも、ちょっと感動してしまいます。
そんじゃーね!
<関連サイト>